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個人的な強い思いが社会貢献ビジネスを支える

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10月9日(日) NHK「サキどり!」「社会貢献ビジネス"で被災地を救え」。
今、東北の被災地で広がっている”社会貢献につながる新しいビジネス”を特集していました。

「復興枝豆」、「東北コットンプロジェクト」、仮設住宅から病院などを回る乗り合いタクシー、石巻市雄勝地区で行われている「オーガッツ」など、本業を通じて、東北のために何かできないかと立ち上がった人たちの活動が紹介されています。
 
「オーガッツ」は、単なる復興支援ではありません。雄勝を未来に開かれ、世界に通用するようなものに育てていくプロジェクト。スタジオにもいらしていた立花貴さんが発起人となって始まりました。
 
震災で被害を受け、漁業もできないような漁港で、家も漁具もすべて失いながら「再び漁にでる」と熱く語る伊藤浩光さんの姿に心を打たれた立花さんが起業を決意。
困難の連続ですが、明るくパワフルなエネルギーと、ユニークなアイデアで、きっと成功するに違いないと思いました。
 
番組で、伊藤さんが念願の漁に出ている映像が出ていました。
生き生きとして、船の上で海風に髪をなびかせている。その姿の何と美しいことか。
まさに水を得た魚。陸の上とは違うオーラを全開にしてキラキラと輝いています。
野生のトラがジャングルに放たれた姿を見ているようです。
立花さんは、もしかしたら伊藤さんのこの姿が見たかったのかもしれない、とふと思ってしまうほどでした。

私はそのとき、指揮者フルトヴェングラーの1947年5月を思いだしてしまいました。
ナチスドイツ協力したという理由で、2年半全く演奏が出来ないでいたフルトヴェングラーが舞台に再び戻ってきた、あの歴史的な日。ベートーヴェンの交響曲第五番「運命」。 
待っていたのは、聴衆以上に、ベルリン・フィルのメンバーたちでした。
冒頭の有名な運命のテーマが、異常なほどのテンションでうち下ろされる。音が上ずり、アンサンブルも合わない。しかし、決して良い音とはいえない当時の録音から聴こえてくるのは、フルトヴェングラーのためなら命さえ惜しくない、とさえ思わせる楽団員たちの魂の叫びでした。
 
復興支援であり、立派な社会貢献のはずなのだから、起業は地域全体のためです。
しかし、私は、なぜか伊藤さんのあの姿をずっと見ていたい、伊藤さんが漁に出続けられるようにしなければならない、いや、伊藤さんのような海に生きる人たちを社会的に死なせてはいけない、と強く感じてしまいました。
 
私はブログを書いています。ブログはできるだけたくさんの人たちにメッセージを伝えることを目的としています。しかし、実際書いているときは、「この人にこれを伝えたら良くなるだろうなあ」「悩んでいたけれど、元気になってもらいたいなあ」と、個人のことが頭に浮かんでいます。そのほうが気持ちが入るし、不思議に力が出てくるのです。
 
徹底的にひとりの人に聞く。深く考える。そこから得られたことが社会貢献や起業のコアとなることもあるように思えます。
 
そして、聞くことに意味があるよりも、きく人の人間力が問われている。そのように感じています。

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