「一度失われた聴覚は回復不可能」 ヘッドホン難聴にならないために
キャンセル魔で、完璧主義者の大ピアニスト、ベネデッティ=ミケランジェリ(1920~1995年)は、演奏会で使用するピアノにも大変こだわり、楽器のコンディションが良くないと、キャンセルしてしまうことでも有名でした。超人的に耳が良く、指揮者が聴こえないようなオーケストラの間違いも正確に指摘したといいます。
しかし、自宅の練習用ピアノはアップライトで、マフラーペダル(アップライトピアノについている弱音ペダル)にはフェルトが2枚も固定されて、強く弾いてもかすかな音しかしない状態になっていました。
それが、実は「聴力を保護するため」と聞いてから、ずっと気になっていたところ、4月2日日経新聞にて「ヘッドホン難聴の恐れ」という記事が掲載されていましたのでご紹介します。
ヘッドホン難聴とは、ヘッドホンなどを大音量で聴いたために、耳が聴こえなくなる症状のこと。
デジタル音楽再生機や充電池の高性能化によって長時間音楽を聴くことができるようになったことも今後難聴の症状を訴える人が増える原因になる恐れがあるそうです。
人間は、耳の中の有毛細胞の先端にある「感覚毛」が音の振動で揺れることで音を認識しています。
しかし、有毛細胞は繊細で、大きな音を聴き続けると、傷ついたり抜けたりして、音が聞こえなくなります。
『一度傷ついた感覚毛や有毛細胞が再生することはない。失われた聴力を回復するのはほとんど不可能』(慶応大学耳鼻咽喉科 小川郁教授)
それではどのようにヘッドホンを使えばよいのでしょうか?
<聴き方>
・普通の会話が聞こえる音量にする
・電車内など騒音のあるところでは音量を大きくしすぎない
・初めて聴く曲は突然音が大きくなるのを予測できないため音を小さめにする
・耳が疲れたら聴くのを15分くらい休む
・聞こえ方に違和感があるときはすぐ病院に行く
<対策>
・音量の「リミッター」機能のついているものがよい
・雑音、騒音を軽減する「ノイズキャンセリング」機能のついているものがよい
<形状>
・密閉性に優れた耳栓型
・オーバーヘッド型
密閉された小さなレッスン室でピアノを弾きつづけていると、確かに耳が疲れることがありました。ただミケランジェリほど神経質にならなくとも、音楽などで感動できるのも聴覚あればこそですよね。
ぜひ大事して健康な聴覚維持に努めたいですね。