あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

僕ららしいインターン、あるいは、僕ららしい社会貢献

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★なんちゃってインターンはウンザリだ

今年もインターンシップとして、学生諸君に1週間ケンブリッジに来てもらった。
インターンを始めてから数年経つが、その間ずっと、僕らのテーマは「なんちゃってコンサルティング体験会からの脱出」だ。

「インターンと称して学生さんを集め、普段の仕事ではやりもしないワークショップ形式の企画立案の真似事をやってもらって、いっちょ上がり」みたいなインチキインターンが世の中にはたくさんある。
場を仕切っているのは社員さんではなく、「インターン運営代行会社」だったりして、もうそうなるとその会社の何を体験することになるのだろうか??


僕らは本業がコンサルティングなので、ワークショップや企画立案は普段の仕事そのものだし、もちろんファシリテーターは社員がつとめる。それにも関わらず、インターンをやり始めた当初は、この手のインチキインターンに近い場しか作れなかった。偽物の体験会というか。

「インターン用のワークショップを無理やり設計するくらいなら、いっそのこと、お客さんと一緒にやっているプロジェクトの現場に放り込んだほうがいいんじゃないの?」という議論は何度もしたが、流石に足手まといになりすぎる。お客さんの利益にならないことはすべきではない、という理由で見送られてきた。


そういう手探りのなか、去年のインターンでは僕ら自身がクライアントになって、僕らの経営課題を解決するコンサルティングを学生さんたちに依頼した。

この時の提案を実行してかなり効果が出ているから、インターンにかけた金銭的、時間的コストは元をとった。
しかもその時のインターン学生が入社してくれることにもなり、ようやく「僕ららしいインターン」に手応えを感じ始めた。



★NPOの経営課題に取り組む
さて今年のインターンは、さらに僕らの本業に近いかたちでやることにした。

「発達わんぱく会」というNPO法人がある。発達障害の子供や家族を支援している。

縁あって、今回のインターンでは彼らの経営課題の解決支援をすることにした。
もちろんお代はいただかない。逆に、NPO経営で忙しいところ、時間を割いてくださったわんぱく会の皆さんには感謝感謝である。学生中心のインターンで成果が出せるかは、はっきり言って出たとこ勝負な訳だから。


期間は1週間。
「学生4,5名+プロジェクトマネージャー役としてのケンブリッジの若手コンサルタント」がチーム構成で、全部で4チーム。通常のコンサルティングワークと同じく、まずはチームが速やかに力を発揮するための「ノーミング」と呼んでいるミーティングからスタート。

NPO法人の概要をお話いただき、おおまかな経営課題がチームに割り振られ、詳細ヒアリング、施策立案・・。と普段のコンサルティングワークそのものだ。

さくっとプロトタイプを作って想定ユーザーに見せに行った、学生らしいフットワークのチーム。
わんぱく会が普段大事にしていることの真逆のコンセプトを打ち出すチーム。
寄付金を集めるためのアイディアを、数で勝負!とばかりに100個くらい出したチーム。
「こうやれば目的達成できます」とシミュレーションしてみせるチーム。
学生らしく「大学とのコラボの余地がこんなにあります」と説明するチーム。

僕は仕事の関係から、最後の発表会しか参加できなかったのだが、1週間、とても真剣に取り組んでくれたのがよく伝わってきた。
「来週からすぐに使います」「スタッフさんに見せたら歓声が上がった」という話も出ていたしね。

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★コンサルティングをしてもらうことの意味
各チームの発表を聞いて、わんぱく会理事長の小田さんが印象的なことを言っていた。
「提案内容には、わんぱく会の仲間が嫌悪感/拒否感を示したプランも含まれていた。ただし、これを咀嚼して、自分たちの力に変えられるかどうか、試されているのかもしれない」

去年、僕ら自身がクライアントになった際にも感じたのだが、こういう外部支援を受けて一番有益なのは、「自分たちでは考えもしなかった視点」から提言してもらうことだ。
自分たちの価値観や思い込み、組織の論理の外側からの提言には、それだけで価値がある。学生さんは、その手の「組織の論理」に普段は浸かっていないだけに、そういう意見を言いやすい。

また、こういうコンサルティングを受けることは「中々着手できなかった、変革の背中を押してもらう」という効果もある。
なんとなく問題だと思っていても、忙しかったり、施策の有効性がピンとこなくて放っておくケースは多いだろう。特に、NPOはどこも人材不足だから。
そういう中で学生さんたちが、状況分析をしたり、アイディア出しをしてくれる。時には、プロトタイプまで作ってくれる。これが、本腰を入れて解決するきっかけになる。

来年以降のインターンはまだ未定だけれども、多分今年の形を継承・発展させていくと思う。
「ウチでもインターン・コンサルティングを受けたい」というNPOがいたら、連絡ください。

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★就職活動、採用活動としての意味

これまで何度もこのブログで書いているように、学生さんが入社前に「その会社の仕事の実態」を想像するのは本当に難しいことだと思う。
僕らも、仕事のやりがいについて説明しようと試みてきたが、はっきり言って全然伝わっている気がしない。僕自身も会社説明会でプレゼンすることは多いが、なんかポカンとしていたり、後で聞いても全然印象に残っていなかったり。自分のプレゼン力の至らなさに愕然とする。

はっきり言って、営業局面でおじさま相手にケンブリッジの価値を分かってもらう方が、遥かに簡単だ(彼らは実際に困難に直面しているし、僕らがその道のプロだということは直感的に分かるから)。
それに比べて学生さんは、どういうことを理不尽に感じ、どういう喜びがあるのか、想像しにくい(想像には材料が必要なのに、学生さんは本格的に仕事をしたことがないから)。


でも、なんとかして僕らの仕事のやりがいとか面白さは伝えたい。
「そもそも何について考えたらいいのかすら分からない」という手探り感とか無力感。
仲間とガチで議論するなかで、「あ、実はこうかも」と見えてくる手応え。
「これなら、お客さんのビジネスがすごく良くなるんじゃないか?」みたいなワクワク感。
得意なことを補完しあって、チームが機能した時の万能感。
目の前のお客さんに喜んでもらえる、サービス業としての単純な嬉しさ。

わんぱく会にクライアントになっていただき、真剣に課題解決に取り組む場を今回つくることができた。これまでのインターンに比べて、普段の仕事にかなり近い。
だから、こういう感覚を少しは味わってもらえたのではないだろうか。



★社会貢献としての意味
ウチの会社も「社会貢献する会社でありたい」という考えの社員は多い。毎年小額ながら、会社から寄付金を出してもいる。
でも僕自身は、それに対する考えは少し微妙だ。

・寄付はパーソナルな活動だから、会社からというよりは、個人としてした方がいい(僕はそうしている)
・会社として社会貢献するなら、お金ではなく、得意なこと(変革のファシリテーション)で貢献したい
・でも現実問題として、うまく支援の枠組みを作るのは簡単ではないな・・
というモヤモヤをずっと感じている。

今回、1週間限定とはいえ、僕ららしい社会貢献の形が見つかった気がする。


こうして、今年のインターンシップは、わんぱく会にとっても、ケンブリッジにとっても、もちろん参加してくれた学生さんにとっても「三方良し」になったと思う。

ちなみに、インターンに参加してもらうNPOがわんぱく会だったのは、ケンブリッジOBがわんぱく会に転職した、という縁があったからだ。
彼はコンサルタントとして頭角を現しつつあったので、転職の話を聞いた時にはとても残念だった。
けれども、彼がつなぎ役になって、今回の企画が実現した。
こういうのは、なんかいいよね。

***********2016/08/23追記

お世話になった、わんぱく会の小田さんからコメントをいただきました。
コメント欄を読まない方もいらっしゃると思うので、本文に転載します。

プロジェクトマネージャー(各チームに参加した、ケンブリッジの若手社員)を褒めてくださっていて、僕も誇らしいです。どんな仕事であれ、成功のために知恵を絞るのが僕らのカルチャーなので、その辺も学生さんに伝わってたらいいけれど。

*****
白川さん、大変お世話になりました。発達わんぱく会の小田知宏です。

4つのテーマすべてに対して、私たちでは想像もできなかった提案を頂きました。
期待以上の成果に正直驚いています。能力と意欲が高い優秀な学生さんだったと思います。同時に、4チームを支えた4人のプロジェクトマネージャーの「情熱」が半端なかったことが、成果につながったと思います。

あるプロジェクトマネージャーからのメールを以下に転記します。
「学生の皆さんの力をお借りしながら、少しでも良いものに仕上げるべく、最後まで頑張っていきたいと思います。」
インターンのファシリテーターの域を越えています。
私たちNPOに対し、クライアントとして本気で価値を提供しようと脳みその汗をかいてくれたんだと思います。このような機会を頂いた、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズさんに心より感謝します!
そして来年も是非ともお願いします。

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コメント

白川さん、大変お世話になりました。発達わんぱく会の小田知宏です。4つのテーマすべてに対して、私たちでは想像もできなかった提案を頂きました。期待以上の成果に正直驚いています。能力と意欲が高い優秀な学生さんだったと思います。同時に、4チームを支えた4人のプロジェクトマネージャーの「情熱」が半端なかったことが、成果につながったと思います。あるプロジェクトマネージャーからのメールを以下に転記します。
「学生の皆さんの力をお借りしながら、少しでも良いものに仕上げるべく、最後まで頑張っていきたいと思います。」
インターンのファシリテーターの域を越えています。私たちNPOに対し、クライアントとして本気で価値を提供しようと脳みその汗をかいてくれたんだと思います。このような機会を頂いた、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズさんに心より感謝します!そして来年も是非ともお願いします。

白川

小田さん、コメントありがとうございます。
僕らとしても初めてのチャレンジだったので、「無駄な時間使っちゃった・・」とクライアントであるわんぱく会の方に思われないか、ちょっと不安でしたが、良かったです。本当にお世話になりました。

こんにちは。わんぱく会への転職を考えて、何度か会社訪問した者です。その時はかなわなかったけれど、その後もわんぱく会のことは気になっていました。主催者が中心になって成長を目指す外部研修を実施しているのを知り、さすがだと思いました。そこまでやっているN P Oはまだほとんどなくて、善意とやる気だけで社会貢献が成立するのか半信半疑でしたので。

白川

小川さん、こんにちは。
そうなんです。NPOと言っても情熱と根性だけだと、本当に成し遂げるのは難しいと思うんですよ。わんぱく会は、その辺、しっかり人材を集め、打つべき手を打って・・と、地に足をつけてやっていこう、という感じが伝わってきますね。

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