パブリック・クラウドとプライベート・クラウドを融合するようになる
前回、クラウド・コンピューティングってまだ世間に浸透していないんだなぁという話題を取り上げた。とはいえ、IBMなどのベンダーサイドはかなり先を見ているのだなぁと思う。
クラウド・コンピューティングのうち、Amazon EC2やSalesforce.com、Microsoft Azureなどをパブリック・クラウドと分類する。対して、自社内(自社が契約しているデータセンターでもOK)のコンピュータリソースを、仮想化などの技術を利用しクラウド・コンピューティングのように活用することをプライベート・クラウドとする。このプライベート・クラウド、かつてはグリッド・コンピューティングとかユーティリティー・コンピューティングと言われていたものと基本的には同じ意味合いだと思う。
これらは全く別のものとして利用するのもいいかもしれないが、パブリックもプライベートもユーザーに意識させないで利用するというのもありだ。つまり、ユーザーは自分が利用しているサービスが、パブリック・クラウドでもプライベート・クラウドでもいいというものだ。
ユーザーからは、これくらいのパフォーマンスでこれくらいのセキュリティレベルで利用できるサービスを利用したいという要求があったとする。管理者は、まあこんな要求だったらAmazon EC2でいいだろうと判断するかもしれないし、これは社内で厳重に管理したほうがいいと考えるかもしれない。パブリックもプライベートも同様なリソースと考えて、コストやパフォーマンス、セキュリティレベルなど最適なものをその都度選択する。将来的には日常的にはAmazon EC2で運用しているけれど、年度末の繁忙期だけは自社の契約しているデータセンターに移行するなんて使い方もあるだろう。さらに、プライマリは自社データセンターで、災害対策用のセカンダリーはAmazon EC2でなんて組み合わせもありかもしれない。
これら、技術的にはすでに可能なことだ。今後は、現状のパブリックとプライベートの中間的なサービス、つまり特定の顧客専用のパブリック・クラウドみたいなものを提供するベンダーなんかも出てくる可能性がある。ようは、コンピュータのリソースとサービスが完全に分離する世界であり、コンピュータのリソースは手元にあっても地球の裏側にあってもいいのだ。
こういう時代がきたときに、SIerやハードウェア、ソフトウェアベンダーは、いまとは異なるビジネスモデルになっているはずだ。というよりは、この変化についてこれなければ淘汰される存在になるだろうし、いまこの世界を先取りできるベンダーこそが、次世代のクラウドの時代にリーダー企業になるのだろうと思う。