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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

外資系IT企業が日本でビジネスを成功させるためには

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 IBMのように自社に強力な営業体制をもっているという企業を除き、外資系のIT企業が日本でビジネスを成功させるためにもっとも重要なのは、強力な製品群よりも国内に製品を売ってくれるパートナーがどれくらいたくさんいるかだと思っている。

 いまなら、コンシューマターゲットの製品であれば、口コミで広がりものさえ良ければネットワークダウンロードなどの方法で普及するということもあるかもしれない。しかしながらそれは、よっぽどその製品がいいものでなければならないだろう。ましてや、何百万、何千万円という価格で売られるようなエンタープライズ向けの製品の場合は、しっかりとした営業体制がなければ、なかなか顧客はそんな高い買い物をおいそれとはしない。

 そうなると、外資系IT企業が日本に乗り込んできたときに真っ先にやるべきことは、販売チャネルをどう確保するかということになる。とくにNECや富士通、日立、東芝など、国内の主要なハードウェア系ベンダーが取り扱ってくるというのは、チャネル戦略上は大きなメリットとなる。これに加え大手SIerや商社系IT企業が取り扱ってくれれば、その製品はかなり市場に根付いていると言えるかもしれない。

 とはいえ、他の外資系IT企業の競合製品が同様なチャネルを持っていたり、国内ベンダーそのものが競合となるようであれば、安穏とはしていられない。その場合、製品の性能の優劣や製品価格が、国内のチャネルパートナーが積極的に売ってくれる理由にはならない。チャネルとなる企業にとって、その外資系IT企業の製品を取り扱うことにどれだけのメリットがあるかが重要なのだ。

 そのため、顧客から引きにつながる市場向けのマーケティングはもちろん大事だが、チャネルマーケティングも外資系企業にとっては極めて重要だ。一昨日になるが、EMCが成田に日本向けのサプライチェーン拠点を構築したというニュース発表が行われた。

 これにより、従来であれば場合によっては2〜3週間程度かかっていた納期が、国内であれば最短24時間で出荷可能な体制ができあがるという。これは納期が短くなるという顧客のメリットももちろん重要なのだが、納期が長いためにチャネルであるパートナー企業が在庫をある程度せざる得なかった従来の状況が解消され、在庫負担がEMC本体に移ることのメリットがじつはかなり大きいと思われる。

 ストレージは安価になったとはいえ、まだまだ高価なものだ。在庫するには、物理的なスペースもそれなりに必要とする。この部分の負担が軽減されるのだから、チャネルパートナーにとっては、よりEMC製品を扱いやすくなるのだ。国産ストレージベンダーはともかく、外資のストレージベンダーでここまでの体制をもつところはないだろう。

 ストレージのような箱物に関しては、今回のEMC のような体制の整備は極めて有効だが、ソフトウェアの場合は必ずしもそうではない。どんな方策でチャネルを抱き込むかは、日本法人の腕の見せ所だ。さらに、SaaSという話になると、いかにしてチャネルがメリットを見いだせるかは、従来のライセンス販売ビジネスの場合とは大きく異なる可能性も高い。SaaSビジネス普及の足かせは、じつはこのチャネル戦略にあるのではと、密かに思っていたりもするのだった。

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