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プロに出来てアマチュアになかなか出来ない生命力を持った音 指揮者、山田一雄さんの「しなった音」を作り出す方法

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プロが出来て、アマチュアがなかなかできない音があります。
 
「しなった音」
 
一つ一つの音が鳴り、潤いがある。
音と音の間に粘り気を伴ったつながりがある。
まるで生き物のようにエネルギーを孕んでいる音。
それがしなった音なのです。
 
そのしなった音を作り出すための一つの方法があります。
 
それは、拍をなるべく細かく数えること。
 
一拍が4分音符だとしたら、8分音符で数えて音楽を作ります。
それが出来るようになったら16分音符・・・となりますが、難しいので、最初は8分音符で一拍を二つ分に感じとると良いでしょう。
クレッシェンドもディミヌエンドも音程も、全て8分音符単位で細かく感じるようにします。
 
指揮者で作曲家の山田一雄さん(1912年~1991年)、通称ヤマカズさん。日本の音楽界を支えた指揮者です。
山田さんの音楽作りはまさにしなった音の芸術でした。
 
2010年9月12日、私が指導を務める合唱団コール・リバティストにマエストロをお招きしての練習を行いました。
 
マエストロは、プロの合唱団、日本合唱協会に在籍していた頃、よく山田さんの指揮で演奏していました。
 
山田さんは練習のとき「皆さん~数えて~数えて~」とよくおっしゃっていたそうです。

「ボクは、山田先生がなんであんな言い方をしたのか、今その謎が解明したんですよ。先生は演奏するとき、うなりながら指揮をしていました。何でこんなネチネチやるんだろうって。音を引き伸ばす、っていうことを言っていたんですね。」
 
つまり、音の濃度を濃くしていったのだと思います。
例えば、4分音符一個分で「タア」というところに「タアアア」と入れていきます。
テンポがゆれるわけではありません。同じテンポの中で行います
その連続で音楽を作っていくと、非常に濃密な表現が可能となり、音がしなってくるのです。
そのとき、音を引き伸ばすようにつなげること、そして引き伸ばした音の中に表現を練りこむことに情熱をかたむけます。
 
非常に細かく、本気でやれば時間と手間と根気のいる作業です。
しかし、それが本当の音作りの世界なのです。
 
細かい指示でも有名だった山田一雄さんですが、まさに「神は細部に宿る」ということなのでしょうね。

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