無効になる特許を特許とした審査官の方々へ
1週間米国出張だった関係で、ずっと日経が読めず、昨日になって先週土曜日の分までざっと目を通したところです。
知財高裁の大合議で松下の特許の進歩性が否定されましたが、これは大変によいことですね。一度、特許庁の審査官が特許だと認めたものが裁判所の慎重な合議の結果、否定されたわけで、審査官の方々にはかなりのインパクトがあると思います。
10月1日付の日経によると、2000年4月以降、裁判所で特許の有効性が争われた訴訟229件のうち、裁判所が特許を無効であると判断したのが98件もあるとのことで、特許庁で審査に当たられる方々には居ずまいを正していただきたいものです。
栗原さんが以前に書かれていましたが、特許というのは非常に強い権利であって、一度認められてしまうと、その請求範囲について専横的な振る舞いに出ることが可能になります。
おそらくは審査官の方々の人員は不足ぎみであり、審査のスピード向上は各界から求められ、技術の諸分野の高度化細分化はやむことなしで、並大抵ではないご苦労をされているのだとは思いますが、一度、認めてしまうとものすごい権利であるということはやはり肝に銘じていただきたいわけです。
特許庁のデータベースですでに成立したビジネスモデル特許のいくつかを実見すると、「あぁこんなので取れてしまっているよ」という思いがこみ上げてきます。
これで何が起こるかと言うと、正しい理念をもって正しく事業を行おうとしている起業家があるビジネスモデルを発案し、具体化しようとする際に、ビジネス方法特許の初期の出願が多少安易に認められてしまったがために、どうしてもバッティングしてしまう部分が出てきて、その部分をうまく迂回するアクロバティックな業務プロセスをひねくり出して、それでもってやらなければならない、その業務プロセスはユーザー側から見ると異常にユーザビリティが悪くて、もうサービスとして使いものにならない、などということが起こるわけです。
工業系や化学系の特許と違う点は、日本でビジネス方法特許も特許として認められるよとなった時期に、「発明」というほどのことはなくて、単なる思い付きに過ぎないレベルで出願しちゃっても、それで通る例が相当数あったであろうということが大問題なのですね。一度、認められてしまったものは、もう引っ込まない。
クソやミソの特許(失礼)であっても、いったん特許になったものは法廷闘争に持ち込んで、喧々諤々やらないといけないわけですね。かなりの経費を使って。
仮に、特許庁の審査官の審査姿勢にやわい部分や怠慢な部分や「これは明細書がしっかり書けているから認めてしまおう」的な態度があったとすれば、それがもたらす結果は、産業の発展の阻害なわけです。そこまで言わないにしても、ベンチャー隆盛の通せんぼであることに間違いはありません。そのへんはよくよく認識していただきたいなぁと思う今日このごろなのであります。
特許庁のデータベースを覗くと、出願者ももてあましているのではないかと思われるビジネス方法特許がごろごろしているようなのですが、こういうのを、ある種の不良資産のように見なして、第三者的な評価を下して、値をつけて、流動化させるビジネスなんてのがあってもいいかも知れません。
今日は久々に30分で書けました。