難解な本と感じるのは、自分の能力が低いから?
先日、娘の高校入学式で、校長先生の式辞でメモできなかったところがあり、それを質問したところ、すぐに丁寧な回答をいただき、さらに、メールで小林秀雄の言葉のことなどを教えていただきました。
父に小林秀雄のことを聞いてみたところ、「買った本は難しくてよくわからない」と返事がきたので、どのくらい分からないのか、「考えるヒント」という本を買ってみました。
読み始めてみたのですが、確かに難しい本です。なぜ難しいかというと、たとえばソクラテス・プラトンの話題が、知っていて当たり前という感じに出てきて、さらに使っている日本語があまりにも普段使っていない言葉ばかり、というあたりでしょうか。
合宿から戻ってきた娘(ちなみに、メモの重要性・練習はたっぷり合宿で教わってきたようです)に、「ソクラテスは知っているか?」と尋ねたところ、「知らない」と言われ、「いや、何を言っていたかはともかく、古代ギリシャの哲学者ということくらいは常識だろう」と言ったのですが、聞いたこともないらしいのでした。そもそも「哲学」とはなんだ?と聞いても分からないようです。
もっとも、私にしても、ソクラテスやプラトン、アリストテレスなどの名前は知っていても、いったい彼らが何を言っていたのかはすっかり忘れていました。
便利な世の中で、「ソクラテス」とググってみれば、一瞬にしてソクラテスの情報が山のように出てくるので、調べてみると、ようするに、「自分がバカだと言うことを知っている人が本当は賢い(意訳しすぎ?)」というようなことを言っていたわけで、頭のどこかで確かにそういう話しは聞いたことがある、と思い出すことはできたのでした。
では、そもそも「哲学とはなんだ?」と言われて、すぐに的確に説明できる人はどのくらいいるものでしょうか。私は「人が、なぜそうするのか、どうするべきなのかを考えるような学問だ」と、よく分からない説明を娘にしてしまったのですが、
「
①世界・人間・事物などの根本原理を思索によって探究する学問。形而上けいじじょう学(存在論)・論理学・倫理学・美学などの部門を含む。フィロソフィー。◇philosophiaギリシア(=智を愛する)の訳語。西周にしあまねが賢哲を愛し希求する意で「希哲学」と訳し、のち「哲学」と改めた。
②自分自身の経験などによって得た人生観・世界観。また、全体をつらぬく理念。「人生─」
明鏡国語辞典
」
まあ、当たらずとも遠からずでしょうか。。
さて、残念ながら、私が買った「考えるヒント」には、校長先生が引用されていた、
「
気持ちは言葉にしなけれ伝わらない
言葉は文字にしなければ忘れてしまう
」
このような内容は登場していない気がするのですが、いずれにしても、「昔の日本人は難しい文章を理解していたものだ」と感心すると同時に、頭の体操にちょうど良い本、というのが素直な感想です。父にそんな内容をメールしたところ、「最近の読み物には内容の無いものが多いから、熟読に値するかもね。」と返事がきました。
ところで、この本を読んでいて、どこかで読んだような文章だな・・・と感じたのですが、おそらく、大学受験向けの問題集や模擬試験などで、国語の長文読解問題に使われていたのではないでしょうか。当時は「どこからこんなに難解な文章を見つけてくるんだ?」と呆れながら解いていた気がしますが、そもそも難解と感じるのは、自分自身の語学力が低いだけであり、それは私だけと言うよりも、世代が変わるごとにどんどん語学力が低下してきているのではないのだろうか、と感じるのでした。
ということで、この本のように「難解と感じる本」を、あえて読んでみることも、自分の無能力さを知るきっかけになり、ソクラテスの考えにも通じるのではないだろうか、などと、屁理屈を考えつつ、この高々590円の本のおかげで楽しめているのでした。