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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

広告代理店という存在

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 1月のニュースだが、Googleがラジオ広告配信のdMarcを買収し、将来的にdMarcの技術をGoogle AdWordsに組み込み、新しいラジオ広告配信チャンネルを提供する計画だとのことだった。ウェブメディアとラジオの融合だ。そして、今日の日経新聞には、ヤフーが複数サイトに広告を一斉配信という記事が掲載されている。これは、メディア側が新たな広告媒体を複合的に開発し提供を始めるということだ。

 ヤフーは、手始めにアイティメディアやインプレスなどのIT系ウェブ媒体と組み合わせて、確保した複数の広告スペースに対しヤフーから広告を一斉配信するとか。この例では、ヤフー単独の場合に比べ、倍のユニーク視聴者が得られるそうだ。従来このあたりの媒体の組合せというのは、広告代理店のメディア担当者の領域であり、いかに低コストで効果的なメディア出稿計画を立てるかは、代理店の腕の見せ所だったはず。こういった動きが進んでいくと、広告代理店はゆくゆくどこで力を発揮すればいいのだろうか。

 そもそも、ウェブ系媒体では、広告代理店を経由せずに直接スペースを買い付けるような動きも見られていた。さらに新聞やテレビのノウハウはあっても、ウェブメディアの知識や経験が少なく、IT系企業であればクライアントのほうがウェブ媒体について知識豊富なんてこともしばしば見受けられたのも事実。ウェブメディアでは、アクセス動向やクリック率、出入り口の状況やサイト内での視聴者の動きなど、これらデータはすべてメディアサイドが握っている。メディア側は自らの媒体効果をさらけ出すことにはなるが、ヤフーのように圧倒的なアクセス数を確保できるならば、さまざまなデータを公開して広告効果を客観的に説明できるだろう。さらに、集められた視聴データには、さまざまなビジネスチャンスが眠っているはずだ。

 旧来メディアともいえるIT系雑誌が最近相次いで廃刊や休刊しているが、放送とインターネットの融合が真に起こり、メディア自身がさまざまな工夫を始めるような新しい時代になると、途中に位置する代理店の存在も危ういものになるだろう。媒体と個人を1対1で結ぶことができるウェブ系メディアは、広告代理店の仕事をも大きく変化させることになるのかもしれない。

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