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ライフワークとしての学びを考えます。

貧しい経験からは痩せた音楽しか生まれない

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シンガーソングライターのさだまさしさん。
リリシズムあふれる旋律、深みのある詩の内容もさることながら、男声という声域を超越したような高音域が素晴らしいと思います。
 
2月4日の日経にさださんの記事が掲載されていました。
さださんは、今年に入ってからスタジオに籠もって作曲をしているそうです。
家だとじっとしていられないからという理由ですが、実際スタジオに入っても30分もすればコーヒーを飲んでスタッフとおしゃべりしているような状態だとか。
 
それをさださんいわく「子供時代ヴァイオリンの練習が嫌でし方がなかった頃そのまま」。
さださんは、若い頃、クラッシックのヴァイオリンでコンクールに入賞するほどの腕前だったのです。
 
やっぱり、クラッシックの楽器のお稽古は楽しくない部分も多いのですよね。
よく分かります。
私も子供の頃、あまりの単純作業の繰り返しに耐え切れず、ピアノの譜面台に雑誌を置きながら練習したことありましたから。
 
そんなさださんが曲作りに関して、興味深いことを書いていました。
 
「曲作りは僕のこの1年間の経験や読書や見聞の栄養が直ぐに判る。貧しい経験値からは痩せた歌しか生まれない。厳しいが楽しくもある」
 
演奏の世界でも同じことが言えると思います。
 
若いうちなら「よくこんなに指が動くわね」「すごいテクニック」「センスがあるね」で良いのです。
 
演奏家でも、天才少年でデビューして「二十歳過ぎればただの人」などと良く言われます。
楽器は稽古に膨大な時間がかかります。しかし、皮肉なことに楽器とばかり向き合うことが必ずしも音楽を成長させることにはならないのですよね。
 
音を出さない指揮者でさえ、経験値のない人が立てばそれなりの音しか出ないし、深い人間が立てば、深く豊かな響きがするものなのです。これは不思議な真実です。
 
演奏を聴く人は人間。
人間の心にいかに訴えるか。いかに説得力を持つか。
 
音楽も結局は人間学なのですね。

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