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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

技術革新をあきらめたベンダーほどあこぎな商売はない

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 最近システム業界で聞く話に、ソフトウェア製品やサービスのライセンス形態や契約条件を一方的に変更されて契約金額の再交渉を求められたという話がある。ハードウェアの性能があがったのでせっかく効率的な仮想環境を構築したのに、仮想環境をターゲットにした特別料金を課せられてコスト削減分がそのまま値上げの原資にされたり、一度購入したライセンスの返却が認められず、経営環境変化に伴う事業部門の売却やアウトソーシングで従業員は減ったのに元のユーザ数のままで保守料を請求されたりと、なんだか聞いていて驚くような嘆きを聞くことがある。

 どうやらソフトウェア製品が成熟期に入りシェア的にもおおむね飽和したマーケットで、技術的革新や販売先拡大を諦めた製造元がバージョンアップの替わりにライセンス契約条件の見直しで減った売り上げを穴埋めしようと躍起になっているようだ。詳しくはわからないが、こういう会社では社員の構成も技術者を減らし法務担当を増員するようなシフトをかけていそうだ。

 ソフトウェア製品を利用しているユーザとしては堪ったものではない、そのソフトウェア製品を使って構築したシステム上のデータが人質に取られているようなものだからだ。大規模なシステムともなると、再構築や別の製品への切り替えには数ヶ月とか数年を要するので、値上げを求められたからと言って、おいそれと対策が取れない。大規模化して複雑化した基幹システムはさながら恐竜のように鈍重な為、アーキテクチャーを変える再構築にすぐに取り掛かっても数年分は高額な費用請求に応えざるを得なくなるという。

 特に最近では基幹系のシステムもオンプレミスのシステム構築からクラウドのサービス利用型への移行するのが流行りだが、クラウドになるとさらにデータの人質性が高くなる。今は良いかもしれないが将来そのクラウドサービスの提供業者が突然一方的にサービス料金を値上げしかねないことは想像しておきべきだ。

 但し、逆に言えばクラウドサービスであれば、こうした一方的な値上げ要請が来たときも、即座にサービスを切り替えられる可能性もある。データを蓄積する必要が無いサービス、例えばトランザクションに対してセキュリティチェックを行うような付加的なサービスやコンテンツをマルチデバイス用に変換するサービスなどであれば、値上げを求められたらあっさりと他へ切り替えればよい。

 クラウドサービスを採用する場合は、こうしたデータを人質にされたベンダーロックインをどう回避するかもよく考えておくべきだ。

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