むささびの視線:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) むささびの視線

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

 ここのところクラウドか電子書籍がらみのことしか書いていない。今日からCOP10も始まったことだし、エコ関連も書きたいところなのだが。

 で、今日もクラウドの話。松岡さんがITmediaエンタープライズにこんな記事を書いている。

 マイクロソフトを筆頭に、さまざまなベンダー、SIerがクラウドビジネスに本格参入と威勢はいい状況にあるが、実際にビジネスになるかどうかは未知数だというのが各社の現状のようだ。いまいまでビジネス的に成功しているのは、Salesforce.comくらいってことになるのだろうか。

 SIerの仕事は、ハードウェアやソフトウェアの調達以外のシステム構築の部分については、いまだ人月単価で費用が決まる。「1人月いくら×何ヶ月働く」というやつだ。この人月単価、私がIT業界に入った80年代後半で100万円前後の価格だった。当時はバブルと言うことも影響していたのか、高ければ120万円、150万円なんていうのもけっこうあった。それも新人間もないエンジニアでも、UNIXなどのまだ技術者が少ない領域ならこれくらいの単価がとれることもしばしば。

 この人月の積み上げというのはまさに労働集約型のビジネスモデルだ。人が大勢いなければビジネス規模は大きくならない。自社に抱えられなければ、下請けに出して「人」を確保することになる。そして、20年以上経ったいま、このシステム開発の人月単価は、まさに価格破壊状態にある。単価50万円、60万円というのはごく普通に見られるようにった。40万円台の仕事も、最近ではよく見かける(さすがにこの価格は二次受け、三次受けのレベルではあるけれど)。ここまでくると、オフショア開発するより安上がりかもしれない。

 で、この50万円、60万円という単価でどんな依頼があるのかというと、たんなるプログラミングだけではない。結構な割合で上流工程の設計まで含まれていたりするし、SAPやOracleのERPパッケージ経験者なんて条件も付いてたりする。SAPやOracleのERP経験者なら、かつては200万円くらいの人月単価も普通にあったのに。そんな状況はすでに夢というわけだ。

 この労働集約型のビジネスで、ここまで価格が下がっている仕事というのも世の中ではかなり珍しいのではないだろうか。そりゃあ技術の進歩があるとはいえ、それも加味した1ヶ月分の仕事量を割り出しているわけで、その値段がここまで下がるとなると、ビジネスモデルの下流にいるソフトハウスなどは成り立たなくなっている。さらに、人材的にも質は下がっているのも事実だろう。そりゃあ、かつて120万でやっていた仕事を50万でやれと言われたら、当然ジュニアで給料の安いエンジニアを投入せざるえない訳だし。

 と、システム開発ビジネスのここ最近の暗い状況を長々と書いてしまった。暗いことばかり言っていられないので、何か打開策を見つけなければならない。そこでクラウドなわけだ。とはいえ、単純にクラウドに参入すると、さらにつらい状況に突入してしまう。クラウドは生産性も高く運用の効率もいいよねということで、より安価にシステム(というかアプリケーション)開発を行うことが求められるからだ。つまり、従来の労働集約型のビジネスモデルを変えずに参入すると、同じ50万円の単価のなかで、クラウドになったがためにさらにたくさんの仕事を素早くやるよう要求されかねないのだ。

 なので、いままでのビジネスモデルを念頭に入れてクラウドに参入する状況を思い描いてしまうと、どの企業もこりゃ儲からんぞということになってしまうのだ。そのため、冒頭の松岡さんの記事にあるように、どのベンダーもクラウドが儲かるかどうかと言う質問に対して、言葉を濁したような返答しかできないってことになるのだろう。

 逆に考えると、クラウドに参入する際に、過去からの忌まわしいモデルである労働集約型からなんとか脱する必要がある。とはいえこれ、なかなか難しい。クラウド上でヒット作アプリでも出れば、小さいお金が毎月少しずつ入ってくることも可能だろう。しかし、ヒット作なんてそうそう簡単には生み出せない。しばらくは労働集約型とヒット作(になるであろう)アプリ開発のハイブリッド型でビジネスをやっていかなければならない。

 それと、クラウドに乗ってしまうと、技術的な優位性というのを発揮するのが難しくなるという状況もある。というのも、難しい部分はクラウドが覆い隠してくれるからだ。なので、技術が高いからその技術が高く売れるというのは、クラウド上ではなかなか通用しないと思われる。

 そうなるとどうすればいいのか? 必要なのは、斬新なアイデアだと思う。その兆しとなりそうなことを、先日のCloudforceに参加した際に感じ取った。これ、小さなISV同士が連携して、新たなアプリを素早く作ったということを紹介するセッションでのこと。じつは弊社もそこに参加したわけだが、クラウド上の「何か」と「何か」が結びつくと、新たな可能性が見えてくるのだ。小さな種でも、連携させ新たなものにできるところは、従来の労働集約型の開発業務とは異なる、新たな無限な可能性を感じる部分だったりする(ちょっと大げさだけど)。

 ということで、アイデアである。それも、斬新なアイデアである。そのためにももっと幅広くアンテナを張り、どんなところにニーズとチャンスがあるのかを素早く拾い上げるようにしなければなぁと。そうすることで、クラウドが労働集約型から抜け出すきっかけになると確信している。

kouta

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有限会社タルク・アイティー 代表取締役社長、ブレインハーツ株式会社 会長

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