【書評】『最強マフィアの仕事術』:マキャベリか、ソロモンか
フォーチュン社が過去におこなった調査によると、アメリカのマフィアによる非合法ビジネスの年間収益は500億ドルあまり、GNPの1.1%にも相当するそうだ。そのビジネスは麻薬売買、高利貸し、ギャンブル、売春から労働組合、建設業、興行、スポーツ団体まで多岐にわたる。
そのマフィアたちを財力、権力を基準にランク分けしたデータで、トップ50の一人に挙げられていた人物が、本書の著者である。著者はニューヨークを拠点とする五大マフィアの一つ、コロンボファミリーで最年少幹部として君臨した人物。アル・カポネの再来と謳われ、後のニューヨーク市長ジュリアー二氏とも、バチバチやり合っていたそうである。ちなみに現在は、その筋から足を洗っている。
◆本書の目次
01 マフィアだけが知っている実践の知恵を教えよう
02 基本を知らないヤツは何をやっても成功できない
03 結果よければすべてよし!? マキャベリの罠に気をつけろ
04 本当の成功を手にしたいならソロモンの教えに学べ!
05 おしゃべりなヤツは大物にはなれない
06 マフィア流の会議術”シットダウン”から交渉テクニックを学べ
07 失敗はいつか成功するためのものだ
08 法律を守れ、税金はきちんと払え、仕事は誠実にしろ
09 マキャベリか、ソロモンか、あなた自身の師を選べ
10 本当の成功とは?自分にとっての「成功」を定義せよ
成功したマフィアは、実業界でも同じように成功できる、そう著者は確信しているようだ。マフィアが持つ「実践の感覚」だけは、MBAでも教えてくれない。そしてその是非はともかく、マフィアで大成するものは、とにかくハードワークであるという。パジャマ姿で殺されないために早起きをし、成果を出すために多くのことに気を配る。仮にマフィアが赤字を計上したら、それは文字通り血の色に染まることを覚悟しなければならないのだ。
本書で特徴的なのは、実践的なテクニックのみならず、その根底に流れる思想的なバックボーンに踏み込んでいるというところにある。そして、その論点は、マキャベリ的であるか、ソロモン的であるかという一点に集約される。
マキャベリは、イタリア・ルネサンス時代に外交官として活躍した『君主論』でおなじみの人物。その代表的な教えは、「どんな手段をとろうと、結果を出すことがすべて」。一方のソロモンは旧約聖書に登場する古代イスラエルの王、『箴言』でおなじみの人物。その代表的な教えは「本当の成功のためには、誠実で、高潔で、勤勉であらねばならない」というもの。
「結果を出す」ことと、「誠実である」こと。片や目的で、片や手段。一方は動詞で、一方は形容詞。はたして著者の選択はいかに。そして、あなたならどちらを選びますか?
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