特許の法廷バトル
現在構想中の新規事業に関連して、ビジネス方法特許を取得してから次のステップをと考えていたのですが、「このネットの時代、特許を取得して新規事業の参入障壁を築くというアプローチは、なにかしっくりこないのではないか」と思えてきたという経緯を何回かに分けて書いています。
前回は、特許の審査基準が常時動いているということを記しましたが、1つ書き忘れた事項がありました。比較的最近に特許法の改正があり、それ以降、特許庁の特許審査基準が大きく変わったのだそうですが(ゆるくなった)、その方針で認めた特許が裁判でもって続けざまに特許権を否定され、特許庁の方が「司法には勝てん」と審査基準の軌道修正を行ったということがあったそうです。
ご存知でない方のために周辺の事情を記しておきます。
特許権が成立すれば、すぐにロイヤリティ等の名目で金銭を得ることができるかと言うと、そうはいきません。
①特許権を明らかに侵害している企業に対して、弁護士を立てつつ、法的に有効な文書でもって、「あなたは当方の特許をこれこれこのように侵害しているから、いついつまでに、ロイヤリティとして売上の3%を支払いなさい」という要求を出します。
②ここですぐに支払う企業はないのであって、通例、相手も弁護士を立てて、法廷闘争の経験が豊富な特許事務所の協力も得つつ、ロイヤリティを支払わずに済ませる方法はないものかどうか検討します。
③通例、その特許が無効であることを裁判所に認めさせる訴えを出します。
④無効であることを裁判所に認めさせるには、常套手段として、a)当該発明の「新規性」を否定する、すなわち、特許出願時点において当該発明と同等の内容を持つ、あるいはそれに類似していて当該業界の専門家等(当業者)であれば用意に類推できたであろう「公知」の文書が存在していたということを証拠として出す、b)当該特許の出願書類の不備を突き、書式の不備をもって特許とするには当らないと主張する、c)その他特許としての条件を満たしていないということを枝葉末節からその技術思想に至るまでありとあらゆる点を吟味した上で主張する、ということのいずれかをやります。
⑤この裁判に勝たない限り、ロイヤリティはもらえません。
こうした特許の法廷闘争の内実がどのようなものかは、「パテントビジネスの現場」(角田嘉宏著)という本に詳しいです。特許を何らかの事業活動に結び付けたい方は一読する価値があります。経験豊富な弁理士による職業哲学系の読みものとしてもおもしろいです。
そんなこんなで、特許の周辺では裁判が日常沙汰なわけで(お金につながる特許の場合)、特許庁がある時認めた特許に対しても、容赦なく裁判が行われ、東京高裁?だったか?特許関連の裁判所が「これは認める」、「こちらは無効」といった判断をばしばし下しているわけです。それでもってある時期の特許がほぼ全滅に近い形で司法で否定されたということが起こったとのことです。
そうしたことでも特許の審査基準が変化します。
あ、ちなみに、特許権を盾にいただくことのできるロイヤリティは売上の3%が相場だそうです。興味深いですね。
規定の30分を超えそうなので、今日はこのへんで。