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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ビジネス方法特許の代わりに著作権法を使う-その1

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その後、ボストンに3日間滞在して各種打ち合わせなどを済ませ、ニューヨークに戻って1泊して、金曜の昼発のJAL便で成田に向かっている最中です。

私のはクライアントに同行するサポーティングスタッフの役割であり、まぁ気楽です。相応の成果が出たのでよかったです。 ただし、24時間拘束のようなものなので、現地からは1本も投稿できませんでした。幸いJALでもConnexion by Boeingが使えるようになっており、せっかくの機会なので機内からの投稿にチャレンジしてみます。

新規事業と特許の話を続けます。 前回までの内容を簡単にまとめると、インターネットに直接的間接的に関わる新規事業を始めようとする者が、主に参入障壁を築く目的でビジネス方法特許を活用するのはあまり有効ではないと思われる、ということでした。

一方で、新規事業を始めようとする者(以下、起業家)の側には、非常に斬新なアイディアや仕組みを盛り込んだ新規事業の内容を、勝手に他の企業などに模倣されたくないという思いがあります。参入障壁とは言わないまでも、何かの形で模倣対策は講じておきたい。この部分をどうするか?

数日前まで考えていたのが、①新規事業の事業案等もろもろをできるだけ迅速にインターネットで公開しつつ、②当該事業案等を著作権法によって守ってもらうという手法でした。 

インターネット上で展開しようとしている事業の新規な仕組み、進歩的な構造、真新しい概念などは、それがまとまったそばから、例えばブログのような頻繁に更新される情報メディアで公開されることにより、”敵”がそのアイディアによってビジネス方法特許を出願してしまうのを防ぐことができます。 

論理的には非常に素朴であり、特許の要件である新規性と進歩性に関して、”こちら”が情報メディアでその新規性・進歩性に富んだものを先に公開してしまうことによって、意図的に公知のものと成し、その新規性・進歩性が”敵”に帰属してしまうことを防ぐというものです。 

これはなかなかスマートなやり方かも知れません。自分で新規事業を起こす意図もないのに、特許だけを出願して、当該特許の請求範囲に抵触する事業が出現したら(十分に利が乗ってうまそうになったら)、ロイヤリティを請求するという、起業家から見たら顰蹙ものの態度をとる人たちをシャットアウトすることができます。 

起業家は、ビジネス方法特許の取得によっていくばくかのカネを得ることを目的としているのではなく、あくまでも事業そのものの実現と発展を重視しているわけであり、仮に何らかの代替方策によって”敵”の動き(それもこすからい人たち)を封じ込めることができるのであれば、それを選択すると思います。過日に述べた”しっくりこない”3点があるのであればなおさらです。  

公開するメディアですが、誰にも存在を知られない離れ小島のような新規設立会社のウェブサイトなどではなく、認知度も信頼度も高い公的な性格を持ったサイトが好ましい。例えばこのITMediaさんのサイトなどは、出版社が運営するサイトということで非常に好ましいです。  

そうしたサイトで、単なるアイディアの切れ端をケチくさく数行記述しておしまいというのではいけません。 特許法で言うところの当業者が、その事業案を見ることによって、まったく同じ事業を始めてしまうことができる程度に詳細さを持っている必要があると思います。ここまでやって初めて、すばしこくビジネス方法特許を出願して多少のロイヤリティを得ようという人たちを封じ込めることができる。(以下、こうした人たちをロイヤリティゲッターと記します)

事業内容のうち、戦略的に秘匿されるべき部分は別として、新規性および進歩性に関する部分はどしどし公開するにこしたことはない。そのように考えます。(国際的な事業展開を考えるのであれば、これを英語でもって、欧米の関連事業者等によく伝わるサイトなどで公開すべきことは当然です。)  

これでロイヤリティゲッターは防げる。ただ”敵”はこれに留まりません。そのようにして公開した新規事業案をそっくりそのままいただいて、資金力にまかせて怒涛のごとく人材や開発力を投入し、わずか3~6ヶ月で実現してしまうようなお金持ち法人が出現する可能性が残ります。(以下、そうした法人を模倣金満法人と記します) 

模倣金満法人をどのように封じ込めるかという点は、非常にクリティカルな課題です。  

ここで私が思いついたのは、ウェブなどの情報メディアで公開された事業案およびそれに関するもろもろの事項は、明らかに著作物であり、日本国の著作権法によって保護されるのではないか?ならばそれに頼って安心してしまえるのではないか?ということでした。  

起業家の観点では、インターネット上で展開する新規性・進歩性のある事業内容は、その事業案そのものを国に知財として保護していただきたいと考えます。けれども、過日に記した3点などによって、ビジネス方法特許はピンポイント的すぎて当てにしづらい現実がある。そこで著作権法の適用によって当該事業案全体が保護されるのであれば、どんなにすばらしいことか!とつらつら考えていたのが数日前までの話。  

著作権法についてもシロートなので、改めて著作権法をじっくり読んでみると、次のことは理解できました。 

 1. 発明が特許法で言うところの技術的な思想であるのと同様に、新規性・進歩性を具有した新規事業案も事業に関する思想であり、著作権法に言うところの著作物を構成する「思想」であると解釈できる。 

 2. また、新規事業案をUMLなどで詳細に記述したものは、著作権法で言うところの「編集著作物」であるとも解釈できなくはない。

 3. 従って、これらについては、著作権法の保護が及ぶと思われる。 

 4. けれども、ウェブ等で公開された新規事業案の記述内容を、実体のある事業として具現化してしまう模倣行為を明確に守ってくれる記述は著作権法のどこにも書いていない。 

 5. 唯一、それに近いのは、(楽譜や脚本の)「上演権」ぐらいのもの。これをインターネット上の新規事業案の「実施」「実現」に拡大解釈して適用できるか?できるわけはないだろう。さてどうすんべ。  

ということです。まったくさてどうすんべであります。金満模倣法人の乱入を防ぐよい方策はないものか?

 

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