エンジニアと裁量労働制
なにやら世間で裁量労働制についての議論が盛り上がっているようですが、
裁量労働制に真っ向から反対しているエンジニアはたぶん向いていないから作業系の仕事に転向した方がいいよ
ですよね?
だって、やることが決まっていたら、シェルスクリプト書いたり、フレームワーク入れたり、マクロ組んだりして効率化してさっさと終わらせたいと思うのがエンジニアという生き物じゃないですか。
効率化したら給料が下がるなんて、なんたる理不尽!!
そう怒るのが筋だと思います。
会社にとってもそれでなんら不都合はないばかりか、どんどん業務改善して早く帰ってもらって、ジムに行くなり、カラオケに行くなりしてリフレッシュしてもらったらいいですし、あるいはお金をもっと稼ぎたいという人はどんどん仕事を入れてもらってもいいわけです。
その意味で、裁量労働制というのには、私は基本的に大賛成です。
ただ、今政府が推し進めている裁量労働制は、たとえば読売新聞では「あらかじめ決められた時間を働いたとみなす制度」(読売新聞 「裁量労働制調査 柔軟な働き方を冷静に論じよ」)とか定義されていて、正直これは意味がよくわかりませんね。
先に仕事の範囲を確定させて、それをどのように実現するかという裁量は個人に任せる、というのが裁量労働制だと私はずっと理解していましたし、それがエンジニア職・専門職にはしっくりくると思ってました。
仕事の範囲を確定しないで、給与を確定させ、やり方に裁量を持たせるって意味がわかりません。。
そんな曖昧な制度であれば反対です。
確かにそれであれば、今多くの方が不安がられているように、従業員側が不当に不安定な状況におかれる気がしますし、効率化したらしたで給与はそのままに次の仕事が降ってくる臭いがプンプンします。
やはり、裁量労働制を導入するのであれば、「業務範囲の定義」+「報酬額交渉」+「総括」の3点セットが必要でしょう。
それであれば、特にエンジニア職・専門職の多く集まる会社であればうまく回るような気がします。
もちろんある制度の方が現行制度より良いような気がしても、それを今すぐ変えるべきかというとそこは微妙だったりします。
うまく燃えている火をつつきまわして消してしまう
ということはよく起きることであって、現状でさほど大きな支障なく回っているのであれば、それを下手にいじって現場を混乱させてはいけません。
ただ、経営者としてはすべての可能性は常に俎上に載せておく必要がありまして、裁量労働についても私の個人プロジェクトのチケットに優先度「低」で、5年くらい前から載っています。
実はうちの会社なんかは、おそらく来月から裁量労働制で行くとなれば、すぐに移行できる環境が整っています。その理由は以下の通りです。
- 開発業務はもちろん、技術調査や新人教育なども含めほとんどすべての業務はチケット駆動で行われている
- 定期的に発生するしょうもないルーチンワークは、ポイント制で義務化されている
- 「これ誰がやるのよ」みたいな雑務もチケット化され、作業した人には褒賞が与えられるようになっている
- VPNや社内SNSやチャットシステムなど、リモートワーク環境が整っている
- そもそも今でも仕事量や納期を各自判断して、有給を取ったり15時に帰ったりしている
このような仕事の進め方をしていますので、あるプロジェクトが発足する際に、チケット単位でだれがそれを担当し、その報酬をどうするのか、という話し合いをするのはそれほど難しいことではありません。
現に外注プログラマーの方にはそのような進め方で作業をしていただいてますしね。
なので、正社員プログラマーに業務を効率化することへのインセンティブをどう持たせようかと考えたとき、私には裁量労働制というのは大きな魅力に映ります。
(繰り返しますが、今政府が推し進めようとしている曖昧模糊とした裁量労働ではありませんよ。)
ただこの制度もいいことばかりではないです。
パッと考えただけで
・プログラマーには業務内容の見積りと報酬金額の交渉が難しい
・総括の段階で、労使で「価値観の相違」が如実に表れ、不要な軋轢が生じる
・プロジェクトのアサインメンバーの流動性が失われる
・不測の障害対応など即時対応力が弱まる
・プロジェクトの属人性が高まりフォローアップ体制が弱くなる
・給与が固定費ではなく変動費になるので利益予測が困難になる
・始めはうまく回らず、労使双方にストレスが生じる
というようなデメリットは思いつきますので、効率化がどこまでこれらデメリットを上回ってくれるか、ですね。
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