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なぜ営業は売り込まなくていいのか

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昨日から「FOODEX JAPAN 2010」が4日間幕張メッセにて始まりました。

フーデックスは世界各国から2000社を超える食品関係者が集まる展示会です。
商売につながる製品やパートナー探しにたくさんのバイヤーが訪れます。

今回は、お世話になっているS社の社長さんから急遽呼ばれ、お手伝いにうかがいました。
S社は塩のみを扱う食品会社です。
わざわざ海外で自分のやり方で塩を作っています。

私は今やここの塩しか使わないほどの愛用者。
最近では、三宿にあるパンの巨匠や、ニューヨークにも出店した世田谷のS屋というラーメン屋さんも使っていると聞きました。
だんだんとここの塩の良さが広まってきているようで嬉しいです。

さて、S社は5年ぶりの出展。

もう一人、フリーの料理関係者Aさんと私の仕事は、お客様への試食と商品説明。
いわば営業の一つですね。

開場前、社長さんは私たちに仕事の説明をします。

・興味があって寄ってくる方だけに試食させてサンプルを渡す
・声をかけて呼び込みはしない
・名刺は、向こうから出してきた方のみ受け取り、社長につなぐ
・試食した感想はこちらから聞かない
・聞かれてわからないことは適当に答えない

社長さん、5年前と言っていることが全く変わりません。

今回初めてのAさんは
「せっかく出展して、どうして積極的に営業しないの?」
と、明らかに戸惑っています。
一人でも多くの方に商品を使ってもらいたい、という気持を強く持っていらっしゃるのを感じました。

Aさんは、積極的に仕事を始めました。

「お味見だけでもどうぞ」と試食をすすめ、必ず名刺をいただきます。
商品説明も、Aさんなりの解釈でイメージをふくらませるような話をします。

試食をし「ぜひお話ししたい」というお客さんを待たせて、社長さんは馴染みの業者やシェフと長々と話をしています。
そのたびにAさんはイライラ。
「後でまた来ます」と言っていなくなっていまった営業さんを、走って連れ戻しにいくこともありました。

社長さんはそんなAさんに
「名刺はもらわないでいいから。こんな名刺があっても意味が無い。
話をしたい人は待たせておけばいい。
あと、イメージで商品を語らないで。」
と注意しました。

私も5年前、少しでもお役にたてれば、と頑張って仕事をしました。
しかし、私が頑張れば頑張るほど、社長さんは微妙に不機嫌になっていったのです。
そのときのことを思い出しました。

この塩は、まだまだ一般的知名度は低いのですが、5年前より確実に本物志向のお客さんが増えつつあります。
社長さんは、気に入ってもらえれば、酒屋さんにだって商品を置いています。
いったん取引が始まれば、長いおつきあいになるお客さんばかりです。

間違って変なお客さんがついてしまい、そこにエネルギーをとられるよりは、味の分かる人だけにお預けしたいという考えなのではないかと思うのです。

音楽は聴きたい人が、絵は見たい人が、陶器は使いたい人が・・・分かる人に愛されればいい。

その商売の方法は全てにあてはまらないと思いますが、この時代、そういった心意気がとてもさわやかに気持ちよく感じました。

近所のブースから「どうしてここだけお客さんの集まりがいいか、どこが違うか知りたい」と見にきた経営者の方もいました。

きっと、着実にゆっくりと、ここの塩を使ってくれる人は増えていくと思います。

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