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クラッシックで活躍する孫悟空 ラン・ラン

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昨日の記事にも書きました1982年生まれの中国人ピアニスト、ラン・ラン(郎朗)。
ラン・ランについては、いつかぜひお伝えしなければならないと思っていていました。
 
今、本場ヨーロッパにて最も人気のある若手ピアニストとも言われるラン・ラン。欧米からは絶対に出ることはないタイプのピアニストだと思います。
西洋音楽を演奏する上で、非本場人であるというコンプレックスはみじんも感じられないほどの自信に満ちた音楽。それどころか、その作品がラン・ランのために書かれたのではないかと思うほど、彼自身が完全に消化し自分のものとして演奏する。名人芸のようなテクニックと陶酔感、型破りに自由な演奏スタイル。そして、底抜けに天真爛漫な音楽がラン・ランの特徴でもあります。
 
今、中国の優秀なクラッシック演奏家が、海外で大活躍しています。
 
文化大革命後、音楽学校でバラバラに破壊されたピアノを組み立てなおしてレッスンを行っていたという時代を乗り越えてきたハングリーさ。国民人口と才能。中国の長い歴史が生んだ伝統音楽を持つという強い誇り。そして、教育に対する情熱が合わさり、今見事に花開いたということなのでしょう。
 
ラン・ランは中国のスラム街で育ちました。プロの二胡奏者のお父さんのスパルタ教育で3歳からピアノを学び、9歳で中国最高峰の音楽学校に入学しています。国内外のコンクールで優勝しますが、コネや財力のある裕福な子弟の陰に隠れてなかなか認められませんでした。しかし13歳のとき仙台で開催されたチャイコフスキー国際青少年音楽家コンクールで優勝したのが転機となったのです。
 
そのハングリー精神がラン・ランを支えているのだと思います。
 
最近、アルゼンチン出身のユダヤ人ピアニストで指揮者のダニエル・バレンボイムのところにレッスンに行っているようです。
その音楽にしっかりした西洋音楽の伝統的なスタイルを持つバレンボイムのもとで修行しているというのも大変興味深いことだと思いました。
 
いつかドキュメンタリーでラン・ランをレッスンしているところを見たことがあります。ショパンの「黒鍵」を弾くときに、バレンボイムは冷蔵庫からオレンジを一個もってきました。
バレンボイムは、そのオレンジを手で包むように持ちながら、その手で最後までオレンジを落とさずに「黒鍵」を弾ききったのです。(これは凄いことです)
ラン・ランの独特な手のタッチを見て、古典的な音楽を演奏する場合のスタイルを教えようとしていたのでしょう。
 
ラン・ランがバレンボイムからどのような学びを得るのか、そして今後音楽がどのように変化してくるのか楽しみですね。
 
それでは本日は、ラン・ランがNHK交響楽団と共演した、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番のフィナーレを聴いていただくことにしましょう。
 
難曲中の難曲、ラフマニノフの3番を、深刻ぶらずに軽々と弾いてしまう猛烈なテクニック。協奏曲とはピアニストにとって多少「見せる(魅せる)」スタイルをとることもあるのですが、ラン・ランの場合は、難しいところは体当たりをするように、山を征服していくような面白さがあります。好き嫌いの分かれるところだと思います。「ドラゴンボール」のファンだというラン・ラン。孫悟空が空や山を駆け巡る様子をイメージしてしまいます。彼自身も筋斗雲(キントウン)に乗って世界を飛び回る姿を自分に重ねているそうです。
 
ラン・ランの自由奔放な演奏に、指揮者のシャルル・デュトワもよくついていっていると思います。さすが、アルゲリッチの元旦那さまですね。コンサートマスター(最前列ピアニストのすぐ後ろ)も、ラン・ランの急激なテンポの変化を一生懸命全体に伝えようと動きが大きくなっています。最後の数秒間、クラッシックピアニストはまずしないパフォーマンスがあります。これもラン・ランの個性なのですね。それではどうぞご覧下さい。

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