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IT業界のコメントマニアが始めるブログ。いつまで続くのか?

トレンドマイクロのウイルス解析担当者である吉川孝志氏が「海外ハッカーに人気の日本ブランド:ロシアンアンダーグラウンドの現状調査」という記事を書かれています。記事によれば、「ロシアのアンダーグラウンドコミュニティ内で、多くの不正取引が頻繁にやり取りされており、特に日本関連の情報に高値がついている」そうです。

ほんとうにそうでしょうか。掲載されている図(以下はトリミングしたもの)をよく見ると、ccTLDと価格が並べて書いてあります。

Blog131a
※この図は、元の図をトリミングしたものです。

ここにある情報を元に検索してみると、sape.ru というフォーラムサイトのスレッドが見つかりました。Microsoft  Translator を使って翻訳すると、次のような文章になります。

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以上 50 のドメインではドメインの登録もあります。

つまり、RegWayというレジストラがドメイン登録を宣伝しているに過ぎません。.jpドメインが高額なのは、もともと維持費が高額なためで、eNom や Go Daddy という世界的に知られるレジストラでも$100弱/年というのが相場です。「人気があるから高い」のではありません。むしろ、登録費が高いために悪用されるケースが少なく、「.jpは最も安全なドメイン」(マカフィー)と評価されたこともあるくらいです。

ロシア語が読めるわけではないので、上記のサイトで実際に「アンダーグラウンドな取引」が行われているかどうかはわかりませんが、ドメイン登録の宣伝を「アンダーグラウンドの不正な取引」と言ってしまうのは杜撰です。

※ちなみに、JPRSはマカフィーの調査結果をもとに自身の取り組みを自画自賛していますが、「維持費が高いので悪用する人から敬遠されている」というのが実態でしょう。

さて、この記事は、続いて「メールアドレスとそのパスワードを高額で買うことを記載したスレッド」について紹介しています。掲載されている図は次のようなものです。

Blog131b
※この図は、元の図をトリミングしたものです。

ここにある情報を元に検索すると、antichat.ru というサイトが見つかりました。ここにはロシア語の前に英文が書かれているので、このままでもわかります。たしかに、「メールとパスワード」を求める書き方をしていますが、「メールとパスワード」で何をしようというのかわかりませんが、不正に取引しているというより、直接“カモ”を探しているという印象です。そもそも、このメッセージを投稿したのは(プロフィールを信用するなら)韓国の人です。

ここにはクレジットカードの番号とセキュリティコードに関する記載もあり、そうしたものの売買を意図しているという意味ではたしかにアンダーグラウンドかもしれませんが、この記事には次のように書かれています。

こうしたアンダーグランドのマーケットでは、取引の決済は基本的には電子マネーが利用されているようです。クレジットカードは自身の情報の露見に繋がる可能性があるためか、稀にしか使用が見受けられません。慎重なアンダーグラウンドのハッカーは、より安全な決済方法を望んでいることがうかがえます。

取引方法として(PayPalのような)メールベースの支払い方法を使うことと、メールとパスワードを取引することは別のことですし、そもそもメールと(電子メールをアクセスする)パスワードだけでは支払いサービスを利用することはできません。とても残念な記事だと言わざるをえません。

mohno

今、改めてこの国の著作権がいかに厳しいものであるかを具体的な例を交えつつ振り返ってみようと思う。

まず音楽について考えてみると、この国のレコード会社の権利意識は生易しいものではない。楽曲データを入手する価格は決して安くない。量販店でセール品として売られているようなものはともかく、アルバム単位であればCDを買うか、音楽配信を利用して曲単位で入手するしかない。レコード会社の意向で音楽配信に消極的だったビートルズの楽曲は、つい最近まで「CDを買ってリッピングする」しか正規の入手ルートがなかった。世界には、アルバム単位でDRMフリーの楽曲データを格安に入手する手段(*1)が提供されている国もあるというのにである。

そうして正規に入手した楽曲でさえ、うるさく注文をつけられることがある。音楽に合わせて幼い子供が踊っているビデオを動画サイトにアップしたら不正利用だと訴えられたり、あげくは公衆の場で着メロを鳴らすのは着メロの利用範囲を超えているから余分に金を払えという裁判まで起こされたくらいである。こうしたレコード会社の横暴に裁判所が屈しなかったのは幸いではあるのだが。そもそもこの国の著作権法には、個人的な著作物の利用は合法だとする明文の規定がない。だから、どんな行為でも公正さを訴えることはできるが、裁判を受けずにすむという保証はないのだ。

テレビ番組で音楽を利用することも容易ではない。音楽をただ演奏・歌唱する以外で利用するためには“シンクロ権”という壁を乗り越えなければならない。一般に、その許諾にかかる費用は高額で、やすやすと市販の楽曲を番組のBGMに使ったりはできない。

そうまでして楽曲に対する強い権利を主張するのであれば、さぞ著作権者も大切にされるのだろうと思うところだが、これもそうではない。たいていの場合、楽曲に関する権利はレコード会社が買い上げる形を取るため、著作権者は売り渡した楽曲に関しては何の権利も行使できなくなるのである。それが嫌で楽曲の提供を渋るアーティストもいたくらいだ(*2)。そもそもレコード会社はCD(レコード)を制作して売るのが商売であるにもかかわらず、最近ではCDだけでは儲からないと言って、アーティストが行うコンサートなどCD以外の収益までレコード会社が手をつけるようになってきているのである(*3)。

映像についてはどうだろう。テレビ番組を自由にビデオテープに録画できていた時代は過去のものとなった。デジタル放送になり高画質化したのはよかったが、テレビ番組にはうっとおしい局ロゴが目立つようになり、録画先もレコーダー装置内に限定されてしまった。この国ではテレビ局がやたらと力を持っており、個人的な複製行為ですら容易には認めてもらえず、「タイムシフト」(時間をずらしてテレビ番組を視聴すること)という概念を取り入れることで、ようやく個人のテレビ番組録画が合法扱いされたという苦い過去があるのだ。

そして、Windows には Windows XP の時代から Windows Media Center という便利なソフトがついていたが番組録画を抑制する「放送フラグ」という仕組みが考え出され、それは不当だと認定されたにもかかわらず、ある時期から特定の番組を録画できないことになった。そして、Windows 8 では Windows Media Center 自身が標準機能から外されてしまったのである。そもそも市販のレコーダーもデジタル放送をそのままディスクメディアに保存する機能を持つものは販売されていない。それこそがデジタル放送のメリットであるのに、ハードディスクに“一時的に記録”することしか許されなくなったのだ。技術的には大容量のデータを収録できる blu-ray という方式が何年も前から実用化されており、他国ではレコーダーも販売されているのに、この国ではいまだにテレビ番組のレコーディング先として利用できないのである。

テレビ番組を他国に配信しようとする試みも容易には認めてもらえない。テレビ番組の転送サービスを行おうとするある会社は、正規の対価を払うことを拒否したわけでもないのに、差し止め請求を食らってしまった(*4)。

このように著作権意識が厳しいのはテレビ局だけではない。映画会社もそうである。DVD の次世代を担うメディア争いではリージョン(地域制限)を設けることができなかった HD DVD ではなく、強力なコピープロテクトとリージョン制限を備えた blu-ray が映画会社の支持を集めて勝利した。今では再生装置の国情報を元に、フランス語音声はカナダでのみ利用できるとか、スペイン語は米国のみで聞けるという、細かな再生制限が設けられることも珍しくなくなってきている。コピープロテクト以外の制御は利用者にまかせておけば、他国語版のプレイヤーを用意する必要などなくなるのに、逆の方向に向かっているのだ。

かつては映画のDVDをパソコンでリッピングするためのソフトを販売しようとした会社もあったが、孫コピーの作成やコピー回数の制限を設けていたにもかかわらず、著作権を侵害するものとみなされ、販売を差し止められただけでなく、多額の賠償金を支払わされることになった(*5)。

この国では、動画配信ビジネスが急速に成長していることと喜んでいる輩もいるようだが、そのようなサービスを利用しなければ動画を好きなデバイスで再生しにくいという状況の裏返しという見方もできるのである。

書籍はどうだろう。出版においては、著作者の権利である著作権という言葉はむなしいものだ。いったん出版社に買い取られた著作権は、著者の自由にはならなくなる。たとえば著書の一部を他の書籍や資料として提供してほしいと求められた場合でも著者の一存ではどうにもならず、出版社に“お伺い”を立てる必要がある。

思い起こせば検索エンジンが書籍を検索の対象とした際に、喜んでこれに乗っかろうとしたのは出版社協会や作家の組合であり、個々の作家の反発などは意に介されなかった。そもそもこの国における電子書籍の普及には、書籍の著者ではなく出版社に許諾権が移行していたことが影響している。個々の作家に電子化の可否を選択する機会は与えられず、出版社の言いなりに電子出版が認められていたのである。

そうしたコンテンツのパロディについても、決してやさしく見守ってもらえるとは限らない。世界には商業規模で大規模な二次創作作品が扱われるイベントもあるというのに、この国は他国で制作されたパロディにまで裁判を起こしてやめさせようとした過去があるのだ(*6)。

そして、それほどまでに著作権者の強い権利意識を反映してか、著作権の保護期間も非常に長い。国家も著作権者に強く味方しているのである。そして図らずも、この国のコンテンツビジネスが世界の中でも特筆すべき商業的成功を収めていることが、この方向性が今後もゆるがないであろうことを示唆しているように思えるのである。

(アメリカ旅行中の筆者より)

*1 もちろん日本のCDレンタルのこと。
*2 YMO の"Behind The Mask" は Michael Jackson の "Thriller" への楽曲提供を打診されつつも断ったという噂がある。
*3 欧米のレコード会社では「360契約」という、包括的な契約が一般化している。
*4 米国のテレビ番組を再配信しようとした http://www.ivi.tv/ は差し止め請求を食らったままである。
*5 RealDVD を売り出そうとした RealNetworks は、著作権を侵害するものだとして裁判で敗訴し、多額の賠償金を支払うことになった。
*6 これに反発したフランスは、パロディを合法化する規定を明文で追加した。

mohno

いまさらですが、例によって来期のアニメをExcelシートにまとめました。私の地元のケーブルテレビで受信できる東京キー局+独立U局(TOKYO MX、TVK、テレ玉)+BSが対象です。今回も、話題作の2期が多く楽しみですね(「WORKING'!!」の再放送も!)。

Anime2013Spring.xlsxをダウンロード (Excel 2010で作成)

mohno

RSSの開発やredditの共同経営者として知られる Aaron Swartz が先月自殺しました。実のところ RSS や reddit は知っていても、Aaron Swartz 自身のことはよく知りませんでしたし、彼の活動に注目もしていたわけでもありません。たまたま Creative Commons を通じて Lawrence Lessig から哀悼のメールが送られてきたときも、少し興味を持って調べたという程度でした。

多くの人が彼の素晴らしい業績を称賛し、死を悼んでいる反面、彼を自殺に追い込んだのが厳しい著作権であり、さらに非親告罪がもたらした弊害だと主張するものが散見されました。WIRED では「ドミニク・チェン特別寄稿:天才A・シュワルツの死が知らしめた、ある問題について」という記事で、次のように取り上げています。

このたびの彼の早すぎる死は、わたしたちの情報社会における著作権システムの根本的な問題の幾つかを浮き彫りにしました。1つは著作権の非親告罪化がもたらす歪み。1つは著作物の共有を巡る損害と利益の不正確な認識。そしてもう1つは学術システムの限界です。

ドミニク・チェン氏は Creative Commons Japan の理事ですが、このような立場にある人の記事が大手のメディアに掲載されたことため、このような指摘が正しいものとして広まってしまっているようです。でも、Aaron Swartz を追い詰めたのは、本当に著作権なのでしょうか

Aaron Swartz の自殺を報じた記事、あるいは2011年の逮捕を取り上げた記事には「Swartz氏が有罪となった場合、最大35年の懲役と3年間の監視下での保釈が課せられる」(「Aaron Swartz(アーロン・シュワルツ)が自殺 RSS仕様の共著者、web.pyの作者、Redditの共同創業者」より)といったことが書かれていました。少なくとも、この時点で彼の容疑が著作権侵害だけではないことがわかります。アメリカでも著作権侵害による懲役刑は最長で10年だからです。

Aaron Swartz の逮捕に関する記事を調べてみると、そもそも容疑に著作権侵害が含まれていないことがわかりました。「ゲリラOA活動家による EJ大量ダウンロードが投げかけた波紋」(2011年9月の記事)には次のように書かれています。

容疑は(1)電信詐欺,(2)電子計算機使用詐欺,(3)保護された電子計算機からの違法な情報入手,(4)保護された電子計算機への損害などで,有罪となれば100万ドル以下の罰金と35年以下の禁固刑とされている。

※今では、wikipedia に詳細な内容がまとめられています。

冒頭の記事のように「JSTOR とは和解していたのに35年もの刑が科せられるおそれがあるのは、アメリカは著作権侵害が非親告罪化されているためだ」と非親告罪化を問題視するのは的外れであり、むしろ「非親告罪化しているアメリカですら、著作権侵害に問うことはしなかった」というのが正しい見方というものです。そもそも Aaron Swartz は「容疑をかけられていた段階」であって、実際に裁判で35年の禁固刑が課せられたというわけでもありません。

「Aaron Swartz を追い詰めたのは非親告罪化した厳しい著作権だ」と著作権法を批判している人は、状況を正しく理解したら「電信詐欺、電子計算機使用詐欺、保護された電子計算機からの違法な情報入手、保護された電子計算機への損害に関する刑罰は厳しすぎる」と主張することになるのでしょう。その賛否については、あえて触れません。ただ、優秀な技術者の死がデタラメなプロパガンダのために利用されているのは大変残念なことと言わざるをえません。

mohno

あちこちで話題になっているので、ここで改めてご紹介することでもないと思いますが、今期の「琴浦さん」というアニメがとても面白いです。東京(TOKYO MX)では1/14の放送開始と今期のアニメではもっとも遅いスタートだったのですが、もっともインパクトのあるスタートでもあり、すでに配信のはじまっている2話(TOKYO MX では今夜23:00から放送)も期待を裏切らない内容でした。

製作がCBCで、テレビ放送される地域は限定されていますが(BSの放送がありません)、ニコニコ動画には公式チャンネルが設けられており、1話と最新話(現在は2話)が無料配信されています(※)。アニメといっても、個人によって好き嫌いはあると思いますが、「琴浦さん」は1話を見れば、それがハッキリするのではないかと思います。内容は、右側のキービジュアルから予想されるものとは(たぶん)違いますが、少しでも興味のある方は、ぜひご覧ください。

※1週間を過ぎたら有料配信に移行。バンダイチャンネルショウタイムドコモアニメストアでも配信されています。

【ニコニコ動画】琴浦さん #1 「琴浦さんと真鍋くん」

【ニコニコ動画】琴浦さん #2 「初めての……」

原作も人気の4コマ漫画だそうで、つい原作1巻を読んでしまいました。4コマ漫画という体裁のため、個々のエピソードがとても短く表現されています。アニメは、改変されている部分はありますが(特に1話の前半はほぼオリジナルだそうです)、原作に沿いつつ、丁寧にストーリーが作られています。実は、原作を読んでしまったのを後悔していますが^_^;、傑作の予感しかしません:-)

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mohno

Comics71_loこちらもタイミングを逸してしまいましたが、毎年やっていることなので、DNJournal の Domain Sales の2012年の年間ドメイン取引ランキングについてまとめます。このランキングは、主に sedo などの取引サービスが使われて公開されたものが対象です。

公開された取引で100万ドルを超えたのは、昨年の3つからさらに減って2つになり(Investing.com/$2,450,000とPersonalLoans.com/$1,000,000)、取引額トップ100の総額も1825万ドルと、昨年の2231万ドルから大きく落ち込みました。100位の取引も昨年の$71,000から$65,000と下落しています。

ドメインは、それぞれがユニークな存在なので一般化しにくいですし、この傾向には高額取引が非公開化されがちなことにも要因があると思われますが(※)、人気のあるショートレター(sTLD が3文字以下)ドメインは、一昨年頃には、どんな組み合わせでも.comは$4,000前後、.netは$400前後だったものが、最近ではそれぞれ$3,000前後、$300前後にまで落ち込んでいます(参考:dnforum の取引フォーラム(オファー)、(固定価格))。もっとも、これらも10年前なら1桁安い値段で取引されていたものです。
※取引の非公開が進むと宣伝にならない sedo は、近年、自社サイトが誘導した取引を非公開にする場合、3%の追加手数料を徴収するようになっています。

取引総額(※)
2012 1825万ドル
2011 2231万ドル
2010 4439万ドル
2009 3462万ドル
2008 4395万ドル
2007 4324万ドル
2006 2970万ドル
2005 1643万ドル
2004 991万ドル
※DNJournal による取引額トップ100の総額。

実のところ、このような値下がりと昨年までの円高で、(あまり興味を持つ人は多くないのですが)日本人にとっては良質のドメインを買いやすい市場が続きました。たとえば、loftwork というところは lab.org($12,500)、ID.CC($7,575)などを購入しています。まだ、サイトはできていませんが Daisuki.net というドメインは $15,000 で取引されました。しかし、ドメイン登録は年間の維持費もかかる(かつ、こちらは値上がり傾向にある)ので、昨今の円安傾向が続くと、こうした“お買い得”な時期も過ぎ去ってしまうのかもしれません。

2011年のドメイン取引ランキング
2010年のドメイン取引ランキング
2009年のドメイン売買ランキング
2008年のドメイン売買ランキング
2007年のドメイン売買ランキング
2006年のドメイン売買ランキング
2005年のドメイン売買ランキング

mohno

体罰を受けた高校生が自殺した問題で、体罰をめぐる是非が話題になっています。概ね「体罰は悪」という捉え方がされているようなのは安心です(むしろ、過剰な報道などで“加害者”を自殺に追い込まねばよいが、という気がしないでもありません)。ついでに言えば、今なお悪びれもせず体罰を肯定しているらしい戸塚ヨットスクールの戸塚宏氏もそうですが、こういうときこそ報道関係者には「戸塚ヨットスクールを支援する会」の会長でもある石原慎太郎氏に意見を聞いてきてほしいものだと思います。

■「体罰では強くならない」

Comics70_lo桑田真澄さん“体罰では強くならない”」「桑田真澄さん 体罰は安易な指導」(いずれもNHK)などで、元プロ野球選手の桑田真澄さんが体罰による指導への反対を訴えていることが伝えられています。プロを目指すような世界では、いかに身体能力を伸ばせるかを科学的に分析し、効果的に訓練しなければならず、体罰や精神主義に陥るような指導では十分な効果が得られないことは想像に難くありません。(プロではないですが)昨年のロンドン・オリンピックで男子・柔道の成績が芳しくなかったことも、精神論に偏ったと言われている指導方法のせいではないかと勘繰っています。

■「体罰に効果はない」のか

この桑田氏の意見はもっともなのですが、運動部で活動する生徒の誰もが、そういう高いレベルにいるわけではありません。また、指導者側も専門家というわけにはいかず、義務でもないのに水泳部の顧問を引き受けている美術の先生、なんてこともあるでしょう。体罰を受けないことでダラダラ過ごしてしまう人がいれば、そういう人には体罰をもって厳しい訓練に当たらせる方が効果があるかもしれません。指導する側も、効果的な運動方法を学ぶより、“ビシビシ”鍛えるという方法の方が手軽に効果を得られるのかもしれません。

今回のバスケ部顧問に対する記事にも、次のような報道があります。

一方、同校の卒業生の一部には「顧問は熱意ある指導をしていた」として、処分の軽減を求める嘆願書の提出や署名運動などを検討する動きもあるという。

つまりこの顧問に熱意があり、周囲からも効果も得られていたと認識されていたのだと思います。

■「体罰は効果があってもダメ」というべき

「体罰には効果がないからダメ」という主張に対しては、「体罰には効果があるからよい」という反論がありえます。実際、体罰を肯定(容認)する人は体罰による効果というものを実際に体験しているからこそ「よい」と思っているのでしょう。そういう人に「体罰には効果がない」と主張しても受け入れてもらえない可能性があります。

ここで言うべきことは「効果がないからダメ」なのではなく「効果があってもダメ」だということです。なぜダメなのかと言えば、「取り返しのつかない副作用(悪影響)」がありうるからです。自殺や体罰による致死が取り返しがつかないのはもちろんですが、体罰がトラウマとなって人生でネガティブなイメージを負い続けることだってあるでしょう。「子どもに対して暴力も愛情表現のうちだと教えてしまうと、その子供が大人になったときパートナーの暴力を愛情と思って受け入れてしまうかもしれない」という話もありました。このように体罰の連鎖を招くおそれもあります。

体罰に効果があると主張する人は、そういう悪影響が生じたからといって責任を取ってくれるわけではありません。また、体罰による効果は、体罰以外の手段を考えることができますが、そうした副作用は後から反省したところで回復できない場合もあります。(体罰絶対禁止というと突っ込まれるかもしれないので、一応触れておきますが)広い意味では、犯罪者に対する“懲役”も体罰みたいなものですが、あくまで刑事裁判で(公的に)判断された場合に科せられるものです。“私刑”は法律上も認められていませんし、そもそも教育ではありません。

自分には効果があったと経験を持つ人によって体罰が連鎖するのを防ぐには、効果をまっこうから否定することではなく、悪影響をさしおいてまで得るべき効果なのではない、という形で体罰を否定すべきなのではないかと思うのです。

mohno

なんだかタイミングを逸しすぎた気がしないでもないですが、夏アニメに続いて、秋アニメについての個人的な評価をまとめます。思いおこせば、4作品(再放送の「STAR DRIVER」も含むと5作品)ものアニメが1話からキスシーンがあるという始まり方をした秋アニメでしたが(←どうでもいい)、全体的には「惜しい」感じのするものが多かったという印象です。以下、できるだけ抑えているつもりですが、その性質上、多少のネタバレを含みます。(当然、見てない作品は選考外です。デュフフ)

■作品賞「ソードアート・オンライン」
「ソードアート・オンライン」は、ナーヴギアと呼ばれる装置で実現される完全な仮想空間に構築されたゲームの名前であり、その仮想空間が舞台です。実は前半(アインクラッド編)の締めくくりには腑に落ちない点があるのですが、それでも全体としては大変面白く楽しめました。ネタバレにならないよう紹介するのは難しいのですが、とくに初期の話では伏線の敷き方が絶妙だと感じました。さまざまなドラマで伏線(後の展開のためにほのめかされる事柄)が使われますが、よくできた伏線には必ずしもドラマの中だけで収まっていないものがあります。(ある映画のネタバレに近いのですが)たとえばクイズ番組が設定されて「オーストラリアの首都はどこでしょう?」「シドニー!」「正解です、おめでとう!」という流れがあるとします。実際の首都はキャンベラなので視聴者は「クイズ番組そのものが偽物」と気づくかもしれませんが、うまく気づかなければ最後に「してやられた」という印象を持てます(伏線だと思っていたら、たんに設定を間違っていただけというケースもありますが)。「ソードアート・オンライン」の場合は、舞台が仮想空間なので、どのようなその仮想空間で設定になっているかということが必ずしも判明しているわけではありません。そのため、どんなオチが用意されているのか予想するのは難しいのですが、それでも「なるほど、そういう設定はあるだろうな」と思わせる、その作り方が見事でした。

■主演女性キャラ賞「水谷雫(となりの怪物くん)」
「となりの怪物くん」は、冷淡で友達もいない高校生が恋をするというラブコメです。雫は、頭がよくて、冷たい口調ではあるんですけど、そういう設定にありがちな“ツンデレ”ではありません。好きだと思ったら、それを隠さず口にする。実に素直な性格で、よくある「好きだけど、照れて気持ちをうまく伝えられない」というパターンとは一線を画しています。「となりの怪物くん」の登場人物は、その形はどうであれ、みな素直な性格で、まさに素直な気持ちのぶつけ合いでドラマを作っているという感じです。ただ、残念ながらアニメそのものは中途半端に締めくくられてしまった感じです。

■主演男性キャラ賞「富樫勇太(中二病でも恋がしたい!)」
「となりの怪物くん」の吉田春と迷ったのですが、吉田春は自分の身の回りにいたら、ただの迷惑なヤツになりそうな気がするので、「中二病でも恋がしたい!」の主役、富樫勇太を選びました(「ソードアート・オンライン」のキリトは前回選んだので外しました)。「中二病でも恋がしたい!」は、作品としても好きなアニメです。当初は「京都アニメーションは、もう一度“けいおん!”を作りたいのか?」と思うような話でしたが、結果としてはそのような日常モノではありませんでした。原作からは大幅に変更されているようですが、映像もストーリーもよく、非常にアニメらしいアニメだったと思います。富樫勇太は中二病を“卒業”した高校生で、ヒロイン(小鳥遊六花)を思いやり、自身の心も揺れるのですが、福山潤さんの好演もあり、非常に魅力的でした。

■助演女性キャラ賞「夏目あさ子(となりの怪物くん)」
「中二病でも恋がしたい!」の丹生谷森夏や「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のバルメと迷いました。夏目あさ子は、1話で「ゲロを吐く」という大変インパクトのあるシーンがあり単発で終わる脇役かと思っていました。しかし、その後も、さまざまな場面でヒロインの水谷雫を応援する形で登場し、そのたびに“純”な性格がにじみでていて好感のもてるキャラでした。

■助演男性キャラ賞「エレクパイル・デュカキス(イクシオンサーガDT)」
「イクシオンサーガDT」は、「これで2クールもやるのか」と思わざるを得ない突拍子もないアニメなのですが(どこが突拍子もないかを書くのは控えます)、この「エレク様」はとてもかわいそうなキャラです(なぜ、かわいそうなのかを書くのは控えます)。エレク様は、助演じゃなく主演じゃないかという話もありそうで(wikipedia でフルネームを調べたら“もう1人の主人公”と書かれていました^_^;)、その意味では「PSYCHO-PASS」の狡噛慎也もいい役どころだと思うのですが、今回はエレク様を選びました。どうしてディオ(ジョジョの奇妙な冒険)じゃないんだと言われそうな気もしますが、ほかにも「となりの怪物くん」のささやん、「BTOOOM!」の平さんなど魅力的な脇役キャラが多かったです。「さくら荘のペットな彼女」の三鷹仁も、いいキャラなのですが、後半の展開に期待します。

■非人間キャラ賞「メイドちゃん(さくら荘のペットな彼女)」
この名目で、かつて「ムルムル(未来日記)」を選んだことを思うと、「巴衛(神様はじめました)」も候補にしてよいかもしれませんが、ちょっと違和感があるので、「さくら荘のペットな彼女」の天才プログラマー、赤坂龍之介が開発した2次元キャラであるメイドちゃんにしました。コンピューター上の仮想キャラという意味では、「ソードアート・オンライン」のユイもよかったですね。

■女性声優賞「種崎敦美(夏目あさ子、となりの怪物くん)」
ここで主演じゃない役というのもどうかと思ったのですが、前述の夏目あさ子は、キャラもよかったのですが、声もピッタリでした。割と新人の方のようですが、特徴的な声ですし、今後も活躍されるのではないかと期待しています。新人に近い方としては「新世界より」で主人公の渡辺早季を演じている種田梨沙さんもよかったと思います。ちなみに、「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」の主人公、姫小路秋子を演じた木戸衣吹さんは、なんと14歳(誕生日を過ぎた今は15歳)です。セルアニメの販売にレーティングがかかっているわけではないのですが、どうみても性的な演出を含むオープニングを含め、この役を中学生にやらせて大丈夫だったんだろうかと余計な心配をしてしまいます。個人的には「さくら荘のペットな彼女」の椎名ましろ、「好きっていいなよ。」の橘めい、「ガールズ&パンツァー」の武部沙織など多数の役を演じ、「氷菓」のラジオでもパーソナリティを担当していた茅野愛衣さんの活躍っぷりがハンパないとも思ったのですが、キャラのインパクトと、その声の印象がよかったので種崎敦美さんを選びました。

■男性声優賞「福山潤(富樫勇太、中二病でも恋がしたい!)(マリアン、イクシオンサーガDT)」
福山潤さんはベテランの声優で、これまでに多くの主役を演じられているのですが、この富樫勇太の(元)中二病という設定で出てくる“ダークフレイムマスター”を演じる声は、「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュ・ランペルージを彷彿とさせます(もちろん本人)。「コードギアス」も好きなアニメなのですが、その印象が「中二病で恋がしたい!」での中二病設定に“再利用”されてしまったかのようでした。「イクシオンサーガDT」のヒロイン(?)のひとりであるマリアンも設定からして凄い訳でした。「コードギアス」のc.c.とルルーシュを“足して2で割ったキャラ”とも言われているようです。「さくら荘のペットな彼女」で神田空太を演じる松岡禎丞さんは、「ソードアート・オンライン」のキリトと違ったコミカルな喋りがよかったですし、さまざまなアニメでの活躍っぷりという意味では子安武人さんも大活躍だったのですが、富樫勇太の中二病が実にすばらしく表現されていたという点で福山潤さんを選びました。

■コマーシャル賞「神様はじめました」
「神様はじめました」の CM は、アニメよりも漫画を売り込むもので、お笑いタレントの AMEMIYA さんがギターを弾きながら、アニメよりも先のストーリーを歌いながらバラしてしまうというものでした。twitter でもさんざん「ネタバレやめろ!」と言われていましたが、他のアニメCMにないインパクトがあったのはたしかです。

■主題歌賞「割れたリンゴ/渡辺早季(cv種田梨沙、「新世界より」エンディング曲)」
「新世界より」は、人々が“超能力”を使えるようになった1000年後の世界が舞台です。原作は2008年の日本SF大賞を受賞したそうですが、ユニークな設定でアニメそのものも話も映像も面白いものです。2クール続くもので、まだ前半が終わったところです。このアニメはオープニングらしいオープニングがないこともあるのか、モノトーンを中心としたエンディングは他のアニメに比べてよく作りこまれています。その映像にとてもマッチしているのが、この曲で、難しそうなコードで進むアコースティックギターのイントロから引き込まれます。他にも、「さくら荘のペットな彼女」のオープニング曲(「君が夢を連れてきた(ペットな彼女たち(茅野愛衣、中津真莉子、高森奈津美)」)とエンディング曲(「DAYS of DASH/鈴木このみ」)、そして今期のダークホースと言ってもよい「ガールズ&パンツァー」のエンディング曲(「エンター エンター ミッション/あんこうチーム(渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香)」)もよかったです。

■脚本賞「バクマン。3」
実のところ、深夜アニメ以外はあまり見ていないのですが、その中でずっと面白いと思って見ているのが「バクマン。3」です。実在の漫画も登場し、かなりリアリティを意識した作品だと思うのですが、実際の年月とは関係なくテンポよく話が進んでいきます。漫画制作の背景ばかりでなく男女関係も絡んできて、なかなか目が離せません。

■映像賞「中二病でも恋がしたい!」
前期の「氷菓」もそうでしたが、いかにも京都アニメーションらしい素晴らしい映像でした。他のアニメだと、ときとしてスケジュールの厳しさを物語るように作画が崩れたり、止め画が続いたりということがあるのですが、京アニの作品ではそのような心配はありません。このアニメでは、普通の高校生活が舞台ですが、そこでの細かな描写が行き届いているだけでなく、(中二病という設定による)妄想バトルがまた素晴らしいものでした。「絶園のテンペスト」や「ソードアート・オンライン」もよい作品でした。ちなみに、「K」の1話の映像は凄かったのですが、その凄さが1話だけだったのは残念です。

■オープニング賞「ジョジョの奇妙な冒険」
すでに2部で変わっていますが、1部のオープニングは凄いものでした(2部もよいです)。私は読んだことはないのですが、元々原作の漫画が大人気だそうで、まさにその漫画のシーンを活かしたオープニングになっています。MARVEL アニメの実写化映画を彷彿とさせると言ってもよいのですが、それだけではなく劇画調の漫画のコマをそれらしく使った上で、セリフも含めてアニメーションとして動かしています。そして、それがシーンの一部として使われていて、めまぐるしく展開していくというものです。お金や手間がかかっていそうなものというのは他にもありますが、最初から最後までどのシーケンスも手が抜かれることのなく緻密に計算されています。レコーダーが普及した今は何度でも繰り返し見ることができますが、昔なら毎週オープニングで何がどう見えているのか確認するだけでも楽しみにしていたことでしょう。

■エンディング賞「えびてん」
「えびてん」そのものは、パロディ満載の、わりとくだらない、いやむしろひどい内容(←褒め言葉)のアニメです。エンディングは、その回で取り上げたパロディネタに合わせて毎回変えられていました。最終回が「うる星やつら」の映画2作目「ビューティフルドリーマー」のパロディでしたが、レンタル屋で「ビューティフルドリーマー」を借りてしまったほどです(最終回の直後にはレンタル中になっていたので、先にどこかの「えびてん」視聴者が借りていたに違いありません)。このように毎回エンディングが変わるのは「そらのおとしもの」と似ているのですが、シリーズ構成が同じ柿原優子さんなので、そのせいかもしれません。「エンター エンター ミッション」に合わせて、毎回違うデフォルメキャラが揺れる(だけの)「ガールズ&パンツァー」もよかったのですが、ここは「えびてん」に譲ります

■予告賞「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」
「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」(略称「おにあい」)は、サブタイトルがすべて4文字(文章の略語)なのですが、予告もすべて4文字のかなで表されていました。サブタイトルが4文字というパターンは「xxxHOLiC」にもありましたし、予告が文字だけというパターンは「Angel Beats!」にもありましたが、予告を4文字かなだけで表現するというのは携帯小説のようで(←古い?)、なかなか新鮮でした。

■エンドカード賞「BTOOOM!」
「中二病でも恋がしたい!」の六花はかわいかったし、「うーさーのその日暮らし」もよく描き込まれた感じでしたし、「好きっていいなよ。」の水彩画っぽいエンドカードも爽やかでしたが、「BTOOOM!」のエンドカードは凄みを感じさせるものでした(とくに8話)。

■アイキャッチ賞「えびてん」
「えびてん」については上記のとおりですが、アイキャッチもパロディによって毎回趣向が変わっていました。こういうところに手が抜かれていないのは好感が持てます。「中二病でも恋がしたい!」や「神様はじめました」もよかったです。

■フレーズ賞「闇の炎に抱かれて消えろ(中二病でも恋がしたい!)」
これは前述の福山潤さんの功績ですね。

■提供画面賞「さくら荘のペットな彼女」
提供画面で“遊び”が入ることはよくあることで、「イクシオンサーガDT」の両脇のコメントも笑わせてくれるのですが(「男子高校生の日常」を思い出します)、「さくら荘のペットな彼女」は面白い部分を繰り返すだけでなく、スローモーションのような効果を入れたりしていて楽しめました。

■ベストシーン賞「バクマン。3」

ここは思いっきりネタバレします。元々、こういう“ベタな展開”が好きなのです。「バクマン。3」の7話で、女性漫画家、蒼樹紅に思いを寄せる怠け者の漫画家、平丸一也が漫画の連載が終了した後、彼女に告白するための“特別な一日”に全力を賭け編集担当者から逃げ回ったあげくにつまかりかけて、彼女のそばで編集担当者に言うセリフです。「……描くのが嫌なんだ。今日こうして締め切りに追われず、マンガの事も考えずに解放された蒼樹さんとの時間がどれだけ楽しかったか。あんたに分かるか!今日という日は、僕の人生で一番幸せな一日だったんだ!」

■ラジオ賞「となりの怪物くん」
例によってアニメラジオは、かなり多いのでごく一部しか聴いていませんが、よくあるパターンは声優の方がパーソナリティを務めて、アニメにちなんだテーマで投稿を募集して紹介するというものです。ですから、どうしても、そうでないものが気になります。「となりの怪物くん」のラジオも本編はそういうものですが、冒頭の「ゴルベーザあさこの友達のできるおまじない」という短いコーナーが印象的でした。

■再放送賞「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
再放送モノというのは、私が本放送時に見ていなかっただけのものなので選考から外してきたのですが、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」はとても面白い作品でした。これが文章のようなタイトルが流行するハシリだそうですが、(あまり色々知っているわけではないですが)「エロゲー好きの妹」という設定から予想したものとはまったく違って、優しい兄の話でした。4月から2期がはじまるそうで、楽しみです。

Comics69_lo

mohno

※2013/1/9追記。(投稿時に抜けてしまいましたが)このエントリでは表題に対する結論は出していません。念のため。

■"Adobe CS2 for free"

昨夜、Adobe が Creative Suite の古いバージョン(CS2)の無料ダウンロードをはじめたという情報が駆け巡りました。その時点では Adobe のサイトにサインインが必要であると書かれていたのに、サインインしようとしても重くてできなかったのですが、その後に知った「Adobe Creative Suite 2 製品およびAdobe Acrobat 7のアクティベーションサーバーに関するお知らせ」というページを見ると、とくにサインインしなくてもすべてのファイルがダウンロートできます。

当初は、Microsoft Expression の無料化に感化されたのかと思いましたが、それにしては最新OSで使えないようなものを出しても仕方がないですし、探してもプレスリリースらしきものが見当たらないという疑問はありました。今日になって、Adobe のブログで無償化を否定する見解が出されました。今ではプレスリリースも出され、ダウンロードサイトにも同様の記載があります(強調は筆者)。

今回の措置は、あくまでもCS2およびAcrobat 7の正規ライセンスを所有するお客様向けの顧客支援のための措置であり、不特定多数の皆様に向けて無償でライセンスを提供しているという事ではございません

正規ライセンスを所有されていない方の利用につきましては、ライセンス違反となり得るため、ご利用の際にはくれぐれもご注意いただけますようお願い申し上げます。

「ライセンス違反となる」という断定表現でなく、「なり得る」という限定的な表現を使っているのが興味深いところです。

■ソフトウェアの公開は継続

Adobe は、上記のページで今でも CS2 を自由にダウンロードできる環境を継続しています。サインインの必要もありません。既存ユーザー向けと断っているのですが、このように表明するだけで、これまで正規ライセンスを持っていなかった人がソフトウェアを使うことを「ライセンス違反」に問うことができるのでしょうか

SmartNews のエントリでも触れましたが、日本では私的複製は明文で合法とされています。3年前に施行された、いわゆる「ダウンロード違法化」によって違法に配信されているコンテンツのダウンロードは私的複製から除外されるようになりましたが、このサイトは Adobe のサイトに間違いありませんので「違法に配信されているコンテンツ」とは言えません。細かな突っ込みを受けかねないので条文を掲載しておくと、著作権法第30条1項3号には私的複製を除外するケースとして、次のように書かれています。

著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

少なくとも Adobe のサイトで公開されているものが「著作権を侵害する自動公衆送信」という認識を持つことはできないでしょう。そもそも条文を素直に解釈すれば、ダウンロード違法化の対象は音楽と映像(録音と録画)であってソフトウェアは対象外なのかな、という話もあるのですが(ゲームは映画の著作物という見方もされます)、それは言わないでおきます(←言ってますが)。

しかし、このページには「CS2およびAcrobat 7の正規ライセンスを所有されているお客様を対象として、アクティベーションサーバーを介在しないソフトウェアをアドビ システムズより直接提供」していることが明記されています。そう書いてあるのに、CS2 のライセンスを持たない人がダウンロードして使うと使用許諾条件に反して使うことにならないかということは気になります。

かつてレコードには「複製禁止」という但し書きがあったそうです。しかし、「私的複製は法律で認められているのに“複製禁止”と言われるのはおかしい」という指摘を受けて、「家庭内など私的な範囲を超えた複製は法律で禁止されています」という表記に変わったそうです。複製禁止と書いてあるのに複製するのはライセンス違反だ、という理屈は通らないわけです。かつて「複製が私的でも目に余るようになれば、CD にも使用許諾書が追加されるんじゃないか」というエントリを(皮肉として)書いたことがありますが、パッケージを開封したり、インストール中に [同意] ボタンを押すような仕組みを容易しない限り、一方的な表明では“契約”が成立しないのではないかと思います。「CS2 のライセンスを持ってない人に使うな」というのは「Adobe の希望」としては理解できますが、“法的な縛り”が生じる気がしません

■インストールと使用許諾契約

さて、実際にソフトウェアを使うためにはインストールしなければなりません。ほとんどの商用ソフトウェアがそうであるように、Adobe CS2 でも「使用許諾契約書」への同意が必要になります。もし、ここですでに CS2 の正規ライセンスを持っていることが条件として課せられていれば、そこで終わりです(そして、そうなっていたら、このエントリを書くこともなく秋アニメのレビューをアップしていたことでしょう)。

でも、そんなことは書かれていませんでした。Photoshop CS2 のインストーラを起動してみましたが(※)、おそらく製品版の使用許諾契約書と内容は変わっていないと思われます。なくなっているはずのアクティベーションに関する記述も、そのまま残っていました。
※ここでの検証には2013/1/8 午後9時頃にダウンロードした日本語版Adobe Photoshop CS2を使っています。その他のソフトウェアは確認しておらず、今後、変更される可能性もあります。

Pict59b

さらに「2. ソフトウェアのライセンス」には、次のように書かれています。

Pict59d

あらためて赤枠部分を引用します(強調は筆者)。

2. ソフトウェアのライセンス。お客様が本ソフトウェアを Adobeまたはその公認ライセンシーから取得し、本契約の条件に従う場合には、 Adobeはお客様に対し、下記に定めるように、マニュアルに記載されている方法および用途に本ソフトウェアを使用するための非独占的なライセンスを許諾します

「金を払っていない人など、“お客様”ではない」という主張は“あり得る”かもしれませんが、このダイアログの言語を英語にして確認すると、ただ "you" と書いてあるだけです。「これらのソフトウェアを Adobe のサイトからダウンロードした」ことを「本ソフトウェアを Adobe から取得した」とは言わない、というのも無理がある気がします。そして、この使用許諾契約に同意すれば(通常の製品がそうであるように)ライセンスが許諾されると明記されています。

Comics68_lo■日本ならでは(?)

たとえばアメリカなら「正規ユーザー向けに配布しているだけのものを、他の人がダウンロードして使うのは“公正な使用”(フェアユース)にあたらない」という理屈があるかもしれません。しかし、日本では私的複製が明文で合法化されており、除外する規定にも該当しそうにないので、どこをどう解釈したら“ライセンス違反になりうる”のかわからないというのが正直なところです。何の責任も負いたくはないので、冒頭に書いた通り結論は出さないでおきますが(そもそも私は CS5 の正規ライセンスを持っているので必要ないですし、先に進めてインストールすることもしていません)、(日本の)Adobe 社は何かしら対応を考える方がよいのではないかという気がしてなりません。

なお、そういうライセンスの心配などなく、無料化されたデザインツールとして Microsoft Expression があることを重ねてご紹介しておきます(ただし Windows に限ります)。

mohno

あけましておめでとうございます。
新年早々のエントリが、お詫びの内容ですみません。本来、指摘をお受けした直後に調べて、昨年中にケリをつけておくべきところだと思いますが、年をまたぐことになってしまい申し訳ありません。

前エントリでは、SmartNews が各ニュースサイトから記事をダウンロードしていると推測して「真っ白」と表現しましたが、その後に追記したとおり「推測ではなくパケットを調べるべき」「ニュースの取得日付がインストールした日付より古い」というご指摘があり、さらに「実際のパケットを見ると、サーバーでニュース記事を集約して、アプリで受け取っている」というコメントをいただきました。遅ればせながら、実際にパケットを確認したところ、ご指摘いただいたとおりの内容でした(santama さんgrammerさんのコメントにおかげで、簡単にパケットを確認できました)。

今回は Wireshark というパケットキャプチャソフトを使って通信の内容を確認しましたが、SmartNews アプリをインストールした直後に SmartNews 自身のサイト(amazonaws.com 上にあります)に「POST /api/GetLinks」というリクエストを送信しています(下図)。

Pict124a_3

そのレスポンスとして、gzip圧縮されたJSONデータが返されており(展開時で約1.1MB)、ここにニュース記事の全文が収録されていました(下図)。また、画像は Amazon Web Services(amazonaws.com)上に置かれていました(JSONデータにはそのURLが含まれている)。

Pict124b_2

つまり、SmartNews は各ニュースサイトから記事をダウンロード(私的複製)した上で加工しているのではなく、いったんサーバーでニュース記事を集約・加工した上で配信するというもので、「真っ白」からは程遠い実装でした。どうしてこんな実装をしたのかわかりませんが(いや、もちろんアプリの効率のためでしょうが)、実装を確認せずに断言してしてしまい「技術センスと法的センスに問題ある」のが私だったということでした。

Comics67_loエントリそのものの主旨である「テレビ録画という私的複製が許容されるなら、ニュース記事の私的複製も許容されるべきではないのか?(そうでないなら、テレビ録画も問題視すべきではないのか?)」という点について変更はありませんが、SmartNews の実装については、大きな認識の誤りがありましたことを深くお詫びいたします

なお、(私的複製だとしても)広告を切り取るのは同一性保持権を侵害することにならないのか、というご指摘がありましたが、前エントリにも書いた通り、記事と広告をひとつの著作物と考えることは無理があると思います。コメントにも書きましたが、通常、記事の著作者はニュースサイト自身であるのに対し、広告はそうではなく(おそらく広告代理店や出稿企業)、広告を含む記事を共同著作物とは考えにくいためです(当事者もそのようには考えていないと思われます)。

また、ページレイアウトを含めてHTMLソースを著作物であると考える場合、これは「言語の著作物」ではなく「プログラムの著作物」と考えることになるでしょう。その場合、著作権法第47条の3により「電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変」が認められていますので、(違法な複製でないという条件付きですが)同一性の問題は生じないことになります。もっとも、一般的には記事本文こそが言語の著作物であり、それが切除などの改変がされていなければ、同一性保持権を侵害することにはならないと考えることになるだろうと思います。

mohno


プロフィール

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大野 元久

平成元年にIT業界に入って以来、開発ツールに関わり、主にマーケティング中心に活動してきました。現在はフリーランス。

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