オルタナティブ・ブログ > 大人の成長研究所 >

ライフワークとしての学びを考えます。

ピアノ講座その1 「鍵盤から指を離さないで」 ショパンの練習曲 作品10-1

»

音大の恩師T教授をお招きして、ピアノ講座を行いました。
毎回熱心な参加者が集まり、とても素晴らしい内容です。
実際いらしていない方にもこのブログからそのエッセンスが少しでも伝わればいいな、と思います。
 
この会は、実際にピアニストに演奏してもらいながら、先生が実践的なレクチャーを施す方式です。参加は、ピアニストも受講生も、今のところ音大で同門の卒業生に限定しています。
聴いている人達も全員ピアニストでピアノ教師。
普通の人だったら、気にならないような小さなミスもすべて分かってしまうような、かなり厳しい状況です。
プレッシャーの中、3人のピアニストが演奏してくれました。
 
今回は、日比谷にあるスタインウェイの松尾楽器ホールにて、ショパンの練習曲作品10-1と10-5「黒鍵」、シューマンのアベッグ変奏曲、ドビュッシーの前奏曲集第一集より「音とかおりは夕暮れの大気に漂う」「亜麻色の髪の乙女」「とだえたセレナード」でした。
 
最初は、ショパンの練習曲 作品10-1です。
 
ここのホール、90名ほどの小ホールに、スタインウェイの最高機種であるフルコンサートグランドピアノが置いてあります。私も何度か演奏したことがあるのですが、音量のバランスをとるのが難しいホールです。
ピアニストは、自分の楽器を持ち歩くことができませんから、そこのホールと楽器に合わせた演奏を要求されます。
 
「左手は、音量が大きいですね。家で弾いている楽器と全然違う長い弦の楽器で弾いているのだから、こういうホールとこの楽器の場合、あまり強く弾く必要はありません。」
 
「右手は、不安定な音が惜しいですね。6月27日の、ジャック・ルビエ先生のドビュッシーのエチュード講座で、ルビエ先生は『鍵盤からあまり指を離さない方が良い』と言っていました。
音楽的手段ではなく、練習の一手段として指の付け根を鍛えるために、一日一回くらいは指を離して弾く訓練をしたほうが良いかもしれない。しかし音楽的な演奏のとき、叩くことによって雑音が発生してしまいます。」
 
ハイフィンガー奏法のことですね。
 
「ブゾーニ門下の名手ミエチスラフ・ムンツが、短い期間でしたが大学に先生として教えに来ていることがありました。
その時にムンツ先生は『このエチュードは音を3個ずつおさえながらさらうこと』と言っていました。レガートしたように。極端に言うと歌うような感じで弾く。
ムンツ先生は特別に大きな手をしていたので、難なくこのパッセージを抑えることはできたと思いますが・・・。手の小さな人でも、つなげて弾く意識を持つことが必要なのです。」
 
「演奏は、柔軟性は良かったが、仕上げて人前で弾くには、指を離して叩いてしまう音が聴こえますね。」
 
指を離さないでレガートで弾くために、この曲はある程度の手の大きさが必要です。そうでない場合は、音がごつごつと途切れてしまい、機械的になりがちな曲なのです。手の小さめな人が弾く場合は、かなりの柔軟性が求められると思います。
 
次回は作品10-5「黒鍵」についてです。

Comment(0)