あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

IT産業の構造的問題とかどうでもよくない?あるいは個人で自由に競争できる素晴らしさ

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ITエンジニアの多くは熱心なネットユーザーだから、ネットには「IT産業論」みたいな文章が溢れている。
大手SI企業を頂点とした下請け多重構造(ゼネコン構造)がおかしいとか。
若いうちからプロジェクト管理ばかりやらされてスキルがつかないとか。
自分を雇っている会社の担当者が無能な癖に指示がウザいとか。
今時〇〇をやらない某社は終わってるとか。

実に色んな意見があるけど、僕は、その手のマクロなIT産業論みたいなのにあまり興味が持てない。
正確に言うと、身近な産業だし、産業論自体は好きなので結構見聞きするけど、読んだあと「ま、どうでもいいんじゃね?」と常に思う。

というのは、「(広い意味での)IT産業って、人材の流動性が、日本としては稀なくらい高い」という特徴があり、マクロな産業構造がどんなにクソでも、ミクロ、つまり個人とか個々の会社としては、どうとでもやりようがあるからだ。


1)ITの世界では、能力差が露骨にわかる
2)ITの世界では、優秀な人材は常に不足している
3)ITの世界では、人材の流動性が高い(転職しやすい)

という条件が揃っている。
ITエンジニアとしてすごい人は、1週間一緒に働けば、すぐに分かる。
スーパーエンジニアでなかったとしても、「結構信頼できるエンジニアだよね」というのは、1ヶ月もあれば十分判断できる。
エンタープライズのアプリ開発屋でも、インフラ屋でも、Web屋でも、その点は変わらない。

そしてそういう人が、ゴロゴロ転がっている訳じゃないんだから、その人の今の立ち位置が派遣社員だろうが、5次請会社の社員だろうが、頼りにされ、丁重に扱われる。
僕も一緒に仕事をしてもらった協力会社の人に、「大変たよりになるので、予定外だけど、この仕事も引き続きお願いできるかな?」とか、「お客さんが頼りにしているから、僕らとの仕事は終わるけど、引き続き、直接契約したら?」と紹介したりする。
つまり、ゼネコン型の多重請負構造があり、当人が5次請けの会社で働いていたとしても、優秀でさえあれば、そこから抜け出すことはできるのだ。

その人が望めば転職もできるでしょう。
新規の案件で、もっとよい条件で仕事をすることもできるでしょう。
多重請負構造なんかクソ食らえ、と言ってそうじゃないタイプの仕事を模索するもよし。
当人が優秀で、優秀であることを他人に伝えられさえすれば、いかようにもできる。

だから、「IT産業の構造がいやだ」みたいな話は、新橋の焼き鳥屋で飲みながら話すネタとしてはいいのだけれども、エンジニア個人としては、どうでもいい話だ。

逆に、自分の境遇をIT産業の構造的な問題のせいにしている人は、言いにくいけれども、何かが足りないんじゃないだろうか。
エンジニアとしての実力なのか、それを仕事の現場で発揮するフットワークなのか、能力を分かってもらうコミュニケーション力なのか。何かが。

だから大事なのは、多少環境がアレであろうとも、言い訳せずに努力して能力をつけること。
それさえできれば、マクロ構造がどうであれ、個人としては楽しくてお給料もそれなりの仕事にチャレンジできる。
例えば、会社から事務処理ばかりやらさせて危機感があるなら、ITスキルの勉強をするなり、異動願や転職で環境変えるなりすればいい。
コーディングしたいのに下請け管理ばかりやらされて嫌ならば、隠れてものを作って発表すればいい。
または全く逆に、プロジェクト管理や業務コンサルティングのエキスパートになってもいい。
自分の興味と能力にしたがって、好きにすればいい。


ここまで、「エンジニア個人としてはどうとでもなるよね」という話をしたが、会社だって同じだ。
規模が小さくても独自の技術や製品を持っていれば、こういう面での流動性も高いから、どんどん採用してもらえる。(もちろん、独自の技術や製品が価値のあり、それを相手に伝えられれば、という話だが)
僕もコンサルタントとして、小さいけれども価値のある会社を、大企業に紹介することもよくある。


ITの世界は、日本でも稀なくらい、経済学で言うところの「完全市場」に近い。
競争はフェアで、良い物、市場に適応した物が生き残る。

エキサイティングな産業だと思うし、楽しいよね。


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