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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

情報処理学会誌5月号「ソフトウェアレビュー/ソフトウェアインスペクションと欠陥予防の現在」特集のゲストエディタを担当した

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国立情報学研究所の田中先生とともにゲストエディタを務めた。以下の6論文記事から構成される(敬称略)。ここ(情報処理学会)に特集記事のタイトルが公開されている。

0. 編集にあたって (森崎修司 奈良先端大)
1. ソフトウェアインスペクションの動向 (森崎修司 奈良先端大)
2. ソフトウェアインスペクションの効果と効率 (野中誠 東洋大)
3. 上流品質向上に関するソフトウェア評価技術の国際標準化動向(込山俊博 日本電気)
4. 上流工程における発注者視点からの品質向上への取り組み(清田辰巳 東京証券取引所)
5. 第三者インスペクションによる品質検査と欠陥予防(細川宣啓 日本IBM)
6. テストエンジニアが参加するアジャイルインスペクション(
永田敦 ソニー)

ThinkITの特集(本ブログの過去エントリでの紹介)や@ITの連載記事に加え、これがソフトウェアレビュー/インスペクションのさらなる広まりに寄与すればと思う。特集を組む機会をいただけたのは非常に幸運だと思う。第一線で活動されている方々にご執筆いただいたこともあり、改めて読んでも、とても読みごたえのある特集になっている。ソフトウェア開発の実務に携わる方々にも記事を書いていただいており、実務者の方々にも読み応えのある内容になっているのではないかと思う。

これらの記事やWACATEワークショップ2009ソフトウェアインスペクションワークショップ2009をきっかけに、ソフトウェアレビューの国内における情報やベストプラクティスの共有、研究がもっと活発になってほしいと思う。

どの記事もお勧めなのだが(私の前置き2つを除き)、5月中旬に学会誌が配布されて以来、私が直接お会いした方との話によく上がるのが、東京証券取引所 品質管理部 清田部長の「上流工程における発注者視点からの品質向上への取り組み」だ。記事での徹底ぶりに「すごいなぁ」と改めて思っていたのだが、他の方々も同様のようで、よく話題に上がる。ウォータフォールモデルで要件トレーサビリティを徹底して実践されており、仕様変更、設計変更時には、必ず波及解析をする、とのこと。そのためのフォーマットを整えて、統一するだけでもかなりたいへんだと思うが、実施されているそうだ。

どのようなタイプのソフトウェア開発やプロジェクトにも、これほどのコストをかけて徹底できるかというと必ずしもすべてにあてはまるとは限らないが、ユーザ企業やベンダ企業の品質保証部門にとっては1つの理想形と言える。この取組みの一部がもし自動化され、コストが抑えられるようになれば、品質向上に大きく寄与できる可能性が高い。ご自身の品質保証のやり方を整理するという意味で参考にされてみてはいかがだろうか。

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