<2012年スーパーボウルのテレビ視聴者1.1億人、テレビ広告収入7,500万ドル>米国スーパーボウル発展の歴史、TVCMに対するソーシャルメディアコメント数ランキング+青葉オススメTVCMなど、計CM10本まとめ
今年もアメリカ最大のスポーツイベントである「スーパーボウル」が行われた。米国NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)の優勝チームと、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)の優勝チームが対戦するNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の優勝決定戦、言わば全米フットボールの王者決定戦だ。今年はニューヨーク・ジャイアンツとニューイングランド・ぺイトリオッツが対戦し、ニューヨーク・ジャイアンツが勝利をおさめた。この試合をなんと1億1,130万人もの人がテレビで見たという(全米視聴率は47.8%!)。これは去年更新されていた米国テレビ最高視聴率をさらに更新したものだ。
このスーパーボウル、試合自体の他にも毎年豪華なゲストが話題を呼ぶハーフタイムショーや、たった数十秒に億単位の金額がつぎ込まれるスーパーボウルコマーシャルでも有名だ。そもそも、スーパーボウルのコマーシャルがこれだけ注目されるようになった経緯とは何だろう。
もともとNFLは1958年のNFL優勝決定戦以来、メジャーなテレビイベントだったのだが、1969年のAFLとの合併により、「ワールドチャンピオンシップ」と呼ばれていた王者決定戦は、更に注目を集めるようになった。後に「スーパーボウル」と呼ばれるようになったNFL優勝決定戦は、毎年恒例のテレビイベントとなった。
1972年にはブラックアウト(チケットが売れ残った場合にテレビ放送を行わず、観客の来場を促す仕組み)の規制が緩み、ゲームが全米で放送されるようになり、Huluやビデオレコーダーが出回る中、スーパーボウルは毎年高視聴率をあげる数少ないイベントとして現在に至っている。
2000年以降、スーパーボウルの視聴率は伸び続け(2005年を除く)、2010年には、1983年に記録されていた米国テレビ最高視聴率を抜き、先ほども書いたように今年また更に更新した。これだけの人気の為、スーパーボウルの放映権を持っているテレビ局は、ゲーム中に流すコマーシャルに割増料金を課すことができ、スーパーボウルコマーシャルは高額化し、今年の広告最高額は400万ドル(約3億1,800万円)に達した。今年の第46回スーパーボウルでは、合計7,500万ドル(約60億円)がNBC局にもたらされたそうだ。
高額な広告料にもかかわらず、広告主は後を絶たない。今年のスーパーボウルのゲーム中に放映されたコマーシャルの数は87。様々なメディアがコマーシャルの批評をしているが、その中でBluefinLabs社が面白いデータを出している。この会社は、コマーシャルが放映され始めてからの45分間にソーシャルメディアにアップされたコメント数を数え、ベスト10を出しているのだ。私はこういうデータでマーケティングを語ることが大好きなので、第5位までを紹介する。そして、私が好きなコマーシャルは、最後にいくつか紹介したい。
第1位は、108,914件ものコメントが集まったデービッド・ベッカムが登場するH&Mの「Body Wear for H&M」。女性からは圧倒的に人気だったようだ(正直、男性の私には、男の裸なんて嬉しくないのだが・・・苦笑)。女性の水着をテレビやポスターで見て喜べた時代はもう終わっていて、古いのかもしれない。約15ドルでベッカムのセクシーさにあやかれるなら安いもの!?
第2位は、コメント数95,682でクライスラーの「It's halftime in America」。大俳優のクリント・イーストウッドが登場し、「今はアメリカにとってハーフタイムだ」といい、「大不況でデトロイトの人々は多くを失ったが、この苦境を乗り越えようと立ち上がった。大切なのは、これからどうするかということ。この国は少しのことでは一発のパンチなんかじゃ倒れない」と語っている。
第3位は、コメント数90,282でThe VoiceというNBC局のタレントショーのコマーシャル。自慢ののどを競い合う番組でスーパーボウルの直後に放映された。
第4位は、コメント数73,724でPepsiCoが出しているドリトスというスナックのコマーシャル。こんなに可愛らしい犬が実は犯罪者という設定で、人間にワイロを渡すという斬新なストーリー。つい、もう一度見たくなる。犬からワイロもらってしまう男性に、なぜか共感してしまうのである(笑)。
第5位は、ペプシのコマーシャル。THE X FACTORというオーディション番組で一躍スターとなったメラニー・アマロ、王様役としてなんとエルトン・ジョンが登場する。アメリカらしく豪華な作りのCMだ。
コメント数は以上の結果だが、ここからは私が特に気に入ったものを、紹介したい。
まずはコカ・コーラ。フットボールの要素を加えながら、世代を超えた普遍的な秀逸さを味わえる。実はこの白クマのしている赤と青のマフラーは、両チームのカラー。コカ・コーラは実際の試合の状況にこの白クマ2頭が反応する様子をライブストリーム放送したところ、予想をはるかに上回る60万人がスマートフォンやタブレット上で見たというからまたすごい!
韓国車が躍進している理由がよくわかる起亜自動車のコマーシャル。韓国車のイメージが変わるようなかっこいい映像でショックを受けた。ただ安いから売れているわけではないのだ。日本にいると、世界のトレンドから乗り遅れていることに気付く。
車続きだが、女性のセクシーさにどうしても見とれてしまう、フィアットのコマーシャル。さすがはイタリアだ。「目を奪う」クオリティとはこのこと、広告の本質を教えてくれる。男性必見のコマーシャル!
最後にもう一度、PepsiCoドリトスのコマーシャル。先ほどの犬のバージョンと合わせて、コンテストの上位2作品。お菓子らしく、とってもフレンドリーでユニークだ。
おばあさんと赤ちゃんが出てくるこのバージョン。ところ変われど、赤ちゃんはどの国でも人気のようだ。
以上、米国の事例を紹介した。スポーツマーケティングの分野には、この数年でグローバル化や効率化の波が押し寄せている。
広告に元気があると楽しい。不況や効率化の影響で、通販型広告や、短期視点の消耗品のような広告が定着してしまったが、広告主や代理店の方には、人を楽しませ、人々を虜にするような、話題性のある楽しいニュースのような広告を期待している。
消費者にできることは、企業の素晴らしい取り組みについて正しく評価することだろう。消費者は賢い。ソーシャル時代の広告には、「効率的な広告ではつまらないし支持されない」という流れを作るこが大切だ。日本は、効率的なモノづくりをした結果、苦しんでいるが、ジョブスのように価値のある商品を作ることが一番大切だ。広告も価値を作り出すことが今求められている。
追伸
新しい時代のマーケティングについては、「アイラブマーケティング」に可能な限り取り上げているので、参考にしてみてほしい。
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