あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

会社を選ぶときに気にすべきたった一つのこと、あるいは会社からの約束

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前回、企業の将来性なんて見極め不可能でしょ、と書いた。じゃあ、どうやって会社を選ぶか。

★会社の規模の問題ではない
安定性とか成長性とか給与が高いとかって、「誰にとっても価値がある指標」である。
あなた以外の誰だって、お給料は高い方が良いし、会社はつぶれない方が良いし、成長する会社で働いた方が前向きに仕事ができる。

しかし、企業戦略でも個人のキャリア戦略でも、この「誰もが良いと思うこと」を目指すのは危険な兆候だ。
例えば、音楽を聴くときに音質は良いが良い。もちろん価格は安ければ安い方がいい。
だからひたすら音が綺麗で安い機械を作ろうとする。電機メーカー全てが。目指すゴールが同じだから、競争は本当に熾烈だ。
そうこうしているうちに、iPodの様な「音質が良い」「安い」とは全く別の価値で勝負する商品が出て、競争の土俵自体がひっくり返ってしまうことが、たまに起こる。

あなたが就職先に安定性やら給与の高さを求めるのも、それにちょっと似ていないだろうか?
それよりも、自分独自のモノサシを使って判断する方が、有効な作戦のはずだ。個人の価値基準は本当は企業よりももっとバラバラなはずだし、おのずと志望企業もばらけるはずなのだ。

注意して欲しいのは、規模が大きくて安定している所はダメ、と言っている訳ではないってこと。最近は以前にくらべ「大企業はダメだ。ベンチャーに行け」という論調が、特にインターネットの記事を中心に見られるようになった。でも、もちろん逆を向けばOK、と言うほど単純ではない。

僕自信は小さい会社にしか所属したことがない。一方、僕らのお客さんはほとんど大企業だから、プロジェクトで苦楽を共にするのは大企業の社員の方が多い。

日々一緒にお仕事していて感じるのは、
・小さい会社が故の苦労を味わったりへこたれている人がいる
・小さい会社だからこそ挑戦できる、新しいことに頑張っている人がいる
・大企業でつまんなさそうな仕事している人がいる
・大企業で大きい仕事を任されてイキイキ頑張っている人もいる
という当たり前のこと。
つまり、「企業規模と活き活き度には明確な相関関係は見いだせない」と言い切っちゃって良いんじゃないだろうか。

★楽しいか、価値観と合うか、成長できるか
人と同じではない、自分独自のモノサシとしてオススメしたいのが、以下の基準だ。

・あなたにとって、最高のプロジェクト環境を用意できる会社か?
・能力さえあれば、最高のプロジェクトを自分の手で作れる会社か?

要は、「その会社に入って、エキサイティングなプロジェクトに関われるか?」ということだ。
自分がヒヨッコのうちは、誰かがリードしているプロジェクトに入れてもらえるか。実力が付いてきたら、自分でやりたいプロジェクトを立ち上げられるか。
これをしっかり見極めできれば、少なくとも会社選びで後悔することはないはずだ。10年後も同じ会社にいるかどうかは保証できないけれども。

なぜプロジェクトなのだろうか。
僕の独断と偏見に満ちていることを承知で書くと、仕事で一番楽しいのがプロジェクトワークであり、仕事で一番成長できるのもプロジェクトワークだからだ。

今更ここで書くまでもないのだが、僕らホワイトカラーに期待されていることは「変化をリードすること、変化をマネージすること」である。
製造業を例に考えてみよう。
今まで100個作っていたものを明日も100個作る。明日は頑張って120個作る。今まで原価100円だったのを頑張って98円にする。こういう仕事はもはやホワイトカラーに(あまり)期待されていない。

こう言い直してもいい。部下から上がってきたものを承認するだけの管理職は必要とされていない。明日も、今日と同じであることを保証する仕事は期待されていない。
全く違った商品を作る。全く違った場所で作る。劇的に安く作るようにする。もはや作らなくても利益が上がるようにする。ものではない何か(ライフスタイル?サービス?つながり?)を提供することにする。
などなど、なんであれ、変化を起こし、会社を新しくしていくことが、ホワイトカラー、特に管理職クラスに期待される仕事だ。
そして変化させるにしたって、会社だから漫然と変化させるのではなく、ゴールと期限や予算枠を決めてとりくむ。
プロジェクトワークとは、まさにそういう仕事のことだ。

★プロジェクトは楽しいし、成長する

プロジェクトでは人は成長する。前例のないことをやり、変化を起こすのがプロジェクトなのだから、迷いながら自分で考え、判断していかなければプロジェクトは前に進まない。
だからプロジェクトで取り組むテーマが何であれ、プロジェクトで人は成長するのだ。

この辺りについては、先日再録した
「プロジェクトに成長サイクルを。あるいは仕事場での育成」
に詳しく書いたので、是非読んで欲しい。

「プロジェクトは楽しい!」というのは完全に僕の独断。
プロジェクトワークを経験している社会人の方に聞いても、答えは人それぞれだろう。「楽しいというか、辛かった」と答える人の方が多いかもしれない。

一緒にプロジェクトをやっている方に
「プロジェクトに入る前にやっていた、工場での経理の仕事とどっちが好きですか?」
と聞いたら、
「自分には工場で経理担当やっている方が向いているし、好きです。今はしんどいっす」
と返ってきたこともあった。
人それぞれ。これまで関わってきたプロジェクトにもよる、という所だろう。

ま、でも、僕は楽しいと思う。今までだれもやったことがないこと(≒プロジェクト)に取り組むのって、ワクワクするじゃないですか。
先ほど紹介した「大企業で、大きな仕事を任されて活き活きと頑張っている方」も、やっている仕事はプロジェクトだったりする。

だからちょっと無責任に「プロジェクトワークがたくさん経験できる会社の方が、楽しいし、やりがいがあるんじゃないかな?」と言っておこう。

★就職活動では?
「自分にとっての最高のプロジェクトを経験できるか」を確認する方法は色々とあるだろう。

大事なのは「たまたま面接の相手をしてくれた人が面白いプロジェクトをやっている」だけでなく「なぜその会社は構造的にナイスなプロジェクトがあるのか。起こせるのか」を確認することだ。ポイントは「構造的に」のところ。

社風の問題かもしれないし、属している業界が激変期なのかもしれない。
サントリーには創業者の「やってみなはれ」という言葉が残っているというが、こういうのもなかなかバカにならない。良い会社であるほど、そういう精神を大事にしている。
変化やチャレンジを恐れないか。言い出しっぺに組織として協力する雰囲気があるか。失敗に寛容か。色々な確度から聞いていけば、イメージがついてくるだろう。単に「御社の事業方針は」とか聞くよりは、ずっと生き生きした話が聞けると思う。

先日「働きがいのある会社」ランキング上位企業に勤める方とお話していたら、「ウチの会社は言い出しっぺに合わせて、組織を丸ごと一つ作ってしまうこともありますよ」と言っていた。こういうアグレッシブさも、あるに越したことはない。逆に、そこまでアグレッシブだと、自分はちょっと・・という判断もあって良い。

もちろん、プロジェクトであれば何でも良い、と言うわけではないだろう。自分がそこで一緒にチャレンジする姿を想像して、ワクワクしそうか、自分の直感も信じて欲しい。

★ちなみに、僕の会社では
僕はコンサルティング会社に勤めている。コンサルティング会社というのは、基本的に仕事の9割が、お客さんとのプロジェクトである。
だから、コンサルティング会社の生命線は「ワクワクするような、お客さんといいパートナーシップを築ける、最高のプロジェクトがたくさんあること」に尽きる。

個人的には、会社が社員に4つのことを提供するべきだと考えている。
というか、自分も含めた社員にこれを提供できるように、日々仕事をしている。

1)お給料を払うこと。
2)最高のプロジェクト経験を提供すること。
3)最高のチームメイトのみを採用すること。
4)創造性のじゃまをしないこと。

前回、今回を通してのまとめ
・会社の将来性は見極めがとても難しい
・それより、自分が成長でき、仕事を楽しめる会社を選ぼう
・そう言う会社を選ぶ時の視点として「ワクワクするプロジェクトに参加できるか」がオススメ
・どういうプロジェクトを「良いプロジェクト」と見なすかは、人それぞれ。あなた次第
今日はここまで。

Comment(4)

コメント

tanikaze

PJを「最後までやりきれる」会社がよいですね。結果、PJで「一芸が身につく」「引き出しが増える」につながる物語が最高。大きな会社だとPJの途中でも会社の都合で異動かかったりすることが多いようなので(あくまで経験則ですが)、「最後までやりきれる」確率の高い小さな会社のほうが、PJを通じた成長によりコミットできるのでは、と考えます

tanikazeさん、こんにちは。
「PJを最後までやりきれる会社か」は非常に大事だと思います。プロジェクトの成否にとってもお客さんにとっても社員にとっても。
ただ、会社の大小というより「最後までやりきることを、本当に大事だと思い、優先させているか」によって決まると思います。例えばウチの会社ですとサービスの特徴として「一貫性」を掲げてますが、そうでないコンサルティング会社の方が多いでしょうし・・。

あと、プロジェクトを最後まで、という以上に「保守フェーズに社員を塩漬け」の弊害が大きい気がしますね。これは顧客企業もSI会社も、会社によってはヒドイ場合が多いですね・・。

※「最高のチームメイトのみを採用すること。」は共感したので頂いちゃいました( ̄ー ̄)。それに向けて努力はしてますし。

木村祥久

提供するべきこととして「機会を均等に与える」かな。
これを守らないで成果を平等に評価しても意味がない。
そんな会社は後からボディブローのように効いてくる。
冷酒と親父の話と人事システムは後から効いてくる、だ。

木村さんこんにちは。
「最高のプロジェクトを」のなかに、「均等に」「惜しみなく」という要素があるわけですね。常に人材は不足しているので、惜しみなく、はできるとして「均等に」はかなり意識が必要でしょうか。

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