日本の携帯電話料金はどれくらい高いのか
※2008.2.13追記。以下で取り上げた料金は、このエントリの投稿時点(2007年3月)のものです。あらかじめ、ご了承ください。
SIM ロックに守られた日本独自の携帯電話市場。日本では、キャリアが携帯電話に払うインセンティブ(販売報奨金)が1台あたり4万円にもなるそうで、これが携帯料金に跳ね返って日本の携帯料金はバカ高いという話を聞きます。ソフトバンクモバイルも「日本のケータイを安くする」という触れ込みで、新たなプランが発表されました。たしかに、投資したインセンティブはどこかで回収せねばならず、携帯料金に上乗せされるのは当然でしょうし、携帯キャリアが膨大な収益が報告されることも多いので、日本の料金は相当に高いものなんだろうと思っていました。
最初に疑問を感じたのは、安藤怜さんのエントリ「イギリスの携帯電話料金の仕組み」を見たときです。ここで紹介されている英ボーダフォンのプランは、私がコメントに書いたとおりドコモのプランに比べても特別安いわけではありません。また、「日本のケータイを安くする」という触れ込みのソフトバンクモバイルの料金プランにはドコモやauとの競合プランがあるものの、基本料金が200円安いだけでもの凄く安いわけではありません。
とどめが、年末年始のアメリカ旅行でした。ドコモの海外対応機(WORLD WING)は使えますが、どうせ国際ローミング費用は高いだろうと思って、現地でプリペイド携帯(tracfone)を買ったのです。ところが、全然知らなかったのですが、着信にも料金がかかるのです。アメリカでは携帯への着信にも料金がかかるというのは普通のことのようで、アメリカの携帯間の料金を着信が無料の日本の携帯料金と比較するなら倍額で考えないといけないようです。
※実際、どんな場合に着信料金がかかるのか正確に把握していないので、どなたかご指摘くださると嬉しいです。
そこで、主要な携帯キャリアのプランを調べてみました。実際、比較資料を検索してみたのですが「日本の携帯は高い」という文句は多々あれど、具体的な比較資料を示したものが見つからなかったのです(※)。日本だけを見ても、さまざまなプランがあり画一的な比較は難しいくらいですから、アメリカとの比較ではなおさらです。とりあえず、個人向けの料金と思われるものだけをピックアップしました。ファミリー割引のようなものは考慮していません。あくまで「おおざっぱな比較」であることを、お断りしておきます。
※ここではアメリカとの比較だけですので、その他の国との比較があったら教えていただけると嬉しいです。
※Zipcode が必要な場所には92802(ディズニーランド/CA)を入れました。
※金額の単位は米ドル、通話時間の単位は分です。
■Verizon Wireless の America's Choice
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
39.99 | 450 | 0.45 | 無制限 |
59.99 | 900 | 0.40 | 無制限 |
79.99 | 1350 | 0.35 | 無制限 |
99.99 | 2000 | 0.25 | 無制限 |
149.99 | 4000 | 0.25 | 無制限 |
199.99 | 6000 | 0.20 | 無制限 |
■Cingular の個人プラン
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
39.99 | 450 | 0.45 | 5000 |
59.99 | 900 | 0.40 | 無制限 |
79.99 | 1350 | 0.35 | 無制限 |
99.99 | 2000 | 0.25 | 無制限 |
149.99 | 4000 | 0.25 | 無制限 |
199.99 | 6000 | 0.20 | 無制限 |
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
29.99 | 300 | 0.40 | 無制限/週末 |
39.99 | 600 | 0.40 | 無制限 |
39.99 | 1000 | 0.40 | N/A |
49.99 | 1000 | 0.40 | 無制限 |
59.99 | 1500 | 0.40 | 無制限 |
99.99 | 2500 | 0.30 | 無制限 |
129.99 | 5000 | 0.30 | 無制限 |
49.99※ | 3000 | 0.35 | N/A |
※標準プランとは別のLos Angeles Regional Rate Plan
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
14.99 | 100 | 0.25 | N/A |
24.99 | 200 | 0.25 | N/A |
34.99 | 300 | 0.25 | 1000 |
44.99 | 400 | 0.25 | 2000 |
59.99 | 600 | 0.25 | 無制限 |
99.99 | 1000 | 0.25 | 無制限 |
さらに、日本のキャリアのプランをドルベースで追加してみます。今は、少し円高に振れていますが、以下は1ドル=120円として計算しています。
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
30.00 | 25 | 0.33 | N/A |
38.33 | 55 | 0.30 | N/A |
55.00 | 142 | 0.23 | N/A |
80.00 | 300 | 0.17 | N/A |
121.67 | 733 | 0.13 | N/A |
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
30.00 | 25 | 0.33 | N/A |
39.17 | 62 | 0.27 | N/A |
55.00 | 144 | 0.23 | N/A |
79.17 | 262 | 0.20 | N/A |
125.00 | 800 | 0.13 | N/A |
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
8.17 | 0 | 0.33 | ※SB同士は深夜無料 |
16.33 | 0 | 0.17 | ※SB同士は深夜無料 |
月額 | 無料通話 | 追加料金 | 深夜週末 |
---|---|---|---|
22.50 | 0 | 0.30 | 別体系 |
27.50 | 33 | 0.30 | 別体系 |
41.67 | 82 | 0.30 | 別体系 |
100.00 | 275 | 0.30 | 別体系 |
23.02 | 0 | 0.21 | N/A |
まず目立つのは、日本の無料通話の少なさです。また、多少条件の差はあるようですが、アメリカでは深夜や週末には無料通話できるプランが多いようです。一方、アメリカで着信に料金がかかるのだとしたら、通話時間を倍相当に考えてもおかしくはありません。たとえば、平日の昼間に毎日5分(150分)、10分(300分)、20分(600分)、60分(3600分)の電話をかけ、同じ時間だけ電話を受けると想定し(カッコ内は月あたりの時間)、それぞれに最適なプランが選ばれているとすると、以下のようになります。
5(150) | 10(300) | 20(600) | 30(1800) | 60(3600) | |
---|---|---|---|---|---|
Verizon Wireless | 39.99 | 59.99 | 79.99 | 149.99 | 439.99 |
Cingular | 39.99 | 59.99 | 79.99 | 149.99 | 439.99 |
T-Mobile | 29.99 | 39.99 | 59.99 | 129.99 | 789.99 |
Virgin Mobile | 34.99 | 59.99 | 149.99 | 749.99 | 1649.99 |
ドコモ | 56.84 | 80.00 | 121.67 | 260.38 | 372.71 |
au | 56.38 | 86.77 | 125.00 | 255.00 | 489.00 |
SBホワイトプラン | 41.83 | 67.33 | 100.00 | 300.00 | 600.00 |
ウィルコム※ | 54.52 | 86.02 | 149.02 | 401.02 | 779.02 |
たしかに、たいていの場合で日本の方が高いのですが「バカ高い」という表現が適切かどうかはちょっと疑問になってきます。とくにアメリカでは無料通話時間が長い代わりに、追加の通話料も高いので、無料通話分に余裕を持とうと高めのプランを選んでしまうこともありそうです。実際、料金プランが適切でないと、電話料金は跳ね上がります(表の Virgin Mobile 参照)。また、日本では標準サービスでも、オプション扱いになっていることも多いようです。
現実には、日米ともにいろんな割引プランがあります。たとえば、ここに挙げなかったプリペイド携帯の tracfone では、Web サイトで "Double Minutes" というカードを買うと、それ以降ずっと購入時間を倍にできます(※)。たとえば 400分を$99.99で買うと800分使えるので1分あたり約$0.12になり、プリペイド携帯としては、かなり安いと言えます(旅行中には1分=$0.10というカードも見ました)。逆に、日本には「いちねん割引」のような、申し込むだけで基本料金が10%割引になる制度や、いずれは25%(auは35%)割引になるという制度もあります。
※なんと書いているうちに、なくなってしまったようです。:-O
もちろん、アメリカでは深夜や休日の通話が無料になるケースも多いので総じてアメリカの方が通話料が安いと言うのは間違いではないでしょう。SIM ロックをはずしてキャリアによる囲い込みをなくし、インセンティブをやめて適正な初期コストと通話料金というスタイルに変化するのもよいと思います。ただ、それによって携帯料金が「バカ安くなる」と期待をするのは、ちょっと甘いかもしれません(別にキャリアの味方じゃありませんよ)。
実のところ、SIM ロックを外した場合でも、キャリアがユーザーの初期コストを抑えて見せたいのであれば契約年数を設ければよいように思います(途中解約の場合は違約金をとる)。実際、Verison や Cingular のプランは1年縛りや2年縛りがあり、途中解約には$175の違約金が必要です。それに、SIM ロックを外して携帯の選択肢が増えるといっても、今、キャリアが提供しているサービスを使えない「別会社の携帯」に乗り換えられてしまう可能性は低いような気もします。
健全な携帯の発展を願って! (あー疲れた)
※さすがに分量が多かったので、どこかでポカミスがあるかもしれません。どうぞ、お手柔らかにご指摘ください。
※2007.3.9追記。ウィルコムを追加しました。