オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

いよいよ黒船来襲で市場拡大が期待できる

»

 佐々木さんも書いているけれど、Amazonの電子書籍マーケットがいよいよ日本でオープンしそうだ。我々のようなインディーズレーベルで電子書籍のビジネスを進めているところにとっては、まさに待望の黒船来襲だったりする。

 これで、DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)をきちんとかけた状態で電子書籍を売りたいという要望に、容易に応えられるようになりそうだ。それも、デバイスを選ばないというところはメリット大だ。インディーズの立場でDRMを確保するには、現状ならアプリ化するしかない。そうなれば、iPhone用、iPad用を作りさらにAndroidをどうするか考えないと。iPhoneやiPadはまだノウハウも溜まってきたからいいのだけれど、問題はAndroid。端末のバラエティも多くどれをメインターゲットにすればいいかに悩む。さらに、どうもAndroidのアプリは安定性がない。実装が悪いという話になるのかもしれないが、アプリのサイズが大きくなるととたんに不安定に。さらに、端末の環境にかなり影響を受けるようで、端末の状況の違いによって安定性が大きく変わるようだ(あくまでも自分の周りで調べた結果だが)。

 もう1つがAndroidのマーケットがいまいち。あらかじめこのアプリというのが分かっていて、検索してそれを見つけるならいいけれど、「仮想の書店」と捉えてアプリを並べるというような環境ではまったくない。別にコンテンツをPRする場所を作って、マーケットにきちんと誘導する仕組みを作るしかないといったところだ。ということで、いまのところAndroidに電子書籍を展開したいという相談を受けると、かなり慎重にならざる得ない。

 で、Amazonだ。オープンしてくれれば、我々はコンテンツの発掘とその表現方法に注力できる。面倒なDRMも課金も考える必要はなくなる。そして、なんといっても国内で「もっとも大きな書店」というブランドもある。本を読みたい人、探す人を苦労せずに誘導してくれるはずだ。とくに我々が関わっているようなITの分野では、「Amazonに技術書がある」ということは、それなりのステータスであり、製品やサービスのブランドイメージ向上に繋がる。

 Amazonの取り分が大きいのではという話しはもちろんある。でも、課金の仕組みやDRMの提供、さらにマーケット力を考慮すれば、個人的には決して高いものではないと思っている。まあ、先に紙の書籍ありきだと、どうしてもそれとのバランスのなかで考えなければならず、苦労する事になるだろう。しかし、我々のように電子が先にある場合には、Amazonに3割なりとられたとしてもビジネスが成り立つよう、紙の本の値段に縛られずに自分たちが納得できる価格設定を自由にすればいい。

 今回のAmazonの動きに追随して、AppleのiBooks Storeも早期に国内で動き出してくれればなぁと期待している。Kindleはいいのだけれど、EPUB対応になるにはまだ少し時間がかかるだろう。そうなると、文字中心の読み物であればとくに問題ないけれど、表現力豊かな電子書籍を作りたいという要望にはまだ応えられない。この2つの日本向けマーケットが開いてくれることは、確実に日本の電子書籍マーケットを拡大することになるだろう。人によってはデメリットもあるかもしれないが、多くのユーザーには確実に大きなメリットがあると信じている。

Comment(1)