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IT業界のコメントマニアが始めるブログ。いつまで続くのか?

先のエントリ「諸悪の根源はレンタルCD?(←無理やり)」では、レンタルCDを悪者に仕立て上げようとしたわけですが、実際、レンタル CD というのは日本以外では聞かないサービスです。もちろん、日本の CD の値段が高いからレンタル CD もやむなしという話も聞くのですが、(一部の?例外を除けば)わずかな金額で借りた CD をリッピングしていつまでも聞ける、というのは、あまり自然な考え方ではないように思います(←違法という指摘ではありません。念のため)。

先に取り上げた lala.com についても、「Lala、インターネットラジオでCDスワッピングと販売を活性化」(TechCrunch)によれば、CD 交換時にリッピングした曲を削除しなければならないのは「大袈裟なようだが法的にはどうしても必要なこと」とあるので、そのような規約でなければビジネス上の問題が起きるという意味なのでしょう。日本で、「CD を買って、リッピングして、すぐに中古屋に売る」という人がそれほど多いとも思えませんが(中古屋で売却する値段は、相当低い額になるでしょうから)、そのような仕組みが私的複製の範囲になるというのは、不思議だというのが正直なところです。

では、その「高い」と言われる、日本の CD は“どの程度”高いものなのでしょう。「日本の携帯電話料金はどれくらい高いのか」に続く第2弾として、CD の価格を比較してみました。

国際的な比較のために、今回は洋楽アルバムを取り上げました。具体的にはオリコンの洋楽アルバム・週間ランキングのベスト10を題材にしました。価格は日本の amazon に記載されていたもので、日本版と輸入版を並べてみました。結果は以下のとおりです。なお、日本版は、ボーナストラックがあったり、歌詞カードが付いていたりするということもあるでしょうが、ここでは無視しています。

順位日本版・アルバム名アーティスト価格輸入版・アルバム名アーティスト価格
1 ミニッツ・トゥ・ミッドナイト リンキン・パーク \2,580 Minutes to Midnight Linkin Park \1,626
2 ベスト・ダム・シング アヴリル・ラヴィーン \2,300 The Best Damn Thing Avril Lavigne \1,731
3 イット・ウォント・ビー・スーン・ビフォー・ロング マルーン5 \2,200 It Won't Be Soon Before Long Maroon 5 \1,980
4 ビコーズ・オブ・ユー(期間限定特別価格) Ne-Yo \1,980 Because of You Ne-Yo \1,580
5 ダンスホール・ラヴァーズ・ベスト オムニバス \2,280 N/A
6 ブラック・レイン オジー・オズボーン \2,520 Black Rain Ozzy Osbourne \2,085
7 ウニア~夢記 ソナタ・アークティカ \2,600 Unia Sonata Arctica \2,379
8 ライヴ・ベック’06 ジェフ・ベック \2,520 N/A
9 ディスコ R35 オムニバス \3,400 N/A
10 ポエツ・ライフ ティム・アームストロング \2,520 A Poet's Life Tim Armstrong \1,728

一目瞭然ですね。日本オリジナルのものを除いた7本に限ると、日本版の平均価格は\2,386、輸入版は\1,873と、輸入版の方が2割以上安くなっています。もちろん、例によって、これで終わるわけではありません。

今度は、米国 amazon の値段を調べてみることにしましょう。米国 amazon で CD を探したことのある方はお気づきでしょうが、いわゆる定価(参考価格)と実売価格が並んで表示されています。なお、$1=120円で換算しています。

TitleArtistList Price(US$)Price(US$)List Price(Yen)Price(Yen)
Minutes to Midnight Linkin Park $18.98 $11.99 \2,277 \1,438
The Best Damn Thing Avril Lavigne $18.98 $10.99 \2,277 \1,318
It Won't Be Soon Before Long Maroon 5 $18.98 $9.99 \2,277 \1,198
Because of You Ne-Yo $13.98 $13.98 \1,677 \1,677
Dancehall Loves Best Special DJ Mix [IMPORT] Various Artists $24.99 $24.99 \2,998 \2,998
Black Rain Ozzy Osbourne $18.98 $13.97 \2,277 \1,676
Unia Sonata Arctica $16.98 $12.99 \2,037 \1,558
Official Bootleg USA '06 [IMPORT] Jeff Beck $34.99 $34.99 \4,198 \4,198
Super Disco Hits [IMPORT] Various Artists $36.49 $36.49 \4,378 \4,378
A Poet's Life Tim Armstrong $13.98 $11.97 \1,677 \1,436

List Price(いわゆるメーカー参考価格)と Price(実売価格)に注目すると、かなり差があることがわかります。日本の amazon における輸入価格は、米国での実売価格に少し上乗せした値段が付けられているようです。参考価格ベースで考えると、日本版の価格ともあまり差がなくなります。要するに日本では CD には再販制度が適用されていて「安売り」が起きていないということのようです。さらに、池田信夫氏の最近のエントリ「タクシー「過当競争」の嘘」のコメントで指摘されていた「旅客運送サービスに係る内外価格差調査結果(概要)」に書かれていた「購買力平価換算」(OECDによる2005年時点の購買力平価推定値)によれば、1ドル=148.30円(2005年時点) という数字もあります。簡単に言えば「高いのは CD だけじゃない」というわけで、この数字を使うと日本円換算額はもっと高くなります。

もちろん、現実に利用者が購入するのは参考価格ではなく実売価格ですので、これは机上の計算に過ぎません。日本でレコード会社が再販制度を守りたがっているのも事実でしょう。一方、聞くところによると、タワーレコード(TowerRecords)が倒産したのは、デジタル音楽の普及が理由ではなく、WAL-MART のような量販店が CD を「客寄せのために」採算度外視で安売りするため(他の商品で利益を埋め合わせる)なのだそうです。これでは CD を専業としても太刀打ちできないでしょう。「アメリカで CD が安い」のは、再販制度がない上に量販店の戦略が絡んでいる、という可能性が高いように思います。

さて、アメリカ以外ではどうでしょうか。フランスとドイツについて、それぞれの amazon を参考にして、価格を並べてみましょう。(1ユーロ=160円で換算しています)※ちなみに、税金のことまでは考えていません。

TitleArtistUS Price(US$)US Price(Yen)DE Price(EUR)DE Price(Yen)FR Price(EUR)FR Price(Yen)輸入版価格(Yen)日本版価格(Yen)
Minutes to Midnight Linkin Park $11.99 \1,438 €13.95 \2,232 €16.15 \2,584 \1,626 \2,580
The Best Damn Thing Avril Lavigne $10.99 \1,318 €13.95 \2,232 €14.99 \2,398 \1,731 \2,300
It Won't Be Soon Before Long Maroon 5 $9.99 \1,198 €14.95 \2,392 €14.95 \2,392 \1,980 \2,200
Because of You Ne-Yo $13.98 \1,677 €12.97 \2,075 €14.23 \2,276 \1,580 \1,980
Dancehall Loves Best Special DJ Mix [IMPORT] Various Artists $24.99 \2,998 N/A N/A N/A N/A N/A \2,280
Black Rain Ozzy Osbourne $13.97 \1,676 €14.95 \2,392 €16.64 \2,662 \2,085 \2,520
Unia Sonata Arctica $12.99 \1,558 €16.89 \2,702 €13.72 \2,195 \2,379 \2,600
Official Bootleg USA '06 [IMPORT] Jeff Beck $34.99 \4,198 N/A N/A N/A N/A N/A \2,520
Super Disco Hits [IMPORT] Various Artists $36.49 \4,378 N/A N/A N/A N/A N/A \3,400
A Poet's Life Tim Armstrong $11.97 \1,436 €10.95 \1,752 €9.56 \1,529 \1,728 \2,520

これを見る限り、フランスやドイツと比べると、日本の CD の値段は、それほど高いわけではないと言えそうです。また、日本では、輸入版はずっと安く売られているのですが、ドイツやフランスでは、こうした輸入版がそれなりの値段で売られていることもあるようです(すべてではありませんが、割り振られているコードが同じようです)。また、日本オリジナルのものを海外で輸入すると、ずっと割高になっていることもわかります。

さて、ここに挙げた数字を見て、それでも日本は海外に比べて CD の値段がずっと高いのだと主張できるでしょうか。また、それは日本だけ CD レンタルを実施すべきだというほどの理由になっているでしょうか。

※追記。洋楽アルバムのトップランキングが、すべてのジャンルを代表するわけではないかもしれません。(この1枚に限っては、という話ではなく)異なる結果が導かれる資料があれば、ご指摘ください。日本のレコード売り上げは世界第2位だそうで、ドイツやフランスに比べて市場が大きいというご指摘はあるかもしれませんが、それはアメリカでの価格が安いこと、国内アーティストの CD が高めに設定されていることの理由付けになってしまうと思います。

mohno

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コメント
疑問 2007/05/31 08:55

欧州諸国の付加価値税はとても高いですよ。税抜き価格で比較すべきでしょうね。

nanasi 2007/05/31 09:35

レンタルされるCDは洋楽ではなく邦楽CDが中心だと思います。僕はレンタルサービスは使わないので、今はどうか知りませんが、洋楽は発売後1年くらいはレンタル禁止だったはずです。
同じようなジャンルの人気アーティストの比較でも良しとすれば、邦楽は3,200円前後の値付けで、洋楽米盤のほぼ倍という異常さ。この辺の価格維持と歌手の人気維持のためにレンタル制度は日本市場において意義深いのかも知れません。

ooki 2007/05/31 17:45

ご無沙汰しています。
参考までに、中国では25元(約400円)~30元(約480円)程度、と異常な安さです。
中国ではCDはあくまでもセールスツールであって、イベントで稼いでいくという手法がとられているようです。
日本の高さも大変なものですが、この安さもかなりビックリしました。

mohno 2007/05/31 18:33

皆様、コメントありがとうございます。
疑問さん、付加価値税(VAT)については意識していましたが(注釈を付けたのもそのため)、結局購入者が支払わねばならない金額ではあるので、あえてそのままで比較しました。検索してみたところ、ドイツ=16%、フランス=20%くらいのようなので、日本とは10~15%くらいの違いがあることになりますね。表に当てはめてみると、日本における輸入版の値段よりだいぶ高く、日本版より少し安いくらいになるでしょうか。海外では(日本と違って)輸入版が安くないですね。
nanasi さん、国内アーティストの方が高めではありますね。ただ、やはり参考価格ベースだと(2倍というほどの)大きな開きにはなりませんし、購買力平価($1=約150円)で換算すると、ますます差が縮まります。興味深かったのは、たしか洋楽アルバムだったと思いますが、DVD 付の方が DVD 無しのものより安いというものがありました。純粋な CD じゃないので、再販の力が及ばないのでしょうか。再販制度を廃止させてみたいものです。
ooki さん、たぶん中国では他のものも安いんじゃないでしょうか。wikipedia によれば購買力平価が1元=74.42円(2003年度)となっているので、25~30元は\1,860~2,230くらいに相当することになります。
さて、本日の昼休みに TSUTAYA の実店舗を訪れてみました。古い作品も含めた膨大な品揃えにちょっと圧倒されたこともありますが、ちょっと(だいぶ)意識が変わってきました。少なくとも国内のレコード会社はレンタルを認めて、割と短い期間でレンタル業者に CD をまわしているのですよね。対価が安いとはいえ、コピー(リッピング)されるのが嫌なら CCCD をかければよいわけです。私は、CCCD のかかった CD を買う気にはなりませんが、世の中には借りてみるくらいの人はいるかもしれません。
↓こんなエントリを書いていながら、“どうあるべきか”にこだわり過ぎていた気がしており、ちょっと反省しています。
http://blogs.itmedia.co.jp/mohno/2007/02/post_24f7.html
もっとも、「レンタル CD」のために公衆用自動複製装置が禁止されているといった副作用はあると思うので、もろ手を挙げて賛成するということは、まだしばらくないでしょうけど。

mohno 2007/05/31 18:50

もうひとつ思ったこととして、かつては高速ダビング機や CD 複製機(公衆用自動複製機器)を店頭に置くことが有意義だったかもしれませんが(だから禁止された)、今では“私用”自動複製機器(ノートパソコンとか)が簡単に持ち歩けますから、公衆用機器を禁じることに、どれだけ意味があるのかわかりませんね。


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大野 元久

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平成元年にIT業界に入って以来、開発ツールに関わり、主にマーケティング中心に活動してきました。現在はフリーランス。

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