「ナンバーワンになれ」 ヨーロッパのクラッシックを自分のものにする中国人の強いメンタリティ
「ヨーロッパの音大は中国人や韓国人がたくさん勉強に来ていた。下手すると地元の人より多いかもしれない」
と、ヨーロッパ留学から帰ってきた友人がぼやいていました。
欧米のコンクールなどでは、中国人、韓国人の活躍が著しく、上位入賞者はアジア人が何人も占めることはそう珍しくありません。
中村紘子さんが昔、上海交響楽団の練習を見学したとき、楽団員がこのようなことを言っていたそうです。
「ヨーロッパの音楽をヨーロッパの楽器で演奏することを、中国人としてどう思うかとヨーロッパの人によく訊かれますが。違和感などあろうはずがありません。だってそもそもチェロにしたって、最初は中国からヨーロッパに伝わったものなんですから」
現在、この確固たる自信と誇り、そして中国の巨大なエネルギーをもって、ヨーロッパの音楽を消化し、完全に自分のものにしている彼らの姿を見ることができます。なんという強い自己肯定。
中国国内では、全国から子供たちをスカウトして、徹底的なロシア式の英才教育が行われています。そのため、中国で生まれて中国で育った音楽家が輩出されているのです。
その一人が、ラン・ラン(郎朗)です。
1982年生まれにして、すでに自伝も出版している中国のスーパースター。
17歳で急病の著名ピアニストの代役を務め、一躍世界的なピアニストとなりました。ニューヨークと北京の一等地に高級マンションを保有し、イタリアの高級ブランドを常に着用しています。
3歳から、両親には常に「ナンバーワンになれ」と言われ続け、猛特訓の日々だったそうです。
「ナンバーワン」になった今、彼の目標は、「教育」です。2008年に「郎朗国際音楽財団」を設立して、資金に恵まれない子供たちに奨学金を支給する活動を始めています。
しかし、「人間にとってのナンバーワンが結局何なのかは分からない」というラン・ラン。
NHK交響楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を共演したラン・ランも記憶に新しく、ものすごい熱演だったと思います。弾きながら客席を見たり、さらには最後のガッツポーズ。いまだに鮮烈にまぶたに焼きついています。
それでは、今日はラン・ランのピアノでショパンの英雄ポロネーズを聞いていただくことにしましょうか。
大変に達者なピアノだと思います。
そして、強烈な個性。
中国的なニュアンスも感じられる独特の語り口が、聴けばすぐにラン・ランだと分かるほどです。
彼が、これからどんなふうに音楽を深めていってくれるのか楽しみでもあります。