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補償金は文化を守るために役立つか?

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昨日発表された「Culture First」の記事に書かれている補償金について、批判の声が聞かれます。「さらに搾り取る」みたいな意見もあるようですが、むしろ、この発表に登場してきた“著作者”が、実際に配分される金額がどれほどのものかを理解しているのか疑問に思ってしまいます。以前に書いたことを繰り返すようですが、録画録音補償金は、対象となるビジネスの規模に比べて非常に小さいからです。ここでは、「補償金が「危機的状況に」」と書かれているのですが、ピーク時の資料がわからないものの、昨年の実績としては録音補償金で10億円程度、録画補償金も20億円程度のようです。一方、JASRAC や RIAJ の報告を見る限り楽曲のビジネス規模は数千億円、動画はテレビだけとってもNHK受信料や民法の広告収入で1兆円以上の規模があります。関連する市場を含めれば、さらに大きいかもしれません。

個々の著作(権)者が、0.1%程度の収益増を本気で喜ぶとはとても思えません。ニセモノの良心というブログでは、地方テレビ局勤務の孝好氏が「あぶく銭もらいました」というエントリで補償金制度を批判しています。そもそも、この程度の金額であれば、それぞれの文化を支える力はごくわずかでしょう。それぞれの補償金の何割かは、共通目的事業として芸術文化の土壌を改善するのに使われるのだそうですが、公共性の高いものなら税金を投入したってよいでしょう。今でも、文化的活動に税金が投入されていないわけではありません。

逆に、補償金制度に実効性を持たせたいなら、今とは桁違いに徴収率をあげたり拡大する必要があるでしょう。この記事は、それを意図しているわけですが、現在の10倍にしたところでビジネス規模の1%程度です。しかも、影響力があるほどに拡大したら、ほんとうに一般利用者から反発を食らうでしょう。結局は「制度運営者のための制度」に過ぎないと批判されても仕方がないように思います。これも繰り返しですが、不正コピー対策を考えたり、コピープロテクトをどうするかについては、補償金とは別に議論すればよいことだと思います。

ところで、はてブでなされる批判的コメントには、けっこうひどいものがあります。たとえば、「文化って有料だったの?」というコメント。はてなスターがついてますけど、著作者が霞を食って生きられるわけではありません。お金をかけたからってよい作品になるとは限らないのですが、著作者がよりよい作品のために時間とコストをかけたいと思うことはあるでしょうし、成功したらそれなりの見返りが欲しいと思うのは自然でしょう。もちろん、それを否定する人もいるでしょうが、「自分で」決めればよいことです。

※追記。佐々木さんから「補足」と「コメント」をいただきました。
著作隣接権・私的録音録画補償金
大野さんからいただいたコメントへのレス

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