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シンプルなものほど難しい モーツァルトはオムレツのようなもの

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モーツァルトは、子供の発表会などでよく弾かれる曲だと思います。
実際私も、小学生から中学生の生徒には、良くモーツァルトの曲を与えます。
なぜなら、音がシンプルで、ピアノを始めて3年もすれば大抵は弾けるようになるからです。
そして、さらに良い点は、子供はモーツァルトを何も考えずに無心に弾くので、とても様になって聴こえます。
芸術的か?お金を払うほどの鑑賞に堪えうるか?と言われれば難しいですが、子供は、モーツァルトをちょうど良い感じでとても上手に弾くのは確かです。
 
これが不思議なのですが大人になると途端にそうでもなくなります。
音は簡単なのです。
でも、大人のモーツァルトは難しい。
 
私は、学生時代の試験やコンクールで、モーツァルトが課題になると、思わず身構えてしまいました。
「これは相当練習しないといけないな」と思います。
周囲のピアニストの友人も、モーツァルトと言うだけで嫌そうな顔をしていました。
 
なぜでしょうか。
 
シンプルなものほど力量が反映されるからです。
 
料理でいうと、例えばオムレツ。
シンプルなレシピほど難しいのです。
 
有名シェフの作るオムレツは、真似しようと思ってもなかなか真似できるものではありません。
レシピどおりに作っても、絶対に同じような味にはならないのです。
 
簡単なレシピなのですが、ちょっとした差が違うのだと思います。
0.001秒を研ぎ澄ますタイミングなのです。
 
絵だと水墨画。
すっと引いた直線や曲線。一気に描くその勢いと間。
心に少しでも迷いがあると、すぐに筆に表れてしまいます。
 
ごまかしがきかないということですね。
 
子供がモーツァルトを上手に弾くのは、この「迷いの無さ」なのではないかと思うのです。
そして、大人でも年齢を重ね、ある種の境地に立った演奏家のモーツァルト。こういった人の演奏は本当に素晴らしいのです。

現在、モーツァルトのピアノ曲のCDで感動できるものは、数の割には少ないように感じています。
ショパンやシューマンなどのほうがよっぽど良いCDは多いと思います。
 
世の中には、天性の「モーツァルト弾き」と呼ばれるピアニストがいます。
 
モーツァルトが演奏者を選ぶのです。
ここまで演奏者を選ぶ作曲家は他にはいないと思います。
これもモーツァルトの天才性ゆえなのかもしれませんね。
 
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