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【2012年の3大ニュース:番長と遊ぼう!】フェアからアンフェアの時代へ ~時代遅れの著作権法~

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※このエントリは「2012年の3大ニュース:番長と遊ぼう!」のためのフィクションです。本記事に登場する会社名や個人、架空のサービスは、現実の会社や個人などとは一切関係ありません。

今年は著作権にまつわる話題に事欠かない一年でした。とくに顕著だったのは、社会的にはフェアに見えるビジネスが撤退に追い込まれ、アンフェアに見えるビジネスが台頭したということでしょう。

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Comics10_lo_3 ●「フェアなのに」書籍スキャン代行は衰退の一方で自己スキャンは急拡大

昨年末に提訴されたスキャン代行業者「スキャンボックス」と「スキャン×BANK」は、いずれも「訴訟を継続できるほど収益のあるビジネスではない」と応訴を断念しました。また、スキャン代行の禁止を表明し、書籍にも明記するようになった大手出版社の動きは、中小の出版社にも広がってきました。いくつかの出版社は積極的に代行の許諾を表明しているものの、全体としては少なく、利用規約で「許諾のない書籍はスキャンしない」と表明していた代行業者は、今や開店休業状態に追い込まれています。

ブックスキャンを契機に広まった日本のスキャン代行ビジネスは、小規模な会社が乱立した影響もあり、わずかな需要を取り合っているのが現状です。同社代表の岩松慎弥氏は「会社や個人の書類整理など、新たな分野を開拓中」と語るものの、機密やプライバシーの問題もあり、「必要なスキャンは社内で行う」(利用者の声)と広がりを見せるまでには至っていません。一方、パナソニックからも安価なドキュメントスキャナが登場したこともあり、出版社の思惑とは裏腹に書籍スキャンはますます広がりを見せています。

●逆転勝訴でも喜べない私的録画補償金はテレビ局幹部の一声で解散の危機

地裁、知財高裁と東芝の2連勝となった私的録画補償金に関する裁判は、SARVH(私的録画補償金管理協会)の上告が受け入れられ、最高裁で審議することが決まりました。逆転勝訴に望みをつないだ SARVH ですが、日本テレビの細川知正社長が「補償金があることで、違法な複製についてまで許諾されていると思われている。テレビ局は補償金など必要としていない」と表明したことで、裁判の結果を待つことなく解散の危機を迎えています。

芸団協の幹部は「スポンサー偏重のスタンドプレー」と批判するものの、激減した補償金にとっては裁判費用すらも大きく負担となっているのが現状です。業界内には、「裁判の結果に関わらず来年早々には解散するのは間違いない。とばっちりを受けそうな SARAH(私的録音補償金管理協会)が戦々恐々としている」との噂も流れています。

●欧米から大ブーイングも合法のお墨付きでリップカフェがレンタルを圧倒

今夏、店内で CD をリッピングさせる「リップカフェ」が秋葉原に登場しました。一見、合法とは思えない業態でしたが文化庁の著作権課が「倫理的な問題はあるが、違法性は認められない」という見解を出したことで、急速に全国に広がりました。ノートパソコンを持ち込んで300円払うだけで約20枚程度のCDをリッピングできる上、洋楽の最新作も用意されているため、従来のレンタルCD利用者が次々とリップカフェを訪れました。音楽業界に一層のデフレをもたらしたリップカフェは、人気店舗では2時間待ちも当たり前という状況です。

このとばっちりを受けたのがツタヤをはじめとするレンタルCD店です。近年、セールスCDが年々売上を落としていく中、レンタルCDの利用は横ばいを続けていましたが、今年は半減してもおかしくない状況となっています。カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長は「リップカフェは明らかに不公正で取り締まるべき」と主張しますが、世界的にはレンタルCDそのものがフェアなビジネスとはみなされていません。TPP参加の影響で著作権法を改正する圧力は、リップカフェの台頭で欧米のレコード会社を刺激してしまい、今やレンタルCDとともに違法化しようとする声が高まっています。このため、レンタル業界もうかつに積極的な法改正に動けないという状態が続いています。

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知的財産権の専門家たちは「今年はフェアなビジネスが潰され、アンフェアなビジネスが台頭した残念な年になってしまった」と振り返ります。これまでフェアユースの導入を渋ってきた著作権団体からも「公正だが違法というものを合法化するだけでなく、不公正だが合法というものを違法化できる形でならフェアユースの導入は好ましい」と歩み寄る声も聞かれるようになりました。来年は著作権の公正さが問われる年になりそうです。

【オマケ】今回使わなかった一行情報

●「儲かったのは扇動者だけ」電子書籍は花開く前に崩壊で責任なすりあい
●F22売込みで来日した幹部に「ステマですね」とKY発言した大物議員
●TPP参加で4大レーベルは再び「CDレンタルはアンフェア」の大合唱
●ネット否定で躍進を続けるジャニーズに他の大手事務所が追従を検討の噂
●「AKB48を見習え」K-POPアイドルも日本式ビジネスに倣う滑稽
●民主・自民共倒れで大躍進する共産党幹部が「政権取ったらどうしよう」
●au、ソフトバンクに続きドコモの採用も決まる通知領域広告は日本の恥
●ソーシャルゲームに利用者大移動で揺れるパチンコ業界「節電より怖い」
●「ギリシャよりきつい」イタリア、スペインも救済でドイツ国民が大暴動
●58年ぶりの完全日本一でドラゴンズの高木監督「何もしないのが一番」
●石原都知事原作のエロアニメが都条例規制に合格してアニメ業界の一安心
●ドコモ幹部がツイートで洩らした「スマホは使いにくい」で業界は大荒れ
●利用情報を検索できるウィニートラッカーの登場でウィニー利用者が激減
●石原慎太郎のあっせんで戸塚宏と密会した橋本徹市長の次の仰天政策とは
●空前の好景気に湧くテレビ局の裏でネット動画サイトはお先真っ暗の事情
●3Dで復活する「釣りバカ日誌」に「もう料金を上げたら?」と冷めた声
●虚構新聞の下請にまわっていたボーガスニュース主幹は余裕のリア充生活

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