あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

本、家、会社、パッケージ、コンサルタントの究極の選び方、あるいはアンチクライマックスの重要性

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★本の選び方
時間がないときはamazonを使うが、本屋で本を選ぶ方が好きだ。
本を選ぶとき、「はじめに」とか目次は読まない。本の適当な所を開き、5行くらい読んでみる。それを何回か繰り返す。
それが良い読書体験だったら、買う。何箇所か開いても、面白い文章に巡り会えなかったら、どんなにタイトルが自分の関心に近くても、買わない。

多くの人が「はじめに」を読んで、買うか買わないかを決めるようだ。だが考えて欲しい。「はじめに」は著者が特別な気合を入れて書いた、特別な文章だ。いわばその本のエッセンスであり、クライマックスだ。そこが面白かったからといって、膨大な時間をその本に捧げる価値があるとは限らないではないか。クライマックスのあとのだらだらとした薄い文章を延々と読むはめになるかもしれない。

それよりも、本の途中、いわばアンチクライマックスな文章を自分が楽しめるならば、豊かな読書体験が約束されている。役に立つかどうかは知らんが、読み終わったあとに「あー、楽しかった」とは言えるだろう。


★就職先の選び方
就職活動中の学生さんに自分の会社について1時間話す機会があった。せっかく聞きに来てくれたのだから、自分達のことだけじゃなくて、「会社の選び方」も少しだけお話した。たくさんの企業とお付き合いしている先輩ヅラで。
その時に4つ挙げたうちの1つが「アンチクライマックスを想像して選べ」だった。

企業の説明会とか行くと、その会社のクライマックス的な瞬間ってたくさん聞かされると思うし、学生さんの方でも想像するだろう。
・プレゼンに勝ち抜いて商談を成功させる俺
・手がけた作品が高く評価されて喜んでいる俺
・スーツケース持って成田空港を飛び立つ俺
とか。ベタだけど。

でも、仕事の99%の時間って、そういうクライマックスではなくて、もっとアンチクライマックスな場面だ。
例えば僕の仕事でクライマックスというと、
・お客さんの社長に分かりやすいプレゼンテーションをして判断を促す
・お客さんに頼りにされ、感謝される
・プロジェクトが成功する
みたいな感じ。

そしてアンチクライマックスは、
・明日の会議の準備をしているが、プロジェクトマネージャーからダメ出しを喰らう
・会議で出たアイディアを整理するために、図表にまとめる
・仮説が正しいのか、データを分析して裏を取る
・プロジェクトのToDoリスト(やることリスト)をコツコツ作り、更新する
みたいな時間だ。

で、毎日ハッピーに過ごせる仕事を選ぶためには、「こういうアンチクライマックスを楽しめるのかな、俺?」を浮かれずに想像しなければならない。

コンサルティングの場合、サービス業だから目の前のお客さんから直に評価をもらい、成功を共に体験できるのは確かに大きな魅力だ。でも、その裏にある、成功させるための地味な時間を楽しんでやれるだろうか?
明日の会議で充実した議論をするための準備を楽しんでやれない人は、はっきり言って、ウチの会社でやっていくのは難しい。同様に、プロジェクトの厄介な課題を発見したことを喜び、「イヤー、勘弁してよ」とか言いながらイソイソと、またはニヤニヤと解決方法を考えるような人じゃないと、楽しんで仕事はできない。

アンチクライマックスを想像して判断しろ、というのはそういう意味だ。
もちろんコンサルティング以外の業界でも、それぞれなりのクライマックスとアンチクライマックスな時間があるだろう。アンチクライマックスをどれだけ緻密に、現実的に想像できるかが鍵だ。
どれだけ華々しい、例えばM&Aをやるような仕事であっても、その裏には膨大なExcelのシミュレーションシートとの格闘がある。法廷で火花を散らして勝負する弁護士だって、クライアントの膨大な文書を読み解いたり、打ち合わせの議事録をコツコツ書いたりするアンチクライマックスな時間が多いだろう。


★家の選び方
住む家を選ぶことは、一生にそう何度もあることではないだろう。僕はこれまで1回しかないし、もうないだろう。だが、家は長くお付き合いするものだ。当然、アンチクライマックスを基準に選ぶべきだ。

つまり、「友人たちを招いてパーティーする」といったクライマックスが楽しい家というよりは、「階段を上がりながら見る風景」「コーヒー飲みながら持ち帰り仕事をする時に座る場所」「子供がダイニングで宿題をする」とか、そういうアンチクライマックスが素敵な体験になりそうか?


★パッケージソフトの選び方
仕事の話に戻ろう。
システムを作る時に、パッケージ(SAPとかORACLEとかワークスが出しているような業務パッケージ)を使うことは多い。当然、どれを選ぶかは大変重要な決定になる。

その時に、パッケージ屋さんがやってくれる華やかなデモを見て決めてはいけない。必ず自分たちの業務シナリオを用意し、それに合わせたデモをやってもらうべきだ。
たとえば人事パッケージならば、「こんな風に最適な人材を採用し、最適なJobにアサインできます!グラフィックもこんなに綺麗に」みたいな、自社に合うか合わないか分からないような機能ではなく、「4/1の人事異動に向けて、事業部長クラスがまず案を作り・・」というような、常にやっているシナリオをデモしてもらう。つまりアンチクライマックスのシミュレーションである。


★コンサルタントの選び方
僕もコンサルタントだから、コンペに呼ばれることがある。
プロジェクトを始める前に、お客さんの社長や役員相手に「こんな感じに進めましょう」とプレゼンテーションする場だ。

でもさ、コンペでのプレゼンテーションって、典型的な「クライマックスだけを見て選んじゃう」パターンだよね。
あなたが雇いたいのは、プレゼンテーションの達人ですか?それともプロジェクトという辛く厳しい道を共に歩んでくれるパートナーですか?

だから選ばれる側としては、コンペの前にだいたい決めてもらう事を心がけている。
コンペの前に、これから一緒にプロジェクトをやる方々と、プロジェクトの進め方をみっちり議論する。ここでの議論の仕方は、プロジェクトが始まってからの僕らのスタイルと全く同じだ。
Icebreakerをやってリラックスしてから、僕らがたたき台を提示し、忌憚のない意見をもらいながら、共にブラッシュアップしていく。時にはその場で大胆に方向転換する。そうやってその場にいる誰もが「これでイケる」というプランを作り上げる。

そういうプロジェクトの日常、つまりアンチクライマックスを僕らと過ごすのは楽しいですか?これを繰り返していけば、うまくいきそうな気がしますか?ワクワクしますか?
Yesと思うならば、発注してください。もちろんNoと思うならば、発注しないでください。お互い不幸ですから・・。

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