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英語でコーヒータイム(22) 「ゼロの焦点」「踊る大捜査線」

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太平洋線の機内で、『ゼロの焦点』を見ました。
今回上映されていたのは2009年制作の東宝版。戦後の混乱が落ち着き始めた頃を描いた作品ですが、服装といい自動車といい電話機といい照明といい、当時の制作かと思うほどの演出で、主役の鵜原禎子役の広末涼子や室田佐知子役の中谷美紀がとても魅力的でした。

原作は、松本清張の同名の小説。私が初めてこの小説を読んだのは小学校高学年の時。(かなりませていたのかも知れませんね。) 新潮文庫でした。そしてこの本がきっかけで推理小説にはまり、松本清張全巻読破はもちろんのこと、エラリー・クイーン、E. S. ガードナー、アガサ・クリスティ、森村誠一などへ進んでいったのです。

まあ、そんなことはどうでも良いのですが、ここで気になったのはこの映画の英題、Zero Focus

普通、zero focus と言えば、「フォーカスしていない」 という意味です。
あれれ??? この題名はノーフォカース という意味ではないはず。

あらためて「ゼロの焦点」とはどういう意味だろうと日本語で考えてみました。

The focus (point) of zero?
Focus of zeros?
Ground zero?

本の題名だと思っているので、深くその題名の意味を考えたことはありませんでしたが、いざあらためて考えてみると、「ゼロの焦点」とはどういう意味だろう、まったく想像がつきません。

最初はこの小説「虚線」というタイトルで太陽に連載されていたのだそうです。
虚線は点線を指すというweblioの辞書もあるけれど、もっと仮想的な目に見えない線(virtual line) のようなニュアンスの方がしっくりきそう。
松本清張には「虚線の下絵」という小説もあります。彼の中ではこの「虚線」というのは何か独特な意味を持っていたのに違いありません。

虚線は英辞郎で引いても出てこないので、「虚数」から類推してみました。
虚数は imaginary number。実際に自然界には存在しない、あくまでも概念として存在する数です。

虚ろは、void(空洞)とかempty(空)というニュアンスがぴったり。けれどもそれはあくまでも空間(スペース)がそこに存在していて、その空間の中には何も無いという感じがします。
その感覚からすると、「虚ろな線」というのは、想像を働かせてその意味を考えざるを得ませんが。

「虚線」が「ゼロの焦点」に変わったということは、両者に類似性、共通性があるはず。
ということはやっぱり、「ゼロの焦点」は焦点が無いということ?

でもこの物語は、捨てたはずの過去が運命のいたずらによって偶然、金沢で交差するというストーリーです。焦点が無いというのはやっぱりおかしい。Voidなfocus なら、まだ何となく受け入れられるような気がするのですけれど。

東京に到着して以来、ずっと気になっているこのZero Focus。

そんな中、何気なく東京の街を歩いていたら、某コンビニの入り口に立ててあった「踊る大捜査線」の旗の文字が視界に飛び込んで来ました。

ああ、そういえば日本で大人気だったTV番組だなぁと思いながらも、「踊る大捜査線」の英訳は?とこれまた悩んでしまったのです。

踊るはdancing? あの「きもかわ」という奇妙なことばを流行らせたdancing baby?
この場合の「踊る」は活躍する(飛び跳ねる)という意味だと思うのです。

「大捜査線」はどうしましょう。
大はGreat? Greatは「華麗なるギャツビー」のように華麗なるという意味もあります。
捜査線の「線」は、Line? 

Lineのはずはないと思うと、元の日本語の意味をじっくりと考えてみるのですが、この捜査線があの捜査チームが活躍する前線を指しているのか、チームそのものを指しているのか、そもそもの日本語の意味、というよりもその意図を悩んでしまうのです。

Wikipedia(英語版)を探してみたら、Bayside Shakedown と完全に意訳されていました。
やっぱりね。Shakedownには徹底した捜査 (揺すって(shake)、払い出しする)みたいな意味がありますから、ピッタリかも知れません。

日本語の字面から、ピッタリのニュアンスを持つような英訳を考えるのは難しいなぁといつも思います。一度、和文英訳してから、日本語の意味を改めて日本語でよく考えて、それから英語的発想に基づき(英訳ではない)最初からそれに相当する英語での表現を考える、これがやっぱり自然な英語にする時の手法ではないかと思うこの頃です。









Bayside Shakedown

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