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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

彼我の企業価値

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あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

先日入手したパワーアンプExclusive M4がなかなかよくてですね、オーソドックスなジャズが非常に品よく鳴ります。スピーカーは例によってSonus Faber Grand Piano Home。過不足なく、むっちり鳴るという感じの音です。
オーケストラもそれなりにいけるし、ピアノがきちんと鳴るのがうれしいです。ピアノ、ピアノした凛とした音がごくごく普通に出てきます。
それから、まともなのがロック。80年代半ばぐらいのアナログの最後の頃のロックがしっかりと、こんな音してましたという風に鳴ってくれます。ありがたいです。アンダーワールドも悪くないです(^^;。でも下から苦情が来るのでクラブミュージックはよう鳴らせません。

ただ、このアンプ、めちゃめちゃ熱くなります。A級だけあります。ウッドケースの金属製の放熱窓が手で触れないぐらい熱いです。また、あったまりすぎると、心もち音の純度が下がる気がします。夏場は休ませないとダメでしょうね。

年末から年始にかけて経理、会計、経営などのつん読本を消化していました。現在、「ビジョナリー・カンパニー 2」を読んでいるところですが、ふと気になることがありました。
この本では、偉大な会社を選ぶのに、15年の間に、株価のパフォーマンスが市場平均の3倍を超えていることを条件としています。これって、日本の普通の企業人の間で受け入れられる基準なのかなぁと、考えてしまいました。

数年前、あるいは十数年前に、ピーター・リンチの「すばらしき株式投資」に感銘を受けた人なら、株価収益率ですばらしいパフォーマンスを示す企業は文句なくめちゃすばらしい、ということは全然腑に落ちると思います。けれども、日本の産業界を見渡して、日本企業全般の優劣を推し量る基準にそうした株価のパフォーマンスをあてるというのは、しっくりくることなのか?

結論から言うなら、日本では、それは誤りだろうと思います。ジェームズ・C・コリンズが日本企業だけを対象に「ビジョナリー・カンパニー 日本編」を書いたとして、偉大な企業を選定するのに時価総額の増え方だけを基準に10あまりの企業を選んだとしても、たぶん、誰も納得しない企業のリストになるような気がします。

それは、おそらく、日本企業一般の価値に関する考え方が、ピーター・リンチの「すばらしき株式投資」に明白に表れていた価値の考え方(それはそのままジェームズ・C・コリンズの書籍でもベースになっている価値の考え方ですが)とはかなり違うからです。

あまり紙数を費やしてもしょうがないので、ごく簡単に整理します。

○経営者は誰に対して価値の増大の責任を負っているか?
日本:諸先輩、財界、同僚(役員)、後進(将来の役員)、メインバンク、従業員、最後に株主。
米国:株主、従業員、地域社会

○経営資源のうち、自己資本(株主資本)をほんとうのところは誰のものだと思っているか?
日本:誰のものでもない。自分たちの意思決定で使途を決定できる(このへん、異論多々あると思いますが…)
米国:株主のものであることは明々白々

○コーポレートガバナンスの源泉は何か?
日本:社の伝統や名誉を傷つけないこと
米国:株主に対する説明責任

○社としての戦略的な意思決定を行う主体は誰か?
日本:役員全員の総意が重要であり、個人に帰着させられない
米国:最後は最高経営責任者個人

○企業価値とは何か?
日本:ブランド、伝統、社会から受ける尊敬、社に属していることの誇り、社員に対して経済的、社会的、その他有形無形の恩恵を与えることができる懐の深さ、従業員の和があること、功労者をよりよく処遇できるポストが潤沢にあること、最後に時価総額
米国:株主に対するリターン。結果として時価総額(ただし、スタンスとしては資金の出し手に報いるという姿勢が主)

以上は思いつきで記しているわけではなく、過去数年の間、読んだり考えたりして自分のなかで整理できたものを簡単に示しています。
日本の企業にとっての価値が、米国の企業にとっての価値よりも劣っているとか、優れているとかいうことを言うつもりは毛頭ありません。ただ、両者は著しく違うということです。

従って、「ビジョナリー・カンパニー 2」に戻ると、同書で色々論じられている偉大な企業になるための条件は、そのまま日本企業が採用してもおそらくはハズレになってしまうし、日本にいるわれわれはむしろ眉につばをつけて読まなければならないのではないかということです。
いや、確かにおもしろい本なのです。書籍としては非常におもしろいし、説得力もある。けれどもそれは海の向こうの話であって、日本の産業界を見るならば、別の価値観、別のパワーバランス、別の意思決定手法、別な価値の高め方がある。というようなことを、じっと見つめていかなければならないのではないか? 

というのは書生論であって、ほんとは、誰もがそれを知っているし、無意識のうちに実行しているんですよね?(^^)

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