あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

育成部門⇒研修専門家にアウトソースというコースは有効なの?あるいは内製トレーニングを重視すると変わること

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企業の研修講師はほとんどやらないので、それほど詳しくないのだが、昨今の企業研修って、外部講師率が高くないですか?研修センターみたいな所に出入りすると、「少しカジュアルな格好をしたプロの研修講師みたいな人が得意げに話している+スーツを来た受講者たちが黙って聞いている」という構図がちらっと目に入る。

社外から有用な方法論やアイディアを教えてもらうのが無意味だとは流石に言わないけれども、どうしても「それを現場に適用するのは受講者の仕事」となってしまう。これ、ハードルがすごく高いんだよね。
自分だって教わったばかりで、必ずしも自信があるわけでも慣れているわけでもない仕事の仕方を、そのやり方を全く知らない人々の前で試すのは度胸がいる。特に上司がそのやり方に理解がない場合は最悪だ。


もしかしたら誰かを敵に回すような言い方になるのかもしれないけれども、

・現場から乖離した育成部門

・必要な研修を議論し、研修専門家にアウトソース

・現場から乖離した研修

・教わったことを現場で活かせない

という流れが、もう機能不全なんだと思う。

「ITをエンジニアに任せるな」という本で、

一部のIT部門は「IT購買部門」になってしまっている

と書いたけれども、それと同じ構図で、

一部の育成部門は「研修購買部門」になってしまっている

のではないか。


すごくシンプルな疑問がある。
「ある会社で社員の能力を高めたいと思ったら、その会社で一番能力が高い人に教わればいい」
と思うのだ。なぜ、こうなっていないのだろうか?
営業パーソンを育てたいなら、凄腕の営業に教わればいい。
経理マンを育てたいなら、経理の大ベテランに教わればいい。

なにがいいって、文脈がバッチリフィットしているから、すぐに適用できる。例えば、僕がたまにやる「業務改革の始め方」的なセミナーとかそこから本になった「業務改革の教科書」は、色んな人が「これを参考に、自分の会社で業務改革やってます」と言ってくれる。けれども、ぶっちゃけて言えば、この本が一番役に立つのはうちの社員のはずだ。ウチのプロジェクトはこのセミナーや本で前提としていることを満たしているから。他の人は多かれ少なかれ、「自社の事情に合わせるために微調整」が必要になる。

凄腕のベテランに学べ、といっても「OJTという名のもとに、現場にぶっこむ」という話だけをしている訳ではない。営業なり経理の世界で、自社で重要なことを整理し、言語化し、広く伝える場、つまり研修会を社員が開けば良い。
前にお客さんの会議室で「○○流、新規法人のくどき方!」みたいな研修を課長級の営業さんがやっているのを見かけたけど、そういうイメージだ。これが企業研修の大本命であるのが普通なのでは??

ナレッジを言語化し分かりやすく伝えるなんて、現場の人には難しい、という意見もあるだろう。だが、元々それは日本企業が得意としていたはずのことだ。むかし読んで感動した野中郁次郎の「知識創造企業」にはそんなエピソードしか書いてなかった気がする。難しく言うと「暗黙知の形式化」ですかね。

別にシンクタンクだのコンサルティングファームに限らず、このブログを読んでいる人は、なんらかの知的な仕事をしていることだろう。そうだとしたら、自社で自分がやっている仕事のノウハウを言語化し、研修に自社で落とし込む能力は必須なはずだ。知的職業についている人が、知識加工をできなくてどうする。

プロの研修講師みたいに、かっこよくなくていい。プレゼンがうまい必要も、めんどくさい受講者を言いくるめる技も、飽きずに受けてもらうためのギミックも必要ない。なぜなら、自社の業務で実績をあげているやり方を是非学びたい!という受講者しか受けにこないから。
そして、本当に自社の業務や戦略や組織風土に地に足つけた内容であれば、多少、伝達の仕方が稚拙でも、育成効果は上がる。


さて、一度そうやって「研修は内製が一番!」というパラダイムにシフトすると、すぐさま変えるべきことが2つある。

まずは、育成部門の役割は変わる。
もし「ナレッジを自分で言語化できる現場社員」が多い会社なら、育成部門はコーディネーターだけでよくなる。つまり、どんなナレッジのニーズがあるか、誰が教えられるか、などを把握して、マッチングする仕事。例えばうちの会社の育成部門であるL&D(Learning & Development)はそれをやっている。

もし、「営業マンとしての自分の凄さを言語化できるなんて、そんなスーパーマンはウチにはいませんよ」ということであれば、現場のプロからナレッジを引き出せるファシリテーター役が、育成部門の仕事になる。

例えば、僕はいまある社内トレーニングのシリーズを担当していて「僕自身は苦手なので語れないことを、社内のエキスパートに語らせる」ということをやっている。僕は育成部門というよりも趣味としてやっているのだが、まあ、これを育成部門の人がやっても良いはずだ。


もう一つ変わるべきは、社員に対する評価だ。
「自分がやっている仕事のナレッジを自分で言語化できる現場社員」を、今よりずっと高く評価すべきだ。自分一人の生産性だけでなく、組織全体の生産性を引き上げているのだから。そういう人は、部下の育成能力も高く、組織全体のパフォーマンスを高めるのも得意なので、バンバン管理職に引き上げれば良い。
オフィシャルな人事評価制度はもちろんこういった要素を反映させるべきだし、それよりも「こういうことができる社員はカッコいい。これができて一人前」という文化を作るのも大事なことだ。育成は人参ドリブンよりもカルチャードリブンの方が絶対うまくいく。


ということで、ようやく育成に関する本を書き始めたので、企業での育成に関する日頃の疑問を吐き出してみた。



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