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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

組織大の記憶、組織大の暗黙知

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最近相次いで、"Institutional Memory"と"Organizational Memory"という表現を目にしました。組織として把持している知識というほどの意味合いです。

使われていた文脈ですが、社会ネットワーク分析を使って、ある組織の知識の流通状況を可視化した際に、2つのグループの存在が浮かび上がったとして、グループAとグループBにまたがるやりとりが生じた際に、必ず経由するXさんという人がいるとすれば、その人が、Institutional Memoryを持っている可能性が高く、Xさんが会社を去ってしまうとInstitutional Memoryが失われてしまうので、そうなる前に、Xさんの知識を周囲で吸い上げるような方策をとったほうがよい、というような流れです。

まぁここで言われている方策は当然と言えば当然の話ですが、Xさんが、グループAとグループBの橋渡しをしているということは、よほど客観的に注意深くその組織を観察する人がいないとわかり得ないことなので、通例は、Xさんが去ってしまってから、「あぁ、われわれのInstitutional Memoryが失われてしまった」となるのでしょうね。そうした事態が社会ネットワーク分析を使うことで防げます。

個人的には、形式知および暗黙知という概念は、個人を離れて、一個の組織に関しても言えると考えています。上のXさんの例は、ひとかたまりのInstitutional Memoryが一人のXさんという人間にくっついていましたが、ある組織に、ある特殊な技能があって、Dさん、Eさん、Fさん、Gさん、Hさんから成る目に見えない知識流通ネットワークの全体にそこはかとなくその特殊な技能に関する暗黙知がふんわりと乗っかっているというような事態は、よくあることだと思うのです。
これは、Dさん、Eさん、Fさん、Gさん、Hさんがそれぞれ別の時期に、ある似たような状況に遭遇し、何らかの似たような対応をしたことが、1つのプラクティスとなって、それに類する状況が何度か繰り返されるなかで、個々においてベストプラクティス化し、そこはかとなく、そのベストプラクティスを持っている計5名のあいだで、ひそやかな連帯感が生まれている、というような状況だと思います。
別な言い方をすれば、Dさん、Eさん、Fさん、Gさん、Hさんのそれぞれにおいて、ある共通の特徴をもった状況に関する経路依存ができあがり、その経路が計5人において同一である、というような状況だと言えます。

ここでわざと複雑系の経路依存の「経路」という言葉を使っているのには訳があって、この経路は、社会ネットワーク分析の手法を使えば可視化できるのではないかと、素人ながら考えるからです。

ただ、どのようなデータをとって社会ネットワークとしてマッピングするのかという問題に行き当たります。
個人的には、それは「言葉」であると思っていて、特定の言葉に関する使い方の傾向性のようなものがつかめれば、深堀する言葉を絞り込んだ上で、対象者の学びの経路のようなもの、学んだ結果の想起の手順のようなものを、その言葉に関するネットワーク的な構造として描き出すことができるのではないかと思ったりします。

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