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IT's my business

IT業界のコメントマニアが始めるブログ。いつまで続くのか?

Twitter でイケダハヤト氏のツイートが流れてきました。

以前も書いたけど「シェア」の次は「パブリック」だと思う。NHK出版から出た本は露出社会的なニュアンスがやら強かったけど、より「公共」や「社会保障」といった観点で「パブリック」がホットワードになる。パブリック時代の生き方を提示していきたい。

Comics17_lo クリス・アンダーソンの『FREE』(NHK出版)は、発売前にインターネットで全文を配布するという他に類を見ない手法で評判になり、ベストセラーになりました。しかし、「捨て身のマーケティング」でも取り上げましたが、私の知る限りNHK出版がフリーミアム・モデルで出した書籍はこれだけです。『FREE』を称賛していた著書の書籍ですら、フリーミアムではありませんでした。歌で言うところの“一発屋”であり、“業界の新しいトレンド”になったわけではありません。

誰もの関心を集めるような“目新しいこと”は、また生まれるかもしれません。それが追いかけるべきトレンドであるか、自分が思いつかなかった(やらなかった)アイデアなのかは判断できるようにしたいものです。

mohno

何度か触れたことですが、「レンタルCD」は日本独自の制度であり、世界を見わたしても同様の業態はありません。また、CD の中には CCCD という複製を防止する仕組みを持つ CD もありますが、ほとんどの CD にはなく、「複製して返却後も使い続けられる」ことが認められているという意味でレンタル業の中でも特異な存在です。

Comics16_lo■コンテンツ・ビジネスと著作権

著作物にも、絵画や人形といった“一点もの”というビジネスはありますが、一般にコンテンツ・ビジネスとは著作物を大量に複製することで成り立っています。多額の費用が必要な著作物でも、大量に複製することで一人一人の負担を安く済ませることができます。もし、“自分のためだけに”映画や音楽を作ってもらうとしたら相当な出費を覚悟しなければなりません。

また、昨今の著作権の条文が増えているのは、複製技術が多様化しているためです。とくに民生用の複製装置は大きく進歩しています。逆に、複製が容易でなかった時代には、著作権が今ほど重要視はされていませんでした。かつて、アメリカでは著作権で方式主義を取っていましたが、この時代に著作権表記をしなかった「ローマの休日」は著作権を放棄したとみなされています。しかし、当時は映写技術も複製技術も一般向けには普及していなかったため、さほど問題にもならなかったのでしょう。

■レンタルCDの背景

レンタルCDの制度は、元々アナログレコードからはじまったものです。当時は「レコードを試聴するためのサービスで、レコードが欲しいと思った人は買う」と言い訳されていました。レコードレンタルが始まった頃にも著作権の問題は提起されていましたが、すでにレンタル店が広まっていたこともあり、合法化する立法措置が取られました。その後、海外からの反発があって、1年間の保留期間が設定されました。

レコードから CD に移り変わった頃にも、ダビング先はカセットテープでした。DAT(Digigal Audio Tape)の登場によって「劣化しない複製」が問題になりましたが、SCMS という孫コピー防止機能を導入した民生用機が登場しました。デジタル複製は一世代のみという仕組みは MD にも引き継がれましたが、パソコン用 CD-ROM ドライブの登場と mp3 リッピングの普及で“業界の合意”の意味が薄れていきましたが、貸与に関する法律が変わったわけではありませんでした。

■複製して譲渡は“フェア”か

著作物の販売や頒布には権利者の許諾が必要ですが、購入した著作物を誰かに譲渡する際には著作権者の許諾は要りません(権利の消尽、著作権法第26条の2第2項)。そうでなければ古本を売買したり、要らなくなったCD を誰かにあげる場合にまで著作権者の許諾が必要ということになってしまいます。中古ゲームの販売については訴訟沙汰になり最高裁まで争われましたが、合法という判断が下されています。

では、複製して譲渡するという行為はどうでしょうか。私的複製は、日本では明文で認められていますし、譲渡の条件として複製物の削除が要求されているわけでもないので合法です。(譲渡ではなく貸与ですが)レンタル店で借りたCDの複製については、文化庁のウェブサイトで明確に問題がないと示されているくらいですから、脱法行為と言われることもありません。

フェアユースのあるアメリカではどうでしょう。かつてネット上で不要になったCDを交換する「Lala」というサービスが登場したことがあります。すでに、そのサービスは終了してしまいましたが、「Lala、インターネットラジオでCDスワッピングと販売を活性化」(TechCrunch)という記事では、このように書かれています。

たぶんLalaで一番普通と違うのは、参加者がスワッピングでCDを発送する際、CDからコピーしたデジタル楽曲は削除しなくてはならないことだ。これは大袈裟なようだが法的にはどうしても必要なこと。…

私自身も当時の規約で、CD を送付する前にリッピングした楽曲データを削除することが利用規約に書かれていました。複製して譲渡することが合法であることが明白なら、わざわざユーザーの不利になる縛りを設ける必要はないはずです(この縛りは Lala にとっても有益ではありません)。実際に裁判が起きた例はわかりませんでしたし、そもそも譲渡前に削除したかどうかは自己申告程度でしか判断できません。しかし、複製して譲渡する行為は、フェアユースにおいても真っ白と言えるわけではないようです。

■著作権に関する世界知的所有権機関条約

現在、著作物が権利者に無断で貸与できないことは、日本をはじめ多くの国が批准している「著作権に関する世界知的所有権機関条約」で規定されています。

第七条 貸与権
(1) 次に掲げるものの著作者は、当該著作物の原作品又は複製物について、公衆への商業的貸与を許諾する排他的権利を享有する。
   (i) コンピュータ・プログラム
(ii) 映画の著作物
(iii) レコードに収録された著作物であって締約国の国内法令で定めるもの

(2) (1)の規定は、次の場合には適用しない。
(i) コンピュータ・プログラムについては、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合
(ii) 映画の著作物については、商業的貸与が当該著作物に関する排他的複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合

たとえば、日本でも市販の DVD を使ってビデオレンタル業をはじめることはできません。しかし、この規定のままだと、とくに洋楽 CD はいっさいレンタルできなくなるおそれもあります。そこで、次のような規定が追加されています。

(3) (1)の規定にかかわらず、レコードに収録された著作物の貸与に関して著作者に対する衡平な報酬の制度を遅くとも千九百九十四年四月十五日以降継続して有している締約国は、レコードに収録された著作物の商業的貸与が著作者の排他的複製権の著しい侵害を生じさせていないことを条件として、当該制度を維持することができる。

日本だけ特別扱いされているわけです。

貸与権が設定されているからといってレンタル業が一切禁じられるわけではありません。許諾が必要なだけです。実際、ビデオレンタルは世界中にあります。一般的に、音楽は“繰り返し”聴くことが多いのに対し、ビデオの視聴は“一度きり”であることが多いので、返却後に使えなくても問題はありません。しかし、海外のレコード会社からレンタルCDをやらせてみようという話は出ないようです。本来、メジャーな洋楽は4大レーベルに集約されているのですから、レコード会社にとって“メリット”があるなら料率を決めて許諾するだけです。ユーザー側の需要がないとも思えません。通常のCDどころか、音楽配信に比べても大幅に安価だからです。

レンタルCDの功罪については「音楽コンテンツの値段」でも触れましたが、レンタルCDは音楽データの大幅な安売りであり、通常のCDや音楽配信に大きな影響を与えています。そして、海外の事情と比べてみれば、日本のレンタルCDの特異性はユーザー側に大きな利点のある制度だと認識できます。

mohno

産業技術総合研究所の高木浩光氏が、KDDI のプライバシーポリシーに関して同社の個人情報開示等相談窓口に電話した内容を公開しています。→「KDDI個人情報開示等相談窓口の対応」(YouTube) 具体的には「電気通信事業分野における個人情報の取り扱い」が、電気通信事業法の第4条(通信の秘密)の侵害にあたるのではないかという問い合わせです。

Comics15_lo_2■KDDI 担当者の対応

詳細は YouTube で確認できますが、高木氏の「違法じゃないですか?」という問いかけに対して、KDDI の担当者は一貫して「違法、脱法ではない」と回答しています。口調にいくらか疑問はあるものの、この回答はサポート担当として正しい姿勢です。企業活動が合法であることは(通常の)企業にとって大前提ですから、「機械のスイッチが入らない」「ANSI に準拠してない」といった“不具合の報告”とは違って、可能性を考慮するものではありません。より丁寧に表現するなら「当社としては違法とは考えておりません」という方がよいでしょうが、電話を保留したり、確認して折り返し電話するといった対応をしなかったことは妥当な対応だったと言えます。

一方、高木氏がさらなる問い合わせを続けた後に対応がグダグダになっていきます。後半で、「苦情窓口ではない」「書面での抗議は受けます」「理屈で申し上げられても困ります(←ママ)」と回答しているのはいただけません。苦情を受け付ける窓口でしょうし、電話ではダメで書面ならよいという話もおかしく、回答はどんな形であれ理屈が通っているべきだからです。“思いもかけない問い合わせ”ではあったのでしょうが、もう少し冷静に対応してほしいところです。

さらに「どの程度の広告なんですか?」「どういう広告に使っているんですか?」と内容を確認した上で「それは違法ではない」と回答しているのも問題です。担当者は法律の専門家ではないでしょうし(そう名乗っていない)、具体的な法律判断はできないはずです。ここで“担当者の見解”を披露してもしかたがありません。あくまでお客様(つまり高木氏)の「言い分」(具体的な主張内容)を聞いた上で、「担当部門に伝えておく」ことだけを回答すべきです。ただし、前述のとおり合法であることは前提ですから、折り返し回答する必要はありません。もちろん、本当に担当部門(法務部)に伝えなければなりません。サポート部門で握り潰してしまっては、後に本当に問題になったときに法務部の関係者だけでなくサポート部門の責任が問われることになります。

■余談

ウェブ上のサービスと通信の秘密の関連性が話題になるのは新しい話ではありません。Gmail がコンテキスト広告を始めてプライバシーが問題視されたのは2004年のことです(※1)。このとき Google は、「個人情報を第三者に提供しておらず、処理は機械的に行われているため、プライバシーの侵害はない」(大意)と説明しています(※2)。子会社、下請け会社、提携企業といったものを第三者でないと言えるのかわかりませんので、KDDI に当てはめられるかはわかりませんが、理屈としては今回のケースにも似ています。
※1「Gmailはプライバシー侵害の危険な前例となりうる~世界の市民団体が懸念」(Internet Watch)。
※2「Gmail とプライバシーの詳細

一方、Gmail がさまざまなプライバシー団体から問題視されていたのは事実ですから、「情報そのものを第三者に伝えず、機械的に行えばプライバシー侵害ではない」ことが明白なわけでもありません。総務省の「迷惑メール対策技術導入を検討されている事業者の方へ」にある「送信ドメイン認証及び25番ポートブロックに関する法的留意点の概要」(PDF)には、電子メールにおいて迷惑メールのフィルタリングを行う行為は「通信の秘密の侵害」にあたるとした上で正当業務行為であれば「違法性阻却事由」になるとしています。ここでは、正当業務行為が認められるためには、(1)行為の必要性及び正当性、(2)手段の相当性が必要とされていますが、「広告を出す」という行為が該当するかどうかは疑問です。また、KDDI が問題となった場合に、Gmail にどのように対応されるかは興味深いところです。

mohno

BSフジに『ガリレオX』という、(たまに)面白いテーマを扱っている番組があります。先日、この番組で「宇宙太陽光発電」を扱っていました。太陽光発電は地上では大気の影響を受けて効率が悪いため、宇宙で発電してから地上に電力を送るというシステムです。宇宙太陽光発電については、5年ほど前にもニュースを見てエントリを書いたことがありますが、いまだに続いているとは思いませんでした。

JAXA のサイトを見ると、研究計画担当の方のインタビューが掲載されており、「世界をリードする日本のSSPS開発」(SSPS=Space Solar Power System)として、次のように答えられています。

静止軌道上で太陽光を効率よく集光するシステムやエネルギーの無線伝送技術など、SSPSを実現するための技術的な課題はたくさんありますが、原理的には実現可能なところまできていると考えられ、検討段階から技術的な実証段階へと移ったところです。研究者の間では、2030年代の実用化を目標に、世界で初めての1kW級無線送電技術の実証実験準備に着手しました。この点で日本のSSPSの研究は世界をリードしていると言ってもよいでしょう。これは、SSPSの研究を長年継続してきた結果だと思います。

たとえ実現は可能でも、実用にはならないでしょう。

Comics14_lo_2 ■ハッブル宇宙望遠鏡

宇宙の方が効率が良いので宇宙を利用しているというものに有名なハッブル望遠鏡があります。地上から宇宙を観測すると大気の影響を避けられないため、宇宙に望遠鏡を持ち込むという考えは理にかなっています。実際、口径2.4mのハッブル望遠鏡は、地上の望遠鏡では口径10m程度に相当する性能があるそうです。ちなみに、すばる望遠鏡は口径8.2mです(1999年当時は世界最大の一枚鏡)。

wikipedia の項目を見るだけでも、ハッブル望遠鏡が大きな成果を残したことに異存はありません。しかし、打ち上げてから20年が経過したハッブル望遠鏡は、2009年のサービシングミッション(SM4)が最後の延命措置になるでしょう(シャトル計画が終了したため)。宇宙に置いておけば、メンテナンスフリーでいつまでも使えるというものではありません。コストも問題です。Wired の記事によれば、ハッブル望遠鏡は打ち上げまでに15億ドル(当時の為替レート1ドル≒150円では2000億円以上)というコストがかかっています。しかも、打ち上げ後に光学系の不具合が見つかり、7億ドルをかけて修理しています。

直径2.4m、長さ13mのハッブル望遠鏡ですら、これだけのコストがかかるのです。これに対し、すばる望遠鏡は建設費400億円です。修理が必要になっても、ハッブル望遠鏡よりはずっと容易でしょう。大気の影響を避けられないのはたしかですが、すばる望遠鏡も成果を残しています。

■宇宙太陽光発電

宇宙太陽光発電に必要な技術は、太陽光発電と無線送電です。太陽光発電については現在地上で使われている技術もありますし、さらに改良を進めることもできるでしょう。しかし、5年前のエントリに書いた通り、太陽定数(大気圏外に届く太陽光エネルギー、1.37kW/㎡)を超えて発電することはできません。変換効率が100%だとしても、100㎡のソーラーパネルを使って137kW以上発電することはできないのです。「宇宙ならば地上の10倍の効率が得られる」のが正しいとしても、そのためのコストは10倍どころではすみません。しかも故障したら修理するにも莫大なコストがかかりますし、劣化対策も必要です。どう考えても、地上に10倍の広さのソーラーパネルを並べる方がずっと安上がりです。

私は無線送電の技術開発には反対しません。かつて有線が当たり前だったネットワーク機能も、いまや無線LANが一般的に使われています。無線送電も、宇宙太陽光発電とは別の役割が生まれる可能性はあります。それはしかし、現実味のない宇宙太陽光発電を目的とすべきではありません。逆に、無線送電が「宇宙太陽光発電にしか使い道がない」ものなら、それは必要のない技術だということです。

■永久機関詐欺

ときどき永久機関(または類似)の発明でひと稼ぎ、という話が聞かれることがあります。もちろん稼ぐのは「永久機関を発明した」という詐欺師や似非科学者です。永久機関など存在しないとわかっていれば、そうした儲け話に乗せられることもないはずです。しかし、永久機関ではないがそれに近いほど画期的、という表現にごまかされてしまう人々はいます。

宇宙望遠鏡も永久機関ではありませんし、そのように主張されているわけではありません。しかし、莫大な打ち上げコストや維持費などを「現在研究中で、将来解決される」と想定しても、実現不能な永久機関と同じ夢を追い続けているようにしか見えません。「世界をリードしている」というのは、すでに世界からは見放されているのでしょう。民間企業である清水建設が夢を見ること(「シミズ・ドリーム」)については企業のイメージ戦略もあるでしょうから口出ししませんが、宇宙太陽光発電をあたかも現実味のある計画のように想定して税金を投じ続けるのはやめてよい頃だと思います。むしろ、よく今まで仕分けされなかったものです。

mohno

日本でパロディに関する裁判にマッド・アマノ氏の「パロディ事件」があります。日本ではパロディが著作権侵害になる例としてよく持ち出されます。一方、フランスはパロディが著作権侵害にならないと明文で規定されています。アメリカもフェアユースがあるので、パロディを法的に許容する理由とされています。

Comics13_lo ■パロディ事件

パロディ事件については、wikipedia に項目があります。どのような写真だったかは、日本写真家協会の資料(PDF)で確認できます(ただし、小さな白黒画像です)。また、この事件については、マッド・アマノ氏自身もご自分のサイトで振り返っています(「パロディー裁判「盗作かパロディーか」」)。判例検索で、最高裁の判決文(高裁へ差し戻し)も見つかります。

こうした資料(とくに判決文)を読むとわかるのですが、この裁判で問題にされたのは(「パロディ」ではなく)「元の写真をそのまま使った」ということです。実際、この裁判が引用には主従関係が必要という条件を示しています。

さて、wikipedia の「パロディ」の項目にも書かれている通り、フランスでパロディが合法であることは明文で規定されているのですが、裁判は起きています。検索して簡単に調べられるのものとしては『ジャングルの恥タルゾン』というターザンのパロディアニメ(エロパロのようです)と、『ピーナッツ』(スヌーピーが出てくる漫画)のパロディ本があります。

ネットで検索するだけでは、これらがどの程度のパロディだったのか分からなかったのですが、どうやら原作を引用して制作されたものではないようです。つまり、あくまで原作は元ネタになっていただけだということです。これをマッド・アマノ氏の事件に適用させることは、妥当なことでしょうか。

■写真の著作権

写真家の丸田祥三氏が、廃墟写真について模倣されたと小林伸一郎氏を訴えた裁判があります。「小林伸一郎氏 盗作・盗用検証サイト」を見ると、“同じ写真”とは言わないものの、そっくりな写真であることに違いはありません。少なくとも同じ人が角度や時間を変えて撮った写真だと言われても疑問は感じないでしょう。

おそらく丸田氏は、これらの写真を撮るためにさまざまな場所を訪れたり、色々な試行錯誤があったのではないかと推察します。一方の小林氏は、すでに“絵になる”とわかっている場所を訪れて似たような(しかし同じではない)写真を撮るだけですから、ずっと手間がかからないはずです。

昨年、この裁判について知財高裁の判決があり、丸田氏は敗訴しました。「「廃虚」写真家が二審も敗訴 知財高裁」には以下のように書かれています。

判決理由で塩月秀平裁判長は「被写体が同じで構図が似ていても、写真の表現上の本質的特徴といえる撮影時期や角度、色合いが異なっている」と指摘、小林さんの作品は著作権侵害に当たらないとした。

もちろん、こういうもので「ここまでがダメ」と明確に線引きすることは難しいのですが、この程度の類似性では「別物」と判断されてしまうということです。どうやら写真の著作権は、かなり限定的にしか認められないようです。

■パロディ事件の判決文

写真の著作権がそれほど限定的なら、パロディ事件の写真も自分で撮影していたら問題なかったんじゃないのか、という疑問が浮かびます。実はパロディ事件の判決文の最後にはこう書かれています。

……このように解しても、本件において被上告人の意図するようなパロデイとしての表現の途が全く閉ざされるものとは考えられない(例えば、パロデイとしての表現上必要と考える範囲で本件写真の表現形式を模した写真を被上告人自ら撮影し、これにモンタージユの技法を施してするなどの方法が考えられよう。)から、上告人の一方に偏することとなるものでもないと思う。

最高裁は「自分で写真を撮っていれば問題なかった」と言っています。スキー場の写真を撮るための手間を考えれば、それが容易なこととは言えないかもしれませんが、少なくとも判決文では「パロディが問題なのではない」と言っているのです。

■パロディの許容範囲

フランスでパロディの明文規定があるとはいえ、実際に裁判が起きているのですから、フランスではパロディに一切の訴訟リスクがないと言えるわけではありません。一方、日本ではポケモン同人誌事件やときメモ同人ビデオ裁判などがあるので、フランスに比べればパロディの許容範囲はたしかに狭いと言えそうです。

いずれにせよ、パロディ同人誌も多いコミケは隆盛を極めていますし、その中心的役割を果たした故米澤嘉博氏は(それ以前に著作権問題が懸念されたとはいえ)手塚治虫文化賞の特別賞を受賞しているくらいです。かのローレンス・レッシグ氏の講演を聞いたときには、日本のコミケを絶賛しており「アメリカなら、すぐに訴訟沙汰になる」と話されていました。パロディの明文規定があるフランスには「ジャパンエキスポ」というコミケのようなイベントがあるようですが、これはアニメフェアのようなもののようです。

アメリカでは、マンガ・アニメは“子供のもの”(あるいは子供向けに作られている)という印象もありますし、マンガという枠を超えてキャラクタービジネスとしてのブランドを守る重要性はあるでしょう。それゆえ、日本でもポケモンやドラえもんのような子供向けのキャラクターには厳しくなり、大人向けのマンガ・アニメについては黙認されやすいという違いもありそうです。それを考えると、「日本ではパロディは著作権侵害だ」ということを、ことさら煽ったり、煽られたりする必要はないような気がします。

mohno

Spotifyがついに日本でも近々利用可能に?」という見出しを見かけて心が躍ったのですが、本文を読んでみると単なる早とちりのようです。日本でサービスが提供されておらずメールだけ登録しておく仕組みは以前からあり、今のところ私自身も登録していますが今のところ何の通知も届いていません。Spotify そのものについては、この記事に説明がありますが、ストリーミングで楽曲を共有できるサービスで、4大レーベルとも契約している合法なものです。もっとも、私自身も実際に使っているわけではないので、使い勝手まではわかりません。

■Spotify とメジャーレーベルのビジネスモデルComics12_lo

Spotify の場合、無料アカウントでは数曲ごとに広告が入りますが、広告の入らない有料アカウントもあります。1曲ストリーミングするたびにレーベルに支払われる手数料は0.4セントと言われており、かつて myspace music が支払っていたとされる額と同じです。以前から日本にもやってこないものかと思っているのですが、0.4セントを広告収入でまかなうことは米国でも厳しいと思われる上に、日本のネット広告の効率がよいとも思えず(※)、運営的に難しいのではないかと推察しています。
※かつて OVERTURE が提供していた KEYWORD SEARCH の結果による印象。

そもそもストリーミングの単価が0.4セントというのは、決して高額ではありません。1万回再生されても40ドル(約3000円)です。ヒット曲であれば再生数は膨大になるでしょうが、そんなものばかりではありません。実際、Spotify や Napster のようなストリーミングサービスからインディーズレーベルが離脱する動きもあります(「Spotifyに早くも逆風、レーベル/アーティストが続々離脱」)。

記事には Spotify が音楽権利保持者に分配した金額を「3年で116億円」と報じています。1年あたり40億円弱というのは、無視できるほど小さいという金額ではないものの、音楽コンテンツの世界売上が2009年でも186億ドル(当時の為替レートを1ドル90円としても1.67兆円、『日本のレコード産業2011』より)であることを考えると、売り上げの少ないレーベルにわたる金額がわずかになりそうなことは予想できます。

一方、メジャーレーベルにとっては安くても契約するメリットがありそうです。メジャーレーベルは、すでに「360契約」(360度=全方位、の意)がデフォルトになっており、CDのような音楽コンテンツの売上だけでなく、ライブやグッズの売り上げの一部もレーベルの収入にできるためです。必ずしも楽曲だけで収益を考える必要がないので、Spotify のようなサービスも認められるわけです。

■Napster Japan の思い出

かつて日本にも Napster Japan がありました。現在の Napster は、ファイル共有で裁判沙汰になった Napster のブランドを残し、音楽ストリーミングとして再生したサービスです。2006年に日本でもサービスを開始し、2010年に撤退しました。米国のシステム変更に対して日本版に対応させる費用が出せないというのがその理由です。米国でも決して順風満帆とは言い難い Napster ですが、日本ではもっとマイナーな存在だったと思います。

日本では、Napster に対して邦楽が非協力的だったとも言われます。実際、ヒット中の楽曲がなかったり、あってもアルバムの一部だったり、ラインナップは限られていました。おそらく、日本のレコード会社はアーティストに「360契約」を強要できるほどの力がないのでしょう。CD(つまり原盤権)が収益の中心である場合には、それを安売りするわけにはいかなかった可能性があります。さらにネット嫌いのジャニーズ事務所は、(通常レコード会社が保有する)原盤権をおさえているそうです(以前のエントリでも触れたレンタルCDの存在も、日本で Napster が流行らなかった理由になりそうですが、深くは述べません)。

■失敗体験は真似されにくい

新たなビジネスをはじめようとするときに注意されることとして、「誰もやらなかったアイデアは、たいてい先人が思いついたけどあえてやらなかったこと」と言われることがあります。何かのきっかけて思いついた“素晴らしいアイデア”は、決して自分だけが思いついたことではないかもしれません。もちろん、ビジネスをはじめるのですから、思い付きだけでなく、それなりの調査やシナリオを熟慮するのは当然ですが、よく考えられたものであっても成功できるとは限らないものです(挑戦するなと言っているのではありません。念のため)。

しかし、世の中には「先人がやったけど成功しなかった」こともあります。たとえば、Spotify から離脱したレーベルも、当初は楽曲の収益にプラスの影響があると感じて参加したのかもしれません。Napster に参加していた邦楽もありました。しかし、「参加することでプラスの影響を感じられなかった」「参加しない楽曲にマイナスがあるとは見えなかった」のであれば、営業的には離脱されてもしかたがないことです。

アンダーソンの『フリー』で実現した成功体験は、たとえ自身の成功につながるかどうかわからなくても真似されるものです。しかし、失敗体験というのは、よほど事例を分析して失敗要因を回避可能だと自信の持てる人でなければ真似されることはありません。iTS にしてもそうですが、「ヒット曲が参加しないからサービスが流行らない」という言い訳は「そのサービスは曲をヒットさせるための条件にならない」と言っているようなもので、むしろ参加しない理由を肯定していることになります。以前紹介した muziejamendo もそうですが、世の中には多くの挑戦者がいます。彼らに見向きもせず、他の方向に向かって「挑戦せよ」と言ってみたところで、話を聞いてもらえません。新たなビジネスに挑戦せよという人は、まず既存の挑戦者に目を向けてみてはいかがでしょうか

mohno

テレビ番組の海外転送サービス差し止め命じる NHK、民放の訴え認める 知財高裁」(産経新聞)などで報道されているとおり、知財高裁の判決が最高裁で差し戻されていた「まねきTV」と「ロクラク」に関する裁判で、テレビ局側の逆転勝訴が確定し、賠償命令が出されました。そこで、少し裁判を離れてテレビの未来について考えてみます。

Comics11_lo ■ユニバーサルサービスとしてのテレビ放送

アメリカでは(少なくとも国内の)プレースシフトは問題にならないでしょう。元々、ABC、NBC、CBSという3大ネットワーク(またはFOXを加えた4大ネットワーク)は全国で視聴できるネットワークがあるので、国内でのプレースシフト視聴には時差を乗り越えるという以外に、あまり意味はないからです。他にも The CW や PBS(公共放送局)といった小規模なものはあるようですが、主要な放送局はすべて民放、つまりコマーシャルベースで成り立っています。

一方、日本は全国津々浦々にテレビ放送を届けるという公共性を、受益者負担という形で受信料を強制して NHK に託してしまいました。ユニバーサルサービスとして全国に放送するという責任を民放テレビ局に負わせることはしなかったのです。ユニバーサルサービスとは、社会全体で誰もが等しく受益できる公共的なサービスのことです。域内の電話料金や普通郵便の料金が全国一律で安いのは、これらがユニバーサルサービスとして提供されるべきものだからです。もし、民放テレビ局にユニバーサルサービスとしてのテレビ放送を義務付けていたら状況は変わっていたでしょう。

本来、民間企業は収益性が高い、平たく言えば“美味しいところ”を取りにいくものです。しかし、これはユニバーサルサービスとは相反するものです。ヤマト運輸が郵便事業に参入する際、多数のポストを設置することが義務付けられました。これは、美味しいところ(都市部)だけを取られてしまうと、地方のコストのかかる部分の負担だけが残されてユニバーサルサービスの運営に支障をきたすためです。逆に、ユニバーサルサービスを義務付けるということは収益性の悪いこともやらせるということです。

日本の民放にはユニバーサルサービスの義務は課せられませんでした。ユニバーサルサービスとしてのテレビ放送は、すでに NHK が請け負っていましたし、テレビ受像機が多くない時代に、広告収益を前提とする民放に全国への視聴の責任まで負わせようとすると参入が阻害されると思われたのでしょう。今でも電波障害などで「テレビが映らない」状況があると、NHK は親切に対処してくれるという話を聞いたことがあります。しかし、民放にはユニバーサルサービスを課さなかったのですから、収益性の高い都市部に多く集まり、地方は少なくなったのです。これは、行政の判断がもたらした当然の結果です。

■NHK は必要か

受信料で成り立っているテレビ局としてはイギリスの BBC がよく知られています。そして、イギリスでは BBC こそがテレビの中心であり、民放テレビ局は ITV くらいしかありません。単純に考えても、受信料という安定的な収入がある放送局に対し、コマーシャルベースの放送局が“同じ土俵”で戦わせたら、前者の方が圧倒的に有利なことは言うまでもありません。その意味では、日本の民放がユニバーサルサービスの義務を課せられなかったのは、都市部にとっては幸いなことだったと言えます。収益性の悪い部分に投資することなく効率を求めて多くのテレビ局ができたからです。

さて、公共放送としての NHK は本当に必要なのでしょうか。都市部と同じテレビ放送を地方にまで伝えるべきだということであれば、その仕組みだけを受信料を使って整備すればよい話であり、チャンネルを持って番組を作る必要はないはずです。民放にとっては、巨大な受信料収入を持つ NHK との視聴率競争を余儀なくされていますが、NHK がなければ「民放どうしの公平な戦い」ができるはずです。オリンピックやワールドカップの高額な放送権料は NHK は支払いやすいかもしれませんが、NHK がいなければ民放間の競争ですみ、受信料は不要になります。IOC も交渉が決裂するほどの放送権料を要求することはないでしょう。実際、アメリカのテレビ局はそうしています。そして、本当に国民のために公的な番組が必要なのであれば、それは税金を投じて作り、民放の枠で放送するかネットで配信すればよいことです。

■ユニバーサルサービスを課すには

円高で輸出産業が打撃を受けていると言われますが、影響が大きいのは急激に状況が変わることです。ビジネスにおいて急速に条件が変化することは、それに追従することが難しくなります。しばしば「時代に合わない規則など一気に変えてしまえ」という乱暴な意見も聞かれますが、それは現実的ではありません。テレビ放送でも、いままでユニバーサルサービスの義務はないという条件で運営していたのに、急に義務を課すということになれば、運営を継続する前提条件が変わります。もちろん、これまで通りに運営を続けられなくなるものはありますが、仕組みを変化させるのであれば、時間をかけて段階的に切り換えていくべきです。

まず、考えられることは NHK の廃止です。ユニバーサルサービス維持のための受信料は残すとしても、それはテレビ放送を全国に伝えるための設備投資に使うべきであり、番組供給、つまりチャンネルとしての NHK は廃止します。受信料ベースで作られる番組と視聴率競争させることはフェアではありません。NHK の廃止とともに、キー局(残る意思がある局)が放送地域を拡大するという条件を課せばよいでしょう。

また、地方テレビ局は淘汰される覚悟が必要です。ユニバーサルサービスの例外を認めて、地方だけのテレビ局として残れるようにすると(東京のキー局ですら)地方局として残りたいと考えるでしょう。東京キー局を中心として全国をカバーできる放送局だけが残れるようにします。ローカル番組(ローカルなコマーシャル)は、キー局の放送の合間に流すようにすればよいでしょう。

実のところ、そんな手間をかけなくても、衛星放送によって主要局のBSチャンネルは全国で受信できます(NHK受信契約数データによれば、約4割の世帯が衛星放送契約を結んでいます)。しかし、地上波と同じ内容を放送しているわけでもなく、「ユニバーサルサービスを提供せよ」という主張する人も衛星放送の存在については考慮していないようです。民放地上波にユニバーサルサービスを課すのであれば、NHK の廃止は必須です。そうしないと、イギリスのように公共放送がテレビの主役になってしまい、民放は運営が厳しくなってしまうためです(NHK を残すだけでよいなら、現状とあまり変わりがないことになります)。

■音楽利用の包括許諾

国内のユニバーサルサービスが整備できたとしても、「まねきTV」と「ロクラク」が行っていた海外への番組送信には課題が残ります。大きな問題のひとつが音楽利用の包括契約です。以前のエントリにも書いた通り、音楽利用の包括契約は放送にしか適用されません。しかも、ドラマの BGM として商用楽曲を使うということは、海外ではシンクロ権といって別途契約を必要とするようなものです。実際、テレビドラマの BGM に映画音楽を使っていた場合でも、DVD のような商品化の際には(シンクロ権契約は非常に高額なので)音楽を変更するといった処理がなされています。日本のテレビで音楽利用の包括許諾が緩く解釈されているとして、それが海外に向けて配信するとなれば、ふたたび海外から批判が起きるのは必至でしょう。

そこで必要なことは、音楽の包括許諾をネット配信にまで広げるのではなく、テレビ放送でも包括許諾をやめてしまうということです。テレビ局は番組作りのために独自の楽曲を用意しなければならなくなりますが、そうすることでテレビ局はネット配信やコンテンツ販売の際に、音楽の許諾を取り直す必要がなくなります。もともとアメリカのテレビ局はそうしていますし、それによって新たな許諾を得ることなくコンテンツ販売やネット配信ができているのです。

■その他の制限

日本のテレビ放送を、そのまま海外へ送信しようとすると、映画や海外ニュースなど放送権を購入するようなコンテンツの調達は難しくなるでしょう。日本の映画会社はある程度融通をきかせてくれるかもしれませんが、ハリウッド映画や海外のニュースチャンネルは権利関係に厳しいと推測できます。ハリウッド俳優が登場するコマーシャルもなくなるかもしれません。これまでに比べて放送内容が若干つまらなくなってしまうかもしれませんが、テレビ局は海外で見られることを最優先に考える人にとっては取るに足らないことでしょう。

また、日本のテレビ放送がそのまま海外で受信できるようになると、すでにあるテレビジャパン(北米)や JSTV(欧州・中東・ロシア・北アフリカ)のような日本のテレビ番組を受信できるような専門チャンネルは潰れてしまうでしょう。海外の日本人向けに権利処理された番組を調達して普及につとめてきたのだと思いますが、日本のテレビ番組をそのまま見られるようにするためですから、そうした努力を無に帰すことなど何のためらいも必要ないのでしょう。

もともとテレビ放送を海外に送信することなどアメリカのテレビ局でもやっていません。黙認されているサービスはあるとか、画質が悪ければテレビジャパンや JSTV のような正式なサービスに影響しないという意見は聞かれます。しかし、そうやって定着してしまったのが日本独自のレンタルCDです。アナログレコードの時代には、テープへの録音は劣化するから問題ないと言われ、デジタルテープが登場したときにもデジタル録音では孫複製を禁止することで対処していたはずなのに、技術は進んで元の CD と同じものが複製できるようになりましたが、「複製で劣化しなくなったのでレンタルCDはやめよう」という声は(あまり)聞かれません。

また、政治的、あるいは歴史的に決定された社会の仕組みを変えようとするなら、それが別の要素に作用することを想定しなければなりません。「音楽コンテンツの値段」でも触れましたが、関連性のあるものについて都合のよい仕組みだけを残し、都合の悪い仕組みをなくそうとしても、現実的ではないのです。ユニバーサルサービスを強制すれば都市部のチャンネル数は少なくなり、番組の内容はバラエティばかりになるかもしれません。もちろん、地方ではチャンネルが増え、海外でも日本のテレビを見たいという人も喜ばれることでしょうが、どれほどの人に賛同を得られるかというと疑問は残ります。

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※このエントリは「2012年の3大ニュース:番長と遊ぼう!」のためのフィクションです。本記事に登場する会社名や個人、架空のサービスは、現実の会社や個人などとは一切関係ありません。

今年は著作権にまつわる話題に事欠かない一年でした。とくに顕著だったのは、社会的にはフェアに見えるビジネスが撤退に追い込まれ、アンフェアに見えるビジネスが台頭したということでしょう。

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Comics10_lo_3 ●「フェアなのに」書籍スキャン代行は衰退の一方で自己スキャンは急拡大

昨年末に提訴されたスキャン代行業者「スキャンボックス」と「スキャン×BANK」は、いずれも「訴訟を継続できるほど収益のあるビジネスではない」と応訴を断念しました。また、スキャン代行の禁止を表明し、書籍にも明記するようになった大手出版社の動きは、中小の出版社にも広がってきました。いくつかの出版社は積極的に代行の許諾を表明しているものの、全体としては少なく、利用規約で「許諾のない書籍はスキャンしない」と表明していた代行業者は、今や開店休業状態に追い込まれています。

ブックスキャンを契機に広まった日本のスキャン代行ビジネスは、小規模な会社が乱立した影響もあり、わずかな需要を取り合っているのが現状です。同社代表の岩松慎弥氏は「会社や個人の書類整理など、新たな分野を開拓中」と語るものの、機密やプライバシーの問題もあり、「必要なスキャンは社内で行う」(利用者の声)と広がりを見せるまでには至っていません。一方、パナソニックからも安価なドキュメントスキャナが登場したこともあり、出版社の思惑とは裏腹に書籍スキャンはますます広がりを見せています。

●逆転勝訴でも喜べない私的録画補償金はテレビ局幹部の一声で解散の危機

地裁、知財高裁と東芝の2連勝となった私的録画補償金に関する裁判は、SARVH(私的録画補償金管理協会)の上告が受け入れられ、最高裁で審議することが決まりました。逆転勝訴に望みをつないだ SARVH ですが、日本テレビの細川知正社長が「補償金があることで、違法な複製についてまで許諾されていると思われている。テレビ局は補償金など必要としていない」と表明したことで、裁判の結果を待つことなく解散の危機を迎えています。

芸団協の幹部は「スポンサー偏重のスタンドプレー」と批判するものの、激減した補償金にとっては裁判費用すらも大きく負担となっているのが現状です。業界内には、「裁判の結果に関わらず来年早々には解散するのは間違いない。とばっちりを受けそうな SARAH(私的録音補償金管理協会)が戦々恐々としている」との噂も流れています。

●欧米から大ブーイングも合法のお墨付きでリップカフェがレンタルを圧倒

今夏、店内で CD をリッピングさせる「リップカフェ」が秋葉原に登場しました。一見、合法とは思えない業態でしたが文化庁の著作権課が「倫理的な問題はあるが、違法性は認められない」という見解を出したことで、急速に全国に広がりました。ノートパソコンを持ち込んで300円払うだけで約20枚程度のCDをリッピングできる上、洋楽の最新作も用意されているため、従来のレンタルCD利用者が次々とリップカフェを訪れました。音楽業界に一層のデフレをもたらしたリップカフェは、人気店舗では2時間待ちも当たり前という状況です。

このとばっちりを受けたのがツタヤをはじめとするレンタルCD店です。近年、セールスCDが年々売上を落としていく中、レンタルCDの利用は横ばいを続けていましたが、今年は半減してもおかしくない状況となっています。カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長は「リップカフェは明らかに不公正で取り締まるべき」と主張しますが、世界的にはレンタルCDそのものがフェアなビジネスとはみなされていません。TPP参加の影響で著作権法を改正する圧力は、リップカフェの台頭で欧米のレコード会社を刺激してしまい、今やレンタルCDとともに違法化しようとする声が高まっています。このため、レンタル業界もうかつに積極的な法改正に動けないという状態が続いています。

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知的財産権の専門家たちは「今年はフェアなビジネスが潰され、アンフェアなビジネスが台頭した残念な年になってしまった」と振り返ります。これまでフェアユースの導入を渋ってきた著作権団体からも「公正だが違法というものを合法化するだけでなく、不公正だが合法というものを違法化できる形でならフェアユースの導入は好ましい」と歩み寄る声も聞かれるようになりました。来年は著作権の公正さが問われる年になりそうです。

【オマケ】今回使わなかった一行情報

●「儲かったのは扇動者だけ」電子書籍は花開く前に崩壊で責任なすりあい
●F22売込みで来日した幹部に「ステマですね」とKY発言した大物議員
●TPP参加で4大レーベルは再び「CDレンタルはアンフェア」の大合唱
●ネット否定で躍進を続けるジャニーズに他の大手事務所が追従を検討の噂
●「AKB48を見習え」K-POPアイドルも日本式ビジネスに倣う滑稽
●民主・自民共倒れで大躍進する共産党幹部が「政権取ったらどうしよう」
●au、ソフトバンクに続きドコモの採用も決まる通知領域広告は日本の恥
●ソーシャルゲームに利用者大移動で揺れるパチンコ業界「節電より怖い」
●「ギリシャよりきつい」イタリア、スペインも救済でドイツ国民が大暴動
●58年ぶりの完全日本一でドラゴンズの高木監督「何もしないのが一番」
●石原都知事原作のエロアニメが都条例規制に合格してアニメ業界の一安心
●ドコモ幹部がツイートで洩らした「スマホは使いにくい」で業界は大荒れ
●利用情報を検索できるウィニートラッカーの登場でウィニー利用者が激減
●石原慎太郎のあっせんで戸塚宏と密会した橋本徹市長の次の仰天政策とは
●空前の好景気に湧くテレビ局の裏でネット動画サイトはお先真っ暗の事情
●3Dで復活する「釣りバカ日誌」に「もう料金を上げたら?」と冷めた声
●虚構新聞の下請にまわっていたボーガスニュース主幹は余裕のリア充生活

mohno

TVK(テレビ神奈川)が、「ビルボードトップ40」という番組をギネス記録認定をめざして放送初期の映像を探しているそうです(「30年前の番組映像求む ギネス認定へtvk呼びかけ」)。ほんの30年前のことで、すでに民生用のビデオレコーダーがあった時代ですが、テレビ番組を永続的に保存することは考慮されていませんでした。テレビ局が使う放送用のビデオテープが非常に高額だったため、それらは保存に回されず、テープを上書きして使いまわしていたためです。私もよく見ていた NHK の人形劇「プリンプリン物語」では、当時の総集編ですらテープ編集ではなく再演で放送していたそうです(wikipedia より)。このため、古い番組を復活させるために視聴者の保存していたビデオを探す必要があるということです。このように復活したものとしては NHK の少年ドラマシリーズなどがあります。

現在、横浜にある放送ライブラリーでは、テレビ番組のデジタル保存が進められています。ここでも、すべての番組が保存されているわけではありません。また映画については、東京国立近代美術館フィルムセンターで保存しようとしているのですが、非常に限られた作品しか登録されていません。しかも、年代別で検索してみるとポルノ映画のようなものばかりが登録されています(登録の際にいくらかの対価が支払われるため、わずかでも制作費を回収しようとされていると聞いたことがあります)。

今では、テレビ番組や映画はテレビ局や映画会社によって保存されているのだと思いますが、洋画の字幕付き上映用フィルムなどは、上映期間が過ぎると破棄されてしまうものも多いそうです(もちろん、映画館で再び上映する機会が見込めないような作品ということなのでしょうが)。また、フジテレビだと思いますが、資料室で火事が起きて古い映像を再収集するために苦労したという話があったと記憶しています。これが書籍ならば、納本制度があるので国会図書館であらゆる書籍が収集されています(※)。
※ただし、はてな匿名ダイアリーには、納本されていないものも多いという記事がありました。

映像作品も書籍と同じように納本制度を活用できないのでしょうか。実は、国立国会図書館法の第二十四条1項6号には国会図書館に納入すべき出版物として図書や小冊子だけでなく「映画フィルム」が明記されています(ただし、附則で“当面の間”免除されているようです)。少し古い朝日新聞の記事(「映画やテレビ番組、どう保存するか 国際シンポ」)には、以下のように書かれています。

日本ではこれまで3万2千本以上の劇映画が作られているが、戦前の映画は10%も残っていないという。一方、フランス、カナダはすべての映像作品に、韓国は映画のみだが納本制度がある
……
岡島主幹によれば、先進国で映像の法定納本制度が実現していないのは英国と日本のみ。これから日本でこの制度を作るには、プリント代の負担など財政的手当ても必要になる。いずれにせよ、自国の映画やテレビ番組を誰がどう保存すべきかの議論をもっと深めるべきだろう。(古賀太)

先日も取り上げましたが、日本では、テレビ局が音楽の包括契約により、商用楽曲を番組に使いまくっているため、番組を放送以外の目的で使おうとすると個別の権利処理が面倒になるという特殊な事情があります。いっそ包括契約をなくしてしまえば、テレビ局は番組のための独自楽曲を制作しなければならなくなり、それが番組の二次使用を容易にすることにもなります。ただし、ほとんどの番組では単なるコスト増加になるため現実的ではありません(このため何らかの法整備が必要かもしれません)。

ちなみに、作品の永続保存について、保護期間の延長は影響しないでしょう。ほとんどの著作物は保護期間内に失われているためです。作品の保存は、本来「誰かが保存してくれる」という他人頼みのものではなく、積極的に保存するという意思が必要です。

いずれにせよ、日本は「世界最先端のコンテンツ大国の実現を目指して」いるのですから(※)、映像作品についても納本制度を機能させるべきではないでしょうか。もちろん、そうして収集した作品を図書館で書籍を閲覧できるように、すぐ無料で視聴させるような仕組みにしては関係者の理解は得られないでしょう(何より図書館の運営が大変になりそうです)。しかし、後世に作品を残し、利用が必要だと判断された場合にいつでも参照できる仕組みがあることは関係者にとってもメリットがあるのではないでしょうか。
※「世界最先端のコンテンツ大国の実現を目指して」(PDF、知的財産戦略本部)

mohno

日本では CD が高い、と言われることがしばしばあります。たとえば、"Lady Gaga" の "Born This Way" は amazon.com で $11.88 ですが、嵐の "Beautiful World" は amazon.co.jp で 2,680円です。いくら円高要因があるとはいえ、$1=100円で計算しても倍以上です。どうして日本人は CD を買うのに、こんなに高い対価を支払わなければならないのか、というのは当然の疑問です。

■価格と需要

自由経済において価格は需要と供給で決まるのですが、音楽のようなコンテンツの場合、“種類”を増やすためのコストはかかりますが、“供給数”を増やすためのコストは大きくありません。このため、ほぼ価格と需要の関係だけで決まると考えてもよいでしょう。とりあえず流通機構やら仕入れ価格といったものをすっ飛ばして考えますが、一般論として「価格が上がれば需要が下がる」という関係になることは容易に予想できます。

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営利企業にとっては、いかに売上を最大化するかが重要なのですから、できるだけ価格×需要が最大化するように価格を設定しようとします。たとえば、半額にして2倍も3倍も売れるなら、半額にするかもしれません。価格を2倍にしても半分以上売れると見込めるならそうするかもしれません。実際には、個々の作品について個別に価格を設定しているわけではないでしょうが、おおむね業界全体としてはそうした判断に基づいていると考えられます。たとえば、今 CD の価格を半額にして2倍の販売数が見込めるかというと(握手会抽選券と化した AKB48 の CD はともかく)そうした判断は難しいのではないかと思います。

■価格の段階

ソフトウェアではよくあることですが、“商品”のレベルによって複数の価格を設定することがあります。たとえば、初心者向けに機能を限定したものを安価(または無料)にしたり、業務用途に耐えうる機能的なものを高額にするといったことです。たとえば、Windows は Home Premium、Professional、Ultimate などのバージョンがあります。このように段階を設けることで、利用者の裾野を広げた上で、より高い収益を得ることを目指しています。

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また、Adobe の製品では一般向けの Photoshop Elements や Premiere Elements は安く設定されていますが、プロ向けの Photoshop や Premiere は桁違いに高額です。価格差と製品の差のバランスは重要です。安い製品がそれなりの機能を持っていると、もう少し高くてもよいと思うユーザーまで摘み取ってしまい、本当に高い製品の機能を欲しいと思うユーザー数が少なくなり、価格×需要を最大化するために価格設定を上げる要因となります。

■音楽コンテンツの種類

音楽コンテンツは、何も CD だけではありません。テレビで見たりラジオで聴くだけなら無料です。ジャニーズはいっこうに手を出しませんが、パソコン向けの音楽配信や携帯向けの着うたなどもあります。それぞれ目的が違うので単純に「段階」と言うことはできませんが、日本では「セルCD」に近いものとして「レンタルCD」があります。

実のところ、この「レンタルCD」はかなりの価格破壊力を持っています。近所(といっても2駅離れていますが)のツタヤでは、しばしば5枚で1000円というキャンペーンを行っています。自宅に居ながらでも、ネットでレンタルできます。ツタヤDISCASは1枚だと525円ですが、16枚まとめると単価200円で借りられます(送料込み)。楽天レンタルなら新作280円、旧作に至っては50円(今はキャンペーン中で39円)です(送料別)。しかも、音楽配信のように「ジャニーズがない」ということもなければ(在庫がない、ということはありえます)、通常は DRM で嫌な思いをすることもなく楽曲データがリッピングできます。
※価格はスポットレンタルの場合。

今どき、CD を買って、CD のまま聴く人がどれだけいるのでしょう。多くの人がリッピングして携帯プレーヤーなどで聴いているのではないでしょうか。CD という物理メディアを郵送するためには1~2日かかりますが、それを待てれば(かつレンタルの在庫があれば)高くても525円で楽曲データを入手できるのです。音楽配信でアルバムをまるごと購入するのは、アメリカでももっと高額です。たとえば、"Born This Way" でも $7.99 かかりますし、複数のアルバムを買うからとディスカウントされることもありません。
※洋楽は「レンタルCD」を否定しているため、あまりレンタルされることはありません。

元々音楽配信を利用するような人は、握手会抽選券やノベルティ、ジャケットといった「物理CDとしての付加価値」は必要ありません。音楽配信とレンタルCDの「値段の差」は、「CDが届くまで待つ必要がある」程度です。これならレンタルCDを選択する人が多くても不思議はありません。実際、日本レコード協会が発行している「日本のレコード産業」という資料(2011年度版)でも、CD などのオーディオレコードの生産金額は減り続けていますが(4ページ)、貸しレコード使用料・報酬はほぼ横ばいです(22ページ)。

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■レンタルCDの功罪

日本で音楽コンテンツが高いと言われる場合、たいてい「レンタルCD」が無視されています。世界中でレンタルCDが適法とされているのは日本だけです。レンタルCDが適法化された背景には、「(ビニール)レコード時代にカセットテープへの複製は劣化するからレコードの売上げに影響しない」→「法律上、CD はレコードと同じ扱いだから CD もあり」→「デジタルメディアへのダビングでは孫複製を禁止」→「CD-ROM ドライブによる楽曲データのリッピング」という歴史的な経緯がありますが、当初は「返した後もそのまま使える」という前提はありませんでした。

一方、レンタルCDが存在することで、安価に楽曲を入手したいという購入者層が根こそぎ摘み取られてしまっているともいえます。「今すぐ聴きたい」「手元に CD を残したい」「握手会抽選券が欲しい」といった要求がなければ、レンタルCD ですませればよいのです。逆に、「今すぐ聴きたい」「手元に CD を残したい」「握手会抽選券が欲しい」という要求を持つ購入者層に対しては、より高額な値付けをして売上(=価格×需要)を最大化していると言えます。たとえば、レンタルCDをできるだけ拒否している洋楽CDが、概ね邦楽CDよりも安く値付けされていることからも、こうした理由を推察できます。

レンタルCDは、日本でパソコン向けの音楽配信が普及しないことにも影響しているでしょう。携帯はパソコンがなくても楽曲を購入できますし、たとえリッピングした楽曲を携帯に転送しても“聴く”ことができるだけです。iTunes Store などの登場するずっと前から、日本では着メロ/着うた市場ができあがっていました。一方、(CDドライブ付の)パソコンを持っている人にとっては、CD をレンタルしてリッピングする方がずっと安価です。

レンタルCDは、レンタルと言っても「返した後もそのまま使える」という特異な業態です。スイスでは違法にアップロードされた著作物をダウンロードすることも合法化されたようですが、先進国で販売元からユーザーまでの間に違法性が介在することなく、メジャーな商用楽曲を合法に入手できるのは日本だけでしょう。日本の音楽コンテンツの値段を語るときにレンタルCDを無視することはできませんし、他の販売手法に与える影響を認識しておくべきです

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プロフィール

大野 元久

大野 元久

平成元年にIT業界に入って以来、開発ツールに関わり、主にマーケティング中心に活動してきました。現在はフリーランス。

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