合唱における発声について 口を開けるとは?軟口蓋を上げるってどうするの?
合唱の稽古をで、指揮者によく言われることの代表格が「口を開けて」「軟口蓋を上げて」だと思います。
「口を開けて。」
これは、母音によって口の大きさが極端に変わってしまうことについて言っています。
発声では、例えば母音を「アーエーイー」と伸ばしたときに、口の大きさがほとんど変わらないようにします。
日本人は、[エ]と[イ]の母音を発音するとき、口の大きさを狭くしてしまうので、それが発声に大きな影響を及ぼします。
また[ウ]の場合も、舌が上顎についてしまうくらい口をすぼめてしまうのです。
[ア]の母音は口が横に広がってしまい、浅い響きになってしまいます。
西洋的発声方法をマスターするためには、この日本人独特の母音をどう克服するか、にかかっていると言ってよいと思います。
2010年7月10日、私が指導を努める合唱団、コール・リバティストに、東京混声合唱団のテノール歌手、大貫先生をお招きしての練習を行いました。
「なるべく歯を見せないようにしましょう。歯を隠すことによって口の奥が引きあがります。口はラッパと一緒。横に広がっていたり、開いているかいないかわからなかったり、への字になっているのは良くないですね。上手な人は唇に力があります。」
完全に歯が見えないように歌う、ということではありません。あのパバロッティだってチラチラと歯が見えることがあります。ただ、上下の歯が見えていたり、頻繁に下の歯が見えているのは良くありませんから気をつけましょう。
「[エ]や[イ]は舌の力です。日本人はこれが弱い。前から見ると舌が餃子のような形になっていて、口の奥は開いている、というのが良い発声です。」
[エ]の発音は[オ]の口をして[エ]と言うように発音すると良いのですが、これは舌の力が弱いとなかなか出来ないものです。
[イ]は特に難しいですね。[ア]のような[オ]のようなイメージなのです。
決して、しゃべるように「いー」と言ってはいけないのですね。
「母音はすべて[オ]が基本です。[オ]は管楽器の響きに近い。そうすると倍音がそろってくるのです。なぜか微妙にピッチがずれたとしてもハモるんですね。」
「音をとるということは、その母音を響かせるということなのです。指揮者が『このフレーズ同じ響きで』と言います。
その場合、我々は楽器(空間)を変え続けなくてはならないのです。出す音によって振動数が違う。同じ空間では同じ共鳴が取れるわけがないんです。」
軟口蓋を上げることについて面白い説明がありました。
「鼻にかかる声というのは『軟口蓋が下がってます』と言っているようなものです。
臭い部屋に入って話さなくてはならないとき、鼻から息が入らないようにするってことありますよね?これが軟口蓋が上がっている状態です。『トイレ、お父さんの後でも大丈夫だよー』とか言っているときですね(笑)」
軟口蓋を引き上げたまま、響きを保つことが声楽をする上で最も大事なことの一つです。
西洋的発声をする上で、どのように母音を歌うか。口を開けることも、軟口蓋を引き上げることもすべてはそのためにある、と言っても良いかもしれませんね。