ソフトウェア業界は人気がない
日経ITproの「記者の目」というコラム「やはり危機に瀕していたIT業界の『モラル』」に、嘆かわしい状況に追い込まれているIT技術者の現状について記事が掲載されている。
アンケートの結果には、いくつかの危惧される現状についてコメントがある。ユーザー企業側の丸投げ体質やそれを受け取る開発側のスキル不足、複数の下請け構造による無理なコスト削減など。これらは、なにも今になって初めて問題視されたものではない。すでに10年前にも、同じように指摘されていた問題も多い。
ここにきて、さらなるモラル低下を招く一因に、IT、ソフトウェア業界に「人気」がないというのがあるのではないか。新しい産業として急成長していた時期は、おのずと優秀な人材がこの業界に入ってきていたはず。
実際、学生にとってソフトウェア業界は人気がない。ソフトウェア業界への学生の就職応募の数が、1年前にくらべて70%に満たないという数字を昨日見たばかり。いま学生に人気があるのは、外資系金融や商社、さらには身近なコンビニエンスストアなどだとか。ちなみに、外資系金融はここ1年で300%を超える応募者数の伸びがある。70%以下では、数年後にはこの業界に応募する人が、極めて少なくなってしまうことも予測される。
ITproのコラムにもあるように、業界の構造改革はもちろんだが、技術者個人の仕事の「やりがい」がモラルの向上に繋がると思われる。人気の仕事はやりがいに繋がる。現場を知らない学生がやりがいを見いだすには、ソフトウェア技術者の良いイメージ作りも大切だ。業界全体として若い力を確保できなければ、人気のないスポーツが衰退するように、日本のIT、ソフトウェア業界もこのまま衰退してしまうだろう。