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「東京の携帯通話料はNYの3倍」という記事の中身

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先日、「東京の携帯通話料はNYの3倍」(読売新聞)という見出しの記事を見かけました。それによると、

2006年度の東京の携帯電話の通話料金は、1分あたりの単価で比べるとニューヨークの3倍以上も高いことが、総務省が28日発表した電気通信サービスの内外価格差調査でわかった。

のだそうです。あれれ、「日本の携帯電話料金はどれくらい高いのか」で調べた結果は間違っていたのかと、早速(でもないですが)総務省の資料を見てみました(p.16~20)。

ところが、低利用者(音声44分、メール6通、データ利用なし)、中利用者(音声97分、メール100通、データ16,000パケット)、高利用者(音声246分、メール300通、データ670,000パケット)のいずれの比較を見ても、東京の携帯料金が高そうには見えないのです(カッコ内は月あたり)。

Compare_rates_2 

どういうことかと先を見ていくと・・・ありました。「参考資料」として国別で、月額料金を平均利用分数で割った単価が比較されていたのです。

Compare_rates2_2 

でも、これって何だか変です。同じ東京でも、通話時間が長い人と短い人では1分あたりにかかる単価は変わってくるはずです。実際、ドコモでも672分話すとわかっていたら、「タイプLL」プラン(無料通話733分)を選ぶでしょう。たとえば、この場合で、p.18にならって、いちねん割引、ファミリー割引(6年目、45%引)を適用すると、月額料金は8,030円になるので、分単価では11.9円と、米国の分単価(11.7円)とほとんど違いがないことになります。

実際、平均利用分数を見てみると、ニューヨークの672分だけが突出していて、他国は53~160分の範囲です。先のエントリでは、コメントで指摘されたとおり「長電話」を想定している米国の料金体系につられてしまったのですが、日本だって長電話する人にはそれなりのプランがあるのです。この極端な利用時間の差を無視して「1分あたりは高水準」と指摘されても、何だかなあ、という感じです。

さらに気になったのは、p.19のニューヨークの項目では672分/月も通話しているのに、p.17の高利用者(246分/月)と同じ月額料金(表によれば3900円相当)だということです。でも、ここで参照されているプランは p.18 によれば、FamilyTalk 550 Minutes という「550分無料」というプランなのです。Cingular のサイトによれば、これは2回線で基本料金$59.99というプランのようですから、おそらく一人約$30に対して、税金11.625%が加算された上で、当時の為替レート換算で月額3,900円となったのでしょう。しかし、当然2回線の合計無料通話時間が550分のはずですから、ひとりで672分も、この料金のまま通話できるというのは変です。ニューヨークでは発信だけでなく着信も料金がかかりますが、発信だけで一人あたり672分も通話するなら、発着信で1344分、2人なら2688分の通話とみなさねばならないはずです。つまり、3000Minutes プラン($149.99)の半分×税金×為替レート=9,750円と考えるべきではないでしょうか。そして、こう計算すると前述のドコモのプランより高いことになります。※2007.9.4追記。申し訳ありません。コメントをいただいて気づきましたが、「深夜週末無制限」というプランを忘れていました。Cingular のプランは深夜週末の利用は無制限なので、これを考えると、この段落の指摘は見当外れであると思われます。大変失礼いたしました。

こんな記事が出ると、表面だけを捕らえて「やっぱり日本の携帯料金は高い」と言い出す人が出てくるんじゃないかと気になってしまいます。

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