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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

楽天-TBS経営統合後の企業価値向上方策を考える

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1023日付日経5面で、楽天がTBSに提出した経営統合の提案において、両社のシナジー効果に関する具体的な記述がなかったと報じられていました。楽天には具体的なアイディアがないのでしょうか?(^^; もちろんそういうことはないと思いますが。

以下では僭越ながら勝手に、楽天がTBSと経営統合をした際に、どんな企業価値向上方策がありえるかを整理してみたいと思います。

・新規制作番組に適用すべき権利処理パッケージの早期開発

TBS-楽天が制作および放映する動画番組に関して、インターネット上における①有料配信、②無料配信、③CM付無料配信、④内容を改変しない限りにおいて認める第三者による無料配信、⑤およびそのCM付配信が可能になる権利処理パッケージを早期に開発し、当事者間で契約を結ぶ。今後はできるだけ多くの動画番組にこれを適用する。

過去において制作・放映された動画番組の権利処理は、費用対効果の面でうまくないことから、当面は保留。

権利処理パッケージ化に伴い、権利処理プロセスの効率化と、請求支払プロセスの効率化も行う。すなわち、プロセス全般のウェブアプリケーション化を行い、ワークフローがスムーズに流れる仕組みを作る。権利当事者全員が現在の状況をすぐに確認でき、自分が関わっている権利内容と自分が関与しなければならないアクションがすぐにわかるようにする。併せて、権利に伴う契約料の請求、精算、相殺、支払履歴確認なども一元的に処理可能な環境とする。

これら関連する法務スキーム、情報システムの一切が完成し、順調に運用できるようになった段階で、システム全体を外販。

・楽天-TBS動画コンテンツにおける検索価値向上のための諸施策

現在ではインターネット上のすべてのリソースは検索可能な状態にあることによって価値を発生することから、楽天-TBSが既存電波媒体で制作・放映するできるだけ多くの番組について、検索可能化を推進する。

すなわち、Google Video において試験的に運用されているテレビ番組の検索可能化に類似した、テキスト検索→ヒット→動画配信のための技術を開発し、具体化する。

すでにGoogleが関連特許複数を保持しており、その守りが堅いのであれば、同社との提携を推進。そうでないのであれば、早期に、日本独自の標準を策定し(日本語によるテキスト検索に的を絞った標準にすればよい)、他の放送局などにも採用を働きかけていく。

確立した動画番組検索可能化技術をインフォシークで導入するとともに、他のサーチエンジンにもOEM供給することも検討する。

CM付無料配信の領域拡大を想定したビジネススキーム確立

検索可能化で確立する「テキスト検索→ヒット→配信」の環境において、CM付無料配信を可能にするために、広告代理店および意欲的な広告クライアントと共同で、ビジネススキームを開発する。

これの早期事業化を図る。

・動画番組“オムニキャスト”の試行→スキーム確立

動画配信の形態に関して、楽天-TBSウェブサイトから多数の視聴者に対する一対多のマルチキャストでは、コンテンツ配信のカバレッジ(潜在視聴者に対するカバレッジ)という意味で、限界がある。

カバレッジはCM付配信の広告売上に直結することから、カバレッジを上げるために、個人およびそれに準じるウェブサイト運営者およびブログ執筆者がそれぞれのウェブページにおいて、楽天-TBSの動画番組コンテンツを二次的に配信できる形態の確立を目指す。

この“オムニキャスト”の実態は、動画コンテンツ自体の蓄積・配信が楽天-TBS所有のサーバ・配信施設から行われるものであっても、言い換えれば、マルチキャストと同様の配信環境であっても構わない。デジタルコンテンツの“転々流通”(90年代後半に電子決済で言われたところの転々流通と同意)を可能にする技術が未だfeasibleなものになっていないことから、むしろ、そうすべき。

上述の権利処理パッケージも、この“オムニキャスト”を含んだ内容とする。

・“オムニキャスト”のCM付配信を楽天店舗の売上向上戦術とする

個人がブログなどで“オムニキャスト”を採用して動画番組を二次的に配信した際に動画コンテンツに付随して配信されるCMについては、その一部を、楽天店舗の売上向上に活用する。すなわち、楽天テナントにトラフィックを誘導するCMを具体化する。

この場合のCMは、制作費の問題もあることから、文字主体のフラッシュコンテンツ程度で構わない。

CM付無料配信における広告売上の一部をアフィリエイトで個人に還元

既存のアフィリエイトの仕組みをそのまま生かして、動画番組のCM付無料配信(“オムニキャスト”)においても、個人に広告売上の一部が還元できる仕組みにする。個人の“オムニキャスト”参画インセンティブを高める。

以上です。

インターネットで何かをやってキャッシュを生むのは、やはり広告と物販であって、有料コンテンツというのはいまいち規模が小さそうです。テレビとネットが融合した際のビジネスモデルも、収益源は、広告と物販に求められるのではないでしょうか?そのへんを考慮すると上のような方策になると思います。

上記が実現すると何が起こるかと言えば、俯瞰的には、①米国では未だ確立していないTVコンテンツのネット配信における収益モデルが確立する、②個人に対する収益還元が活発化することから、個人のブログ等のウェブコンテンツ運営がより活発なものとなる、③インターネット広告市場のパイが大きく広がる、④いわゆるロングテール部分も大きくなり、それに伴って、ロングテール固有の非常に市場が限られた商品等であっても、小規模ながら事業として成立するようになる、⑤日本のブロードバンド化がますます進展する、といったあたりでしょうか?

楽天-TBSに関しては、①広告事業の売上増大(試算が難しいですね)、②楽天テナントにおける売上増大、③楽天テナント数増加(“オムニキャスト”広告を楽天テナント限定とすれば効果大)、④権利処理パッケージやCM付オムニキャストなどに関連したノウハウの新規事業化、となります。もちろん、企業価値増大には非常に大きなインパクトがあると思います。

上記の一切の最重要ポイントはブログ等における(擬似的な)二次配信、上で言う“オムニキャスト”が確立できるか否かです。

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