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教科「情報」ってご存知ですか?

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皆さん、高校の必履修教科である「情報」をご存知でしょうか?

えっ、高校で、パソコンを教えるの!?
ああ、知ってる、知ってる。エクセルとか、パワポとかやるんだよね

 

いろんな声が聞こえてきそうです。
高校で「情報」という授業があることを知らない人は、多いと思います。
知っている人でも、その内容や目的については、あまりご存知無いのではないでしょうか。

 

若い方は、「情報A」とか「情報B」「情報C」という科目を受けたことがあると思います。

 

情報B?Aだけじゃないの!
あれって、BとかCもあったんだ。Aの後にやるのかな。

 

若い方、実際に授業を受けた方でも、そんな認識では無いでしょうか。
(少なくとも、うちの娘は、そんな反応でした)

 

先日、日本情報科教育学会が「情報」が果たすべき役割をテーマにしたパネルディスカッションを開催したそうです。

 

 

首都圏のIT企業の人事教育担当者を対象にしたアンケート調査の結果、中学校や高等学校における情報教育の内容を知らない人が多く、情報教育が行われていることすら知らない人も少なくなかったそうです。
記事によると、パネルディスカッションの中で、日本情報科教育学会会長の岡本氏が、

 

現在の日本の情報科は、教える内容がふわふわしている。一方で、ヨーロッパの国々ではきちんとしたカリキュラムを作っている。情報科としての中身を明確にしないと、教科の独自性を打ち出せない

 

と発言されたそうです。
「ふわふわ」って・・、なんか、ひどいですね。

 

また、少し前に、こんな記事もありました。

 

 

この記事では、アプリ開発のコンクールで、数々の賞を受賞しているスーパー中学生・角南氏が紹介されているのですが、その記事中、学校の「情報」の授業については、

 

通学時は、iPhoneで米スタンフォード大学でのプログラミング言語の授業を見る。「プログラミングを勉強できる環境が学校にはない」というのが理由。授業でもPCを学ぶが、キーボードの配列や機器の名前を教えたりするのが中心で、角南氏が望むレベルには程遠い。

 

と書かれています。中学生なので、「技術」の中で「情報」について学習したのだと思いますが、それにしても、こちらも、ひどい書かれようです。

 

なぜ、こんなにも、ひどく書かれてしまうのでしょうか。

 

これら二つの記事には、共通の大きな勘違いがあるように思います。

 

それは、義務教育を含めて、「情報教育」がまるで「優れたIT人材を生み出すため」にあるかのように思われていることです。
もしかしたら、「IT(パソコンやプログラミング)は、それを職業とするような一部の特別な人のためのもの」という偏見があるのかも知れません。

 

「情報」の授業の目的は、二つ目の記事にあるような、キーボードの配列や機器の名前を覚えることではありません。

 

「情報教育」全体としては、「情報活用の実践力」、「情報の科学的理解」、「情報社会に参画する態度」の3つの観点をバランスよく身に付けることを目標としています。

 

普通科の一般の高校生を対象とした必履修教科である「共通教科情報科」の目的は、「社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる」ことです。

 

つまり、この「情報化社会」で、すべての人に求められる能力です。

 

一方、IT人材など将来のスペシャリストを育てるための「情報」は「専門教科情報科」という、専門学科に開設される教科になります。

 

一つ目の記事の中で、岡本会長が、なぜ、「現在の日本の情報科は、教える内容がふわふわしている」という発言をしたのか、パネルディスカッションを実際に聞いてないので、ちょっと良く分かりませんが、少なくとも、学習指導要領を見る限り、目的は明確なのです。

 

もしかしたら、高校に入学するまでの義務教育での学生の学習進度にバラつきがあったり、教える先生のスキルがマチマチだったり、学校の環境に差があったりするので、そのような現場の裁量によるところが大きくなってしまうことを憂えているのかも知れませんが・・。

 

まあ、それはともかくとして、目的は、この情報化社会の中で、全ての人が身に付けておいて欲しい能力なので、その内容は多岐にわたります。
プログラミングも(うちの娘の中学の場合はBASICでしたが)教えます。
もちろん、生徒によって、興味の持ち方、理解度には差がありますし、二つ目の記事のスーパー中学生が望むようなプログラミングについては教えません。
だからといって、学校の授業がくだらない訳でも、彼女のレベルに対して劣っている訳でも無いわけです。
「プログラミング」という情報教育のごく一部の項目だけ見て判断してはいけません。
それじゃあ、100m走で大人の大会に出るような足の速いスーパー中学生が、「保険体育の授業のレベルが低い」と言っているのと同じです。そんな人はいないと思いますが。

 

義務教育での「情報」は3つの観点のうち、「情報活用の実践力」が中心になります。

 

で、高校の「情報」は、「情報活用の実践力」が「情報A」、「情報の科学的な理解」が「情報B」、「情報社会に参画する態度」は「情報C」と、どの観点に重きを置くかによって、3つの科目があったのです。

 

情報A、B、Cの謎、これで解けましたね。

 

「3つの科目があった」と過去形にしたのは、今年度からは、新しい学習指導要領が実施されて「2科目」になっているからです。
「情報A」しか採択していない高校が多かったそうなのですが、「情報活用の実践力」は、義務教育で出来る部分も多いので、「情報A」に相当する科目は無くし、「情報B」が「情報の科学」、「情報C」が「社会と情報」に生まれ変わりました。生徒が、自身の能力・適正、興味・関心、進路希望によって選ぶことが期待されています。

 

今日は、非常勤講師として、大学で「情報科教育法」の講義をしてきました。
「情報」の先生になるための授業です。
4月から始まっていて、今日で12回目、「共通教科情報科」の内容は既に終え、今は、もう「専門教科情報科」の科目の内容に入っています。

 

「専門教科情報科」の内容は「共通教科情報科」と比較して、当然ですが、一つ一つ深く学習していきます。
特徴は、実践力を身に付けること、のように思います。
例えば、ワープロソフトを使って、文書を作りましょう、という内容でも、単にワープロの操作を教えるのではなく、文書の組み立て方やビジネス文書の書き方など、一見、ITとは関係ないような内容も取り上げます。実際の文書作成に当たっては確かに、必要になりますからね。
プレゼンテーションについても、パワポの使い方だけではなく、プレゼンの目的を明確にする手法や、プレゼン当日の流れ、さらに、話し方などの発表者の心得まで学習します。

 

ここまでやらないと、ITはあくまでも道具ですから、その道具の使い方だけ覚えても何もできない、ということなのでしょう。
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