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息は鼻から吸うの勘違い 良い声を出すために息は口から吸って口からはく

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「息は鼻から吸う」

これは間違っていません。

ボイトレのレッスンで「息は口からすいましょう」というと、えっ?という表情をなさる方がけっこういらっしゃいます。またアマチュア合唱において鼻から息をすっている方も多いですね。確かに、私も小・中学校の音楽の授業では「鼻からすいましょう」と教わりました。

しかし、発声において良い声を出そうと思ったら、口からすって口からはくのがベーシックな方法です。

なぜ鼻からすってはいけないのでしょうか。

その理由は3つあります。

1、鼻から吸うと口の中が狭くなる

鼻から息を吸っていただくとわかりますが、鼻から息をすっているときというのは、舌の奥が喉の上に上がり口の中が狭くなります。

響く通る声を出すためには、口の「中」が常に、できるだけ開いている必要があります。
なぜ開いていなくてはならないのかというと、口の中を良いホールのように考えます。よく響く良いホールは天井が高く空間が広いですね。
口の中も同じです。口の中がせまくなってしまうと、声はとたんに響かなくなります。

もちろん、鼻から息を吸ったあと舌を下げて空間をとれば良いのでは?と思いがちですが、鼻で息をすって、そのあと良い声を出すために口の中の空間をとろうと舌を下げるのに、時間のロスが生じます。発音している間というのは、ゆっくりしゃべっていたとしても、かなり一瞬です。また、よほど訓練していないと、一度あがった舌は瞬時にしっかりと下がりきるものではありません。

たいていは、口の中をあけて良い響きを得る練習をしても舌が邪魔をします。
自分が受けたボイトレのレッスンでは「ベロが固いよ」「ベロがあがっているよ」と常に注意を受けていました。いつのまにか無意識に固くなったり、上がったりしているのです。それほど、舌というのは思い通りにならないものですし、厄介です。

発声する前に、口から息をすうことで、口の中の空間を大きくとりやすくなります。

2、息を素早くたくさん吸える

良い声を出すためにはたくさんの息が必要です。ボイストレーニングでは呼吸のために呼吸をつかさどるインナーマッスルである横隔膜を使います。しかしながら、せっかく横隔膜を使えたとしても、たくさんの息を素早く吸うことができなければ、良い声にはつながりません。横隔膜がエンジンなら、息は燃料になります。口からすった方が素早くたくさんの息が吸えるのです。

また、しゃべっているときというのは、ゆっくりしゃべっていても息を吸うのは出来るだけ素早いほうが、発音や口の中の空間をとる準備がしやすくなります。口の空間というのは、基本的にあごが下りて、舌がのびている状態です。早く吸うためには、鼻から吸うのでは間に合わないのです。

3、口から吸うことで喉頭が下りる

良い声を出すときというのは、喉頭が上がっている状態でないほうがベストです。(喉頭とは喉仏のことです)
カラオケで叫んでいるとき、声が疲れてきたとき、大抵は喉頭が上がっている状態になります。喉頭の上下は声の音色に影響します。
喉頭を下げるにはどうしたらよいか?
それは、あくびをしたり、水を飲んだりするときです。
口から息をすうことで、口をあけたとき、あくびのときのように喉頭が良いポジションにきます。そのまま発声すると良い声になるというわけです。

3つの理由を書きました。

しかし鼻から呼吸する場合もあります。

鼻腔を意識し、よく響く声のための共鳴のトレーニングをするときは鼻で呼吸することがあります。

合唱などでは、アカペラ宗教曲のような繊細で本当に静かな音楽において、全員が口から息をすうと、呼吸音が音楽の邪魔をしてしまう場合があります。こういうときは静かに鼻からすうこともあります。

ボイトレとは関係ありませんが、健康面においては、人ごみや満員電車で口から息をすっていると、ばい菌がのどに付着しやすくなりますので、注意が必要です。

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