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【書評】『大人げない大人になれ!』:大人げない書評

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著者: 成毛 眞
ダイヤモンド社 / 単行本 / 207ページ / 2009-11-20
ISBN/EAN: 9784478012246

元マイクロソフト社長・成毛眞氏が、自身のモットーである「大人げなさ」について綴った一冊。年末に多数のブログで「おすすめ本・ベスト10」と紹介されているのを見かけ、新年一冊目の読書はこの本と決めていた。数ページ読み始めた段階で、この本が尋常ではないくらい”大人げなく”、そして、このうえなく刺激的な一冊であることがわかった。

◆本書のココが、大人げない!
1.”大人げなさ”の必要を説明するために、わざわざネオテニーなどという学説を持ち出し、チンパンジーの幼形進化の話から自説を解説しているところ。この恐ろしいばかりの必死さ。実に大人げない。

2.例えば「時間の使い方は一点集中型」という章。時間の使い方について、さんざん説明した後に「さて、途中でこの項を読み飛ばしもせず最後まで読んでしまったあなたは、すでに数分の時間を無駄にした。」とある。こんな途中の章で、こうくるか!という鮮やかな手技。実に大人げない。

3.巻末についている「大人げなさを取り戻すための本棚」のページ。その中の「役立たないが愛すべき本」で紹介されている本が、本当に役に立たない。「もしも宮中晩餐会に招かれたら」を読む必要には迫られていないし、「馬車が買いたい」を読む理由も見当たらない。しかし、くやしいが面白そうである。この恐ろしいばかりの知識量と少々のおちょくり。実に大人げない。
よくよく考えれば当たり前のことではあるが、”大人げなさ”とは身につけるものではなく、取り返すものであるようだ。”社会のこと”、”未来のこと”に不安や憤りを覚える前に、”自分のこと”、”今、この瞬間”を楽しむということを、思い出せば良いのである。周囲のことが気になるかもしれないが、子供は無条件にかわいいし、バカボンのパパは無条件に”これでいいのだ”。この感覚、たしかに日頃忘れがちなことでもある。

困ったことに”大人げなさ”とは伝播するものらしく、本書の書評も若干”大人げない”ものになってしまった。目下の心配は、この”大人げなさ”が世の中に浸透しきった後に、”大人げない”著者が「大人らしい大人になれ!」などという本を出すのではないかということだ。それをやりかねないくらい、”大人げない”一冊である。


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