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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

日本企業のIT投資が気になる理由(IT投資問題-その4)

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私はいま、シスコシステムズのIBSGという最大手企業および行政機関などに対してコンサルテーションサービスを行う部門にいて、コンサルタントが必要とする諸事万般を引き受けています。
IBSGのコンサルタントが言わば売り物にしているメニューの1つに、ITガバナンスがあります。

シスコは、IT業界の一角を占める企業であることもあり、IT投資に非常に積極的です。これは自然発生的にそうなったのではなく、ある時期にある必要が生じて、「自分たちは世界でもっとも高いレベルのIT投資を行っていくのだ」と決意したからです。

自社の事業戦略の優位性は、IT戦略の優位性と不可分なものである、と90年代半ばに経営が認識して以降、場当たり的、事後処理的なITの手当てはやめて、よく考え抜いた戦略に基づく、その時々のベストプラクティスを意欲的に採り入れた、そしてなおかつ独自の枠組みを持ったIT投資を行うようになります。

その後、2000年頃にはITガバナンスが確立し、バブル崩壊による売上激減の苦境をITによる効率化で対処しながら、比較的早期に利益水準を回復して、現在は第二の成長期に入っています。
その間の経験や知見の一切が、シスコIBSGで顧客に対して提供させていただく「ITガバナンス」に含まれています。

シスコのITガバナンスは、非常にシステマティックであり、リターンを重視します。口でIT投資のリターンを云々するだけでなく、種々試行錯誤しながら、「こうすれば明確なリターンがとれる」という方法論を確立しています。仮説を立てて、実践で試します。2000年頃にいったん確立したITガバナンスが、成熟によって不具合が出ていることがわかると、かなり大きなバージョンアップを行って、建て直しを図るなどということもしています。

米国企業の場合、ITガバナンスと言えば、IT Governance Instituteが策定したCOBITがお手本なわけですが、もちろん、あのmaturity modelとも整合性を持っています。Enterprise Architectureについても、TOGAF 8を参照しています。

コンサルティングリサーチを行う者として、シスコのこのITガバナンスの全体像を頭に入れた後で思うことは、やはり日本企業のIT投資の姿勢には、かなり改善すべきところがある。なんとかしないと、カネばかりが出て行って、何も目に見える恩恵が得られないまま進むということになりかねない。なんとかならないものか、というものです。
そんなこんなで本シリーズを書き始めたわけなのですが、書くべき要素はあまりに多く、まずは気長に続けていきましょう、というところです。

シスコのITガバナンスの片鱗は、ここここで大枠を知ることができます。それから英文ですが、Harvard Business Onlineのケースなどでも取り上げられており、探すと色々見つかります。原則として、シスコのIT投資について触れる時は、公開資料ベースで行きますので、ご了承ください。それから時々、あまりおもしろくもないシャレやギャグを込めますが、受けを取ったり、記述にコントラストをつける以外の意図はないので、曲解なさらないようにお願いしますです。

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