オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

起業に対する感覚の違い

»

 去年、そして今年は「日本オランダ年」だということをご存じだろうか? 昨年2008年は、日蘭修交通商条約締結150周年、そして2009年は、徳川家康により日蘭貿易が開始されて400周年だとか。

オランダは半導体が強い

 この、日本オランダ年にちなんで、いくつかイベントなどが開催されている。これからのイベントとしては、大阪EXPO Parkのチューリップフェスタや4月26日には利根運河自然体験ウォークなどがある。東京の日本橋宝町にも、中央通りに2万本のチューリップがお目見えするようだ。

 そんなイベントの一環として、本日開催された「オランダ・セミコンダクター」セミナーに少しだけ参加してきた。オランダというとチューリップと水車、そして海面より低い国土などのイメージしかなかったが、じつは半導体産業では世界をリードする存在でもあるのだ。これは全く知らなかった。

 半導体の設計から製造まで行え、政府も半導体の事業の促進にはずいぶんと力を入れているようだ。半導体製造装置で65%のシェアをもつ企業があったり、RFIDも世界中に供給しているとか。このあたりは、日本にかなり優位性があるのかなと思っていたのだが。

起業に対する感覚の違い

 本日聴講したセミナーに、トゥエンテ大学のブラム・ナウタ教授のセッションがあた。内容は半導体のテクニカルなことが多かったので、容易に理解できるようなものではなかった。面白いなぁと思ったのは本題のほうではなく、このトゥエンテ大学の話だった。学生の数は2008年から2009年で学士、修士過程が8千245人、博士課程が635人いるとのこと。学科は、行動科学、マネジメントとガバナンス、電気工学、数学、こんぴゅーた・サイエンス、技術工学、科学技術がある。

 大学がフォーカスしているのは、ピュアサイエンスを追究するのではなく、知識を商品化すること、つまり知識を商業活動に変換することだという。もう1つがスタッフ、学生間に起業家精神を育成することにも注力している。で、その結果、20年間で600のスピンオフ・ベンチャー企業が生まれているとか。現状、学生のまま起業した130のベンチャーもあるとか。

 スピンオフ・ベンチャーにより、すでに5000を超える雇用も創出しているとか。大学では、博士課程を修了したあとも1年間は大学に残れる制度があり、その間に起業することが多いとか。ファンドも利用できるので、企業もしやすいのだとか。学生のまま起業するのは、かなり小さいビジネスのようだ。学業と両立して週に数時間程度仕事に従事するなんていうのもあるようだ。ビジネスの対象も同じ学生だったりも。それでも、アルバイトで雇われて働くのでなく、ビジネスを興してしまうというのは立派だ。

 ベンチャー企業の多くは、数人から多くても30人程度の規模だという。みなIPOを目指すとか大企業化するとかではなく、どちらかというと小さい規模のままニッチな企業としてやっていくところが多いらしい。

 日本で起業するというと、数年前ほどではないけれどIPOして大金を得ることが1つの成功と定義されているかもしれない。まあ、ある種、「一発当ててやる」的な。会社を大きくするかIPOなどしないと、成功とは見なされない、というか自分で成功したとはなかなか思えないかもしれない。

 対してオランダでは、むしろニッチなところで勝負するために起業するようだ。どちらがいいという話ではないけれど、ニッチなところで勝負するために軽やかに起業してしまうというのは、働き方や就職というものに対する認識が大きく異なる結果なのかなぁと感じた。自分の仕事、自分のやりたいことは自分で見つけて自分で作り出してしまう。そういうことが実現できる環境が、整っていることもうらやましい限りだ。

 さて、せっかくの日本オランダ年、こういう部分についても十分に交流し互いにいいところを吸収しあえればいいのになぁと思うのだった。

Comment(0)