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Dropboxがローカルホスティングを提供開始

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日々の仕事環境はMacが中心で、WindowsやLinuxも使うことがあるため、ファイルを同期するクラウドサービスにはDropboxを使っている。同期の速さと同期するフォルダを決めておけば管理の手間がいらないことから便利に使っている。

そんなDropboxのビジネスは好調なようだ。昨年度のグローバルでの売上は13.9億ドルで、前年比26%増。1,270万人の有料ユーザーがおり、昨年だけで170万人増加している。無料ユーザーまで含めれば5億人がグローバルで利用するサービスであり、2018年3月には米国ナスダック市場に上場も果たしている。

同社のビジネスの中核は有料のユーザーであり、さらに力を入れているのが企業向けソリューションだ。昨年は日本でも建設分野、教育分野など「業界に特化したアプローチ」を行い、企業向けのビジネスの実績も増えている。建設現場などでは、スマートシンクの機能で容量の少ないPCやタブレットでも、必要な情報だけをローカルに同期させて使えるのが便利だと評価されているようだ。

多くのユーザーからDropboxが評価されているポイントとしては、世界規模で高性能、高セキュリティを提供していることだと、Dropbox Japan代表取締役社長の五十嵐光喜氏は自負する。高性能な同期を維持すDSC_1153.jpegるために、Dropboxではインフラ、つまりはネットワーク部分に大きな投資もしている。ユーザーとしては、PCやスマートフォンのアプリケーションの使い勝手に目が行きがちだ。しかしながら、本質的な部分となる同期をいかにして迅速化するのか。差分だけを同期する機能もその1つ。そしてもう1つが、各国の主要都市にネットワークのポイントを用意していること。同社のデータセンターからそれらのポイントに直接ネットワークを引いていることにより、速くセキュアな同期が可能となっているのだ。

さらに今回、顧客が日本国内にデータを保存できるよう、ローカルホスティングを2019年夏から開始する。これにより、データを米国のデータセンターに置かずにDropboxの機能が使えるようになる。米国では独自のデータセンターでサービスの運用をしているが、今回の日本のローカルホスティングにはAmazon Web Servicesのインフラを利用することになる。同様な取り組みは、すでにドイツでも行われて実績のあるものとなっている。今回のローカルホスティングは、企業向けサービスで利用が可能だ。従来の費用に追加することなく使えるものになる。

クラウドのビジネスが日本で大きく伸びるきっかけとなるのが、このような日本のデータセンターの設置だ。企業にはルール上、海外のデータセンターに置きたくないデータがある。さらにローカルにデータセンターがあることで、低レイテンシーでサービスを使えるようになる。これらで、一気にビジネスが広がるのだ。Dropboxも今回のローカルホスティングで、企業向けのビジネスをさらに拡大するきっかけを掴めるだろう。

とはいえ、単なるクラウドストレージのサービスという市場認知のままでは、それほど大きな飛躍は期待できないかもしれない。Dropboxが目指しているコンテンツ、コーディネーション、コミュニケーションという3つを、1つのプラットフォームにして提供する「3Cの戦略」が理解され、その上でクラウドコラボレーション環境となるPAPERなりのサービスが、既存サービスと組み合わされて採用される必要もあるだろう。

とはいえ、コミュニケーションなどの領域に入っていけば、今度は強力なMicrosoftのOffice 365やその他のクラウドサービスとの競合も避けられない。クラウドストレージの強さを生かしながら、新しい領域にいかに広げていくのか。そのためにはパートナーを含むエコシステムなども重要な要素となりそうだ。

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