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ライフワークとしての学びを考えます。

女性のシェフが増えてきたといってもまだまだ難しい理由(その1)

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昨日の記事でも書いたように、辻調理師学校や、ル・コルドンブルーなどの料理学校で一流の料理家がついて、本格的な勉強ができるようになった環境もあるのでしょう。
女性シェフや料理研究家が少しずつ増えてきたようです。
しかし、寿司に限らず、フレンチやイタリアン、和食でも女性シェフは少なく、やはりまだまだ男社会というのが現状だと思います。
 
気に入っているレストランで、コルドンブルー出身の女性スタッフがいたのですが、昨年4月で辞めてしまいました。
 
背が高くて、趣味でサックスを吹くような人。
気立ても良く、皆から「たけちゃん」の愛称で呼ばれる人気者です。
いつもシェフの後ろで一歩下がった謙虚な姿勢から、厳しく修行しているのだろうな、ということが容易に想像できました。
 
厨房では、引き締まった表情で、てきぱきと働く姿は本当にかっこよかったのです。
この頃、コックコートが似合ってきたなあ、と思っていたところでした。
自分の店を持つのかと思ったら、実家の花屋さんを手伝うと言います。
 
辞めた直後に、お母さんとご挨拶に来ていました。
シェフが心配そうに、
「ぼく、なんか傷つくようなこと言ったかと思って・・・。」
と気にされていたのが印象に残りました。
 
「今の若い子はちょっと厳しいこと言うとすぐ辞めてしまう。
自分が受けてきたのと同じやり方をしてはだめなんだね。
すごく気を遣う」
 
「雇う前に親を呼んで、親子両方にどういう仕事か良く説明することにしている。
まずは親御さんに理解してもらわなければならないんだよ。
料理学校で勉強したくらいでは分からないことが多いからね」
 
と以前おっしゃっていたのを思い出したからです。
 
ここのシェフは、よくある職人気質タイプではなく、絶対に厨房で怒鳴ったりするようなことがない方です。
彼の素晴らしい人格のせいか、周囲にはいい人ばかりが集まって来ます。
 
彼女は「本当にお世話になりました。良い経験をさせていただき感謝しております」と笑顔でお礼を言っていました。
 
詳しい話は何も聞いていませんが、やはり料理の世界でやっていく難しさを感じたのではないかと想像します。
彼女の担当するデセールはとても美味しかったので残念です。
 
マネージャーさんによると、一日17時間労働で、若手スタッフは歯ブラシを口にくわえながら寝てしまう人もいるとか。
そして、厨房の仕事は火や刃物など、想像以上に危険と隣り合わせ。
牡蠣の下ごしらえをしているとき、ナイフで手のひらを貫通する大怪我をしてしまったスタッフもいたと聞きました。
 
そんな状況の中、女性一人でずっと頑張ってきたのでしょう。
 
きっと今も、持ち前の頑張りで花屋さんを盛り上げているに違いありません。

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