ITで少子化対策ができる?
昨年に引き続き、SaaS関連の情報を追いかけている。さっそく、先日おこなわれたセールスフォース・ドットコムの最新版Winter'07の記者発表会に参加してきた。Winter'07は、21世代目のバージョンであり、これまでの6年間に20回ものバージョンアップをおこなってきたことになる。
通常のライセンス購入型のソフトウェアで、こんな頻度でバージョンアップをしたならば、ユーザーから総スカンということになりかねない。当日の宇陀社長のコメントのように、メンテナンスの対象が1カ所しかないSaaSだからこそ、これは実現できたこととなる。
セールスフォース・ドットコムのバージョンアップは、「ソーシャルベースのものの作り方」だという。これはどういうことかといえば、顧客からの要望を新しいバージョンに対し機能追加するというもの。今回のWinter'07では、Ajaxをフルに用いた使いやすさ、SOX法にも対応できるワークフロー機能、また、とくに日本の顧客からの要望が強かったグループウェアへの対応とカスタマイズのさらなる強化などが追加されたとのことだ。
このソーシャルベースというのは、ある種オープンソースソフトウェアのコミュニティによる開発とも似ている。セールスフォース・ドットコム自身が提供するもの以外のAppExchange上のアプリケーションについても、idea exchangeというオンライン上のコミュニティのなかで意見を募り、その結果を踏まえたアプリケーション作りをするサイトも用意されているのだ。
ところで、発表会で宇陀社長が面白いことを言っていた。政府関連との意見交換の結果、日本に是非とも研究開発機関を作りたいということや、少子化対策にITを活用できないかといった話だ。最近はVoIPで柔軟なコミュニケーションを安価に実現できるので、在宅勤務も十分可能な状況になってきている。これを活用すれば、出産のために一度職場を離れた人が、ある程度時間や仕事環境に制約がある状況でも仕事に復帰しやすいだろうというのだ。実際、セールスフォース・ドットコムの最近のバージョンでは、Skypeとの連携でVoIPでシームレスにコミュニケーションをとる機能が搭載されている。
VoIPだけで、すぐに少子化対策になるとは言い切れない。しかしながらたしかにこういった発想も、IT活用の新たな1つの目的になりそうだ。効率化や利益追求だけでなく、少子化対策のような新しい価値に対しITをどう利用するか、もっと積極的に考えるべき時期にきているのかもしれない。まずは、別の価値観でいまある機能を見直せば、新しい発見につながるに違いない。