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「モモ」の時間泥棒に一番似ているもの、あるいは僕らが失ったスキマ時間はどこへ消えたのか

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年末は旅行に行っていたので、年が明けてからおもむろに大掃除をした。
大掃除の醍醐味といえば、片付けるべき本を読み始めてしまうことに尽きる。今年はミヒャエル・エンデの有名な童話「モモ」だった。

書かれたのは僕が生まれた頃。最初に読んだのは中1の頃だったか。


「モモ」は、小さな孤児の女の子(モモ)が、街にはびこる「時間泥棒」に奪われた時間を取り返す物語だ。
時間泥棒達は、灰色のスーツを来て、灰色のタバコを吸う、灰色の顔色をした個性のない男たちだ。「時間貯蓄銀行」の銀行員だと名乗る。

いつの間にか人々のそばにやってきて、
「犬の散歩に使う時間、ムダじゃないですか?」
「無駄口叩かなければ、もっと早く散髪できるんじゃないですか?」
「両親の看病に使う時間、ムダじゃないですか?」
「そうして浮いた時間をウチの銀行に貯金しませんか?」
と勧めて回る。

でも、そうやって預けた時間は、永遠に引き出せない。預けた時間はタバコに形を変え、時間泥棒達のエネルギー源になってしまうのだから。
一見ムダな時間を奪われた人々は、友人と語り合う時間や物思いに耽る時間をなくし、あくせくと働くだけの生活を送るようになる。それは孤児であるモモにとって、話し相手が1人もいなくなってしまうことを意味していた・・。


さて。童話を大人になってから読み返すと、やはり色々と考えてしまう。

「僕の生活で一番時間泥棒に近いのは、スマホである」

というのが、今回一番心に残ったことだ。1973年に本が書かれた頃にはもちろんスマホはない。パソコンも携帯も普及していないない。でも、この本に書かれた時間泥棒の男たちは、スマホのことだとしか思えない。


スマホは便利だ。そしてスマホはみんなのブログやツイッターを通じて、様々な刺激を届けてくれる。
 

そして何より手軽だ。パソコンと違って、数秒のスキマ時間があれば見られる。
僕はエレベーターを待つ時、必ずスマホを手にする。多分20秒くらいだ。
トイレに立つ時、必ずスマホを手にする。男子用便器の前で、立ったまま見ることもある(失礼!)。
歩きスマホもする。小学生の時、本を読みながら下校していたんだから、歩きスマホはむしろ僕にとって自然なことだ(僕の街には犬の糞がやたら落ちていたので、本を読みながらでも、とっさに避けるテクニックがついた)。


こうして知らず知らずのうちに、僕には「何もしていない時間」がほとんどなくなった。これまでムダにしていたスキマ時間を有効活用しているのだから、一見いいことに見える。
でも多分違う。スマホを使う僕は、時間泥棒にスキマ時間を預けた人々と同じなのだ。


夜、布団に入ってからもスマホを見る。
朝、スマホのアラームでおきて、そのままスマホを見る。
こうして家族との会話が減る。
時間泥棒にスキマ時間を預けた人々のように。


電車でもツイッターやブログをチェックする。大好きな本を読む時間がめっきり減った。頭では分かっているんだ。ブログで細切れの情報を手にするよりも、1冊の本をじっくり読み通したほうが、ずっと楽しいということを。


スマホは優秀だしフレンドリーだ。だが、それは時間泥棒だって同じだ。彼らも優秀で、親しげに人々に近づく。
僕は今、こんなスマホケースを使っている。「フレデリック」という、僕が一番好きな絵本に出てくるネズミがデザインされている。

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でも、フレデリックはスマホの外観としては、フレンドリーに過ぎる。時間泥棒を相手に、心を許しすぎだ。

インターネットを検索すると(そう、スマホですぐに検索できる)、こんなケースがあるみたいだ。僕はタバコを吸わないけれど、こんな感じのを買おうかと思う。

スマホに預けたスキマ時間は、時間泥棒のタバコになってしまうことを思い出すために。 

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すっかりブログの更新をサボっているうちに、この本も順調に売れているようで、先日早くも3刷まで行きました。
いや、ちょっと固い本だしセンセーショナルなタイトルでもないので、ぶっちゃけこんなに売れないと思ってました。
1回も増刷がかからないで消えていく本が多い中で、本当にありがたいことです。
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少し前に日経新聞の1面下に広告も出してもらいました。マニアックな出版社のマニアックな本が載るコーナーというイメージがありますけど、売上的にはそれなりに効果があったようです。

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