オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

温室効果ガス削減目標値達成方法の整理

»

 国連気候変動サミットが22日、ニューヨークの国連本部で開幕した。鳩山首相が、そこで25%という高い温室効果ガス削減目標値を表明、会場では鳩山氏のスピーチに対し賛辞が送られたようだ。

 褒め称えられても、それで温室効果ガスが減らせる訳ではない。高い目標値に向けて、努力し、新たな取り組みをすることに日本はなる。さらには、なんらかのイノベーションも必要だろう。

 ところで、1997年に採択された京都議定書、このなかで削減目標の達成方法としていくつかの仕組みが示されている。いわゆる京都メカニズムと呼ばれるものだ。これには、共同実施、クリーン開発メカニズム、そして排出量取引の3つの方法がある。排出権取引についてはよく話題にもなり、目標値達成のためにこの仕組みを利用して多額のお金を日本は出費することになるというような話をよく耳にする。実際のところ、これらはどういう仕組みなのだろうか。

 自分の知識の確認のためにも、ここで整理してみようと思う。まずは共同実施だ。これは先進国同士で、協力して温室効果ガスの削減のプロジェクトを共同実施する仕組みのことだ。ある先進国において、発電施設の運用改善などの排出量を削減するプロジェクトを共同で行い、その結果削減された排出量があれば、そのプロジェクトに投資した国の排出枠に、削減分の排出量が移転するというものだ。海外の先進国への投資分が、自国の排出量削減分の積み増しになるわけだ。とはいえ、この仕組みでは該当する先進国全体の排出枠そのものは、移転するだけで変わらないことになる。

 2つ目の仕組みが、クリーン開発メカニズムだ。これは、先進国と途上国が削減プロジェクトを共同で実施し、その結果の削減量分をやりとりする仕組みだ。基本的には共同実施と同じ考え方で、対象が途上国と先進国の間での共同プロジェクトということになる。途上国分の排出量が先進国に移転してくるので、先進国としては排出枠は増えることになる。

 3つ目が、いわゆる排出量取引。これは、先進国間での排出枠の譲り受けの仕組みだ。たとえば、先進国のAでは排出枠に対し目標値を超えたとする。その場合に、その超えた分を目標値に達成しなかったB国に移転できるのだ。その際に、排出枠に市場で価格を付けて取引するのだ。

 前者2つの方法は、とにかくなんらかの削減プロジェクトを実施し、温室効果ガスを削減して初めて成り立つ仕組みだ。排出量取引についても、もちろん削減はしなければならないのだが、各国に割り当てられた「枠」の大きさが重要となる。枠に対して余裕があるのかないのかで、余剰が生まれるかどうかが大きく左右するからだ。そのために、各国は政治的な駆け引きをして、自国だけが厳しい状況にならないようにしたいわけだ(本質的には、みんなで等しく厳しい目標を設定したいところだ)。

 駆け引きは、まだこのさきも続くことになるのだろう。そのことはさておき、とにかく日本は共同実施やクリーン開発メカニズムに積極的に投資するべきと思われる。そこで得られる排出量は、確実に日本の削減枠にプラスされるのだから。とくに途上国への投資は、日本の現状の技術力でも大きな削減効果が発揮できるはずだ。実際、そこに大きなビジネスチャンスを見いだしている企業がどんどん出てきているようだ。

 『「2つのECO」の出口は? 自然主義文明の台頭』というECO JAPANの記事によると、環境省が2002年に行った市場規模の調査結果では、1997年に24兆7000億円あった環境関連分野の市場規模が、2010年には47兆円を超えると予想しているとのこと。この市場の変化を、経営者はコスト負担と捉えるのか、あるいはビジネスチャンスと捉えるのか。それにより、見えてくる世界が大きく変わりそうだ。

Comment(0)